若い頃によく聴いて、しみじみとこころ馳せていた曲がある。今でも、機会があるとどうしても歌ってみたくなる。カラオケにいけば、おお少年合唱団なのかと言われながらも必ずや歌いつくす。正月にも友人らと歌った。そして若き日のそのいろいろなことを思い出す。でもその心境や僕が描いている脳裏のなかまでは聴いている仲間には分かるまい。まぶたの裏に浮かぶそのシーンはいつも同じ場所で、その漠然とした、でもすこしづつ違う影や、日差しや、まなざしは、甘く切なく僕の気持ちを浄化させる。そして、歌い終わるたびに、自分のなかに何かいじらしいまでのふと恥ずかしくもなる気持ちがちろちろしていることに気づく。
先週のNHKのSONGSでもその作曲家、来生たかおがこの曲を歌った。そして今週はおなじ番組で薬師丸ひろ子が歌うことになっている。
『夢の途中』(セーラー服と機関銃)(来生たかお作曲、来生えつこ作詞)
そしてこの徳永英明によるこの曲の歌唱はあまりにも素晴らしく、この歌い手を素晴らしいとしていた友人の底知れぬ審美眼にただただしみじみとまで感心し、そしてそぞろ心地よさまで感じるのだ。