アール・ヌーヴォーのエミール・ガレの花瓶が好きだった。写真集も持っていた。花のことは深くは知らないけれど、花瓶のデザインの奥深さには、魅せられていた。『ベルエポック』という、彼がデザインしたボトルに入っているシャンパンのことも、だから、好きだった。
そんななか、ティファニーの花瓶が、現れた。ティファニーといっても、宝石商で成功したチャールズ・ルイス・ティファニーではなく、その長男のルイス・コンフォート・ティファニー(Louis Comfort Tiffany, 1848~1933)のことだ。
初めて観たのは、ニューヨークのメトロポリタン美術館。その1階の、あまり人が訪れないウイングに、それは在った。
ひっそりと息を殺しながら佇む、花形の花瓶。ほんとうの花のように静かに、見出されることを待っていた。誰にも見つけられなかったら、何日も何ケ月も何年も、そこにただひっそりと、鎮座していたのだとおもう。
そして最近も、こんな作品を残していることを知った。何点も、そういうものが連なる。息がちょっと止まるほど、生き生きとしている。なまめかしくもある。リアルさというのは、時に妖艶さに繋がるものだ。
しばらく、この、吸い込まれるようなデザインに、魅せられつづけるだろう。
花形花器(1900年頃).
写真出典:http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ngv,_louis_comfort_tiffany,_jack-in-the-pulpit_vase,_1913_circa_01.JPG
Picture taken by Sailko, 16:57, 25 March 2009. This file is licensed under the Creative Commons Attribution 2.5 Generic license.