バッハの『フランス組曲』の聴き方

バッハの『フランス組曲』は、コンサートのライヴCDであるとか、ピアニストが入念に選んだ録音集に入っていて、いくつかに親しんでいた。でも、その全体を聞きとおすことには至っていなかった。最近、アンドーラシュ・シフの演奏の音盤を買い求めて、ぽつぽつと聴いている。

シフは、例の”三羽烏”だよなあ、としか記憶に無く、僕は初めてきちんと聴いているのだが、すばらしいピアニストだと知った。早めのテムポで、グールドを髣髴する感じだ。けれども、透明冷徹ということではなく、とてもロマンチックである。叙情のバッハ。伸びやかに、明るく、心が踊ってくる。音盤の最後のほうには、『イタリア協奏曲』も入っており、それはまた、『フランス組曲』との対比をすると、まったく異なる芸術の高みにあることが分かる。こちらも実に気持ちよい演奏だ。

『フランス組曲』は、ライプツイヒに移る前のケーテン宮廷楽長時代のもので、1722年頃の作品らしい。この年には、『平均律クラヴィーア曲集』の第1巻が書かれている。その、神に繋がり、天に昇るような響きと比べると、この『フランス組曲』は、いかにも簡明だ。日ごろの気持ちをつれづれに綴った、という感じがする。

『アンナ・マグダレーナのための音楽帳』の第1巻には、この『フランス組曲』の第1~5番が含まれているが、それは、彼女と再婚した日々の喜びを、難しい言い回しではなく、易しく伝えたいと考えていたからなのではないかと思う。

平均律を書き記す合間に、普段着の気持ちで書いているのだろう(とはいえ宮廷で奏でる舞曲としても書いているのだろうが)。この組曲は、文字通り、襟を正さずに、ゆるやかな心で聴いていくのがよいのだろうと思った。

CD: ポリグラム London POCL-4359/60
録音: 1991年、Reitstadel, ノイマルクト(Neumarkt), バイエルン州
→ このコンサートホールは、 ノイマルクト・イン・デア・オーバープファルツ郡(Neumarkt in der Oberpfalz)の鄙びた町にある。音響的にも非常に有名らしい。いくつかの演奏録音がなされている。いつか行ってみたい。

バッハ:フランス組曲(全曲)

シフ(アンドラーシュ) / ポリドール

スコア:


[PR]
トラックバックURL : https://hankichi.exblog.jp/tb/15186831
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by maru33340 at 2010-09-26 14:27
(意訳)そうだ、シフのバッハは、これみよがしな所がない良いバッハであることよなあ。
Commented by k_hankichi at 2010-09-26 15:53
あ、はい。そうですはい。かたひじ張らないバッハです。
by k_hankichi | 2010-09-26 11:20 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)