APEC対応で厳戒体制の横浜から、高速バスで幕張に向かっている。湾岸高速だ。
窓からの眺めは、京浜工業地帯。発電所や鉄工所、巨大なクレーンのキリンたち。機械は、重いにぶい音を緩やかにたてている(だろう)。
この工場群を、夜に海から眺める遊覧ツアーが人気になっているという。「湾岸ジャングルクルーズ」というらしい。
どんなクルーズなら良いか。
アリス=紗良・オットのショパンの短調のワルツが背景に流れる。
人は異次元に入り込み、常軌を逸する気持ちになる。カリガリ博士が顔をだす。
井上陽水は、そんな船の手摺りから身を乗り出して、シャンソンふうな歌を口ずさむ。
パイプくわえたクレンペラーが窓越しに眺めている。景色は、いつのまにかドイツの寂寞に繋がる。
そんなクルーズならば、夜もそぞろ愉快だろう。