夢の中で指揮者になっていた。デビューしたての新米で、何をするにも、あっぱとっぱしている。プログラム構成は次のようだ。不思議な取り合わせだが、夢なので仕方がない。
・ラヴェルの管弦楽曲
・コダーイの小品
・ハチャトリアンの合唱と管弦楽の曲
・ベートーヴェンの交響曲第6番
ステージに出向き、観客に挨拶。明るく迎えられた、まずまずだ。ラヴェルを振りはじめる。うんうん、なかなか良さげ、その調子。一曲を振り終えた。観客に挨拶。と、そこで第一バイオリンの一団の席の真ん中にスペースが空く。男性奏者が、となりの女性バイオリン弾きに、花束をささげたのだ。プロポーズだった。観客は拍手喝采。この楽団には時折こんなことが起きるそう。僕は、あやや、メンデルスゾーンの結婚行進曲でも皆で弾いてやらねば、と思うが、準備できていない。ああすまなかったな、と思うなか、そのまま二人のバイオリニストは手をつないで退場。代わりの奏者が入った。
ここから調子が狂い始めた。腰が痛くなり始めたのだ。指揮台を腰を支える柵が付属したものと入れ替えてもらった。コダーイは振り終えたが、次で真っ白になった。
ハチャトリアンだ。なにせソビエトのこの曲を振るのは初めてなのだが、譜面台から譜面が失せている。しまった、さっき指揮台を入れ替えてもらったときに、持って行かれてしまったらしい。一番上に置いてあったコダーイの譜面だけを乗せ換えたのだろう。
合唱と管弦楽の掛け合いのこの曲。サードフレーズからは、どんな掛け合い、畳み込みだったっけ。ヴィオラか、金管か、女性のヴォカリースか。練習のときを思い出してみる。記憶が飛んだ。
三拍子の仮面舞踏会!そうだ、あれに似た出だしだ。ええーい、と振ってみた。追随してきた。よかった。サードフレーズにくる。音がばらばらし始めた。しまった、やはりリードできていない。観客からブーイング。早くスコアを持ってきてくれ。止めてしまおうか、どうしようか。