ホテルの部屋は教会を真正面から臨む眺めだった。
ベルギーのルーヴァンはベギン会修道院という建物群を中心に円形に広がる城郭を形成していて、その街並みは世界遺産になっている。
人々は爽やかで親切である。しかしそれは実は、二度の世界大戦をこの地で経て、国としてどうにか生き延びてきたことが、どの人の脳裏にも必ずやすりこまれているからなのではないかと思うのだ。
どの建物の屋根にもある小さな明かりとりの天窓。そこから射す光だけをたよりに隠れるように日々を送っていただろうそのころの青空は、やはりこんなに綺麗だったにちがいない。