穂村弘の短歌論『短歌の友人』(河出文庫)を非常に楽しく読んでいる。この臨時非常事態に日々きゅうきゅうと打開策を模索し提示しようとしているなかの、一服の清涼剤ともいえよう。
のっけから面白い短歌の紹介だ。
“溜め息とぎりぎり似てるその「ッ」が聞きたくてTの肩をゆるく噛む”(もりまりこ)
どのような感覚であろうと短歌になるとする。ど真ん中直球系のものは、源流に次の歌があるという。
“やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君”(与謝野晶子)
そういえばそうだ。短歌のなかにはあらゆる感性と感触、気持ちが凝縮できる。
考えをぐだぐだまとめ論理で人を説得ようとするのではなく、スパッと短歌で言い切っちまおうか。