アルゲリッチ/デュトワのショパン・ピアノ協奏曲にめろめろになる
今月のNHKテレビ番組『こだわり人物伝』は、『ショパン 魂の旋律』がテーマ。作家の平野啓一郎さんによる、小説の取材ノートをひもときながらの解説。
そのノートの緻密さと言ったらない。一日の出来事を時間単位でまとめている。尊敬する。こりゃ適わん。平野さんの小説は、手付かずにしていたけれども、読んでみる気持ちになった。
さて、初回に彼が紹介したのは、ピアノ協奏曲第一番。僕はいま、デュトワ/モントリオール交響楽団のものを聴いている。第二番も入っている。音盤の表紙の、二人の笑顔からして良い(とくにデュトワの「まだ憧れてるよ、イマデモマッテルヨ」といいような相好崩した笑顔が)。
で、肝心の音楽。何度聴いても、青春の息吹き全開に感じる。二曲ともに、詩的なる唐突なる出だし。
第一番は、「冬の嵐が上がった朝、僕はパリに向かった、あの人への激しい恋慕の気持ちと共に。僕は想いだす、春の草原でのぼくらを…」。
第二番は「そんな感傷に浸っていたことが懐かしい。いまやあの激情はどこにいったか。いいや、まだこんなにあるではないか…」みたいに聴こえる。
それらをトリガーに感情が溢れほとばしるように旋律が流れ落ちてゆく。当時の聴衆はさぞや驚いたことだろうなあ、と思う。
ああ、この協奏曲はニューミュージックであり、演歌だ。僕は今朝からめろめろになる。