カンディンスキーの絵に、初めて惹かれたのは、確か、バッハの無伴奏チェロ組曲が入っているレコードのジャケットからだった。
だれが弾いているものだったかは、今となっては思い出せないが、そのジャケットの写真とその絵からは、音が太く共鳴して響いてくる。それが頭の奥に残っている。
確か、
"Composition VIII"[http://www.wassilykandinsky.net/work-50.php]という絵だった(1923年、ニューヨーク・グッゲンハイム美術館蔵)。直線と円からなる絵。鋭さと丸さのバランス。幾何学的な鋭敏なフォルムから響いてくる音は、具象的な散文的な感じがする。その連なりは美しい旋律になる。
彼は若き頃は、直線と円ではなく、幻想のなかにあるような絵を描いていた。
"Impression lll (Concert)"[http://www.wassilykandinsky.net/work-170.php]だ(1911年、ミュンヘン・レンバッハハウス美術館蔵)。ドイツの前衛芸術「青騎士」グループの一人としての作品だ。シェーンベルクの初演に触発されたこの作品からも、まばゆい光と音の交錯が聴こえてくる。
※彼の初期のこれらの絵は、三菱一号館美術館で、いま展示されている。『カンディンスキーと青騎士展』。