のっけはエッセイのようだなと思いながら読み始めたら、いつのまにか小説になっており、そのなかで主人公が読んでいた怪奇小説が自らが書く小説に侵食してきて、しまいにはどこまでも奇々怪々なストーリーになり、どちらがどちらの話なのか、とぐろがまかれるように取り込まれてしまった。
『怪奇小説という題名の怪奇小説』(都筑道夫、集英社文庫)はしかし怖い。思い返さなくとも、何だか今晩の夢にでてきてしまいそうで、だがあそこに登場した幽霊だか魔性だかに夢であれば出逢ってみたい気がする。
小さいときや、いや、つい先日も夢に出てきたようなシーンがあるようだが、やはり思い過ごしであろうと首を横に振る。
忘れたくても脳裏に刻まれてしまって、どうにも困ったことになるような怪奇小説だった。