震災のあとに初めてCDを買い求めた。リサ・バティアシュヴィリによるショスタコーヴィチのバイオリン協奏曲第一番。このほかにカンチェリ、ショスタコーヴィチ、ラフマニノフ、パルトの小品が入っている。「時のこだま」(Echos of Time)という副題がついている。褪色しかかったカラー写真のジャケットが象徴的だ。廃線になった鉄路が草原にどこまでも続くなかに彼女はこちらを振り返り佇む。
この協奏曲をきちんと聴いたことがなかったのだが、第一楽章のノクチュルヌの何と美しいことか。諦観と静かなる息遣いが透き通って響き渡る。
有名な第二楽章(スケルツォ)。激しすぎず叙情を品性を保った弾き込みだ。俯瞰的に醒めている。暖かいとまで言ってよいかもしれぬ。
第三楽章(パッサカリア)、第四楽章(ブーレスク)。すべてを分かってるよ、安心してね、と語り掛けるようだ。
時代を変革しようとした祈りは、いまのこの危機になぜかよくマッチする。