ついに見つけた。ポール・ヴェルレーヌがアルチュール・ランボーを撃った場所を。
ブリュッセルのグラン・パレスの横丁。ホテル・アミーゴ目先。
二人は、蜜月にちかい関係にあった。でも、若く才能があるランボーが、彼から離れようとしたところで、苦しみのあまり凶行に走った。1873年7月10日のこと。
薄暗い石畳の路地に、こだましただろう。リボルバーの発砲、周び声、そして、ランボーのうめく声。「どうしてなんだ…」。
ヴェルレーヌは投獄され、一命を取り留めたランボーは、ようやく籠の鳥から解放される。そして、『地獄の季節』が上梓される。
だが、彼は、そうしたかと思えば、間もなくに、この、顕示欲と競争、愛と喧騒の都会を後にする。アフリカの武器商人として、文学とは縁もゆかりもなく、生涯を終える。
ブリュッセルには、人を狂わせる何かがある。
苦しくなった僕も、近くの地下酒場に入り、酒をあおった。週末とはいえ、早い時間の昼下がりから、世界中の酒飲みが、くだを巻いていた。なにやら僕は、途方もなく、安心した。