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男たちの音魂
井上陽水さんと小田和正さんのCDを聴き比べながら、二人の天才の凄さに、ぞくぞくとしている。

『弾き語りパッション』というオール・ライヴの一枚。井上さんのギターによる、切り裂くような、血の出るような、詩と音魂の爆発である。

「闇夜の国から」は、フランス近代詩さながらだ。
゛夜の深さと夜明けの近さを知らせる…未来と将来の区別もつかないまま…一人の国から今夜、闇夜の国から二人、二人で船を出してゆこう゛

「かんかん照り」。にじりにじりする、うだるような夏の昼を、こんなに表した歌と和声はないのではないだろうか。
゛焼け付いた屋根が揺らいで見える、おひさまは空であぐらをかいて、スズメたちは火傷をするのが怖いのか、どこかに隠れてる、水道の水がグラグラたぎり、石けんは直ぐにドロドロ溶ける゛

「なぜか上海」。万国博の日本代表歌にしたほうが良い。
゛風はどこへも行きます…弾けたような気分で、ゆれているの、そこが上海…友達さそ、さそ、さ、さ誘っておいで…海を越えたら、上海゛

「心もよう」。もはや何も云えなくなる、圧倒的なようなバラードだと思う。
゛さみしさな徒然に、手紙をしたためています、あなたに…黒いインクが綺麗でしょ、青い便箋が悲しいでしょ。…あなたの笑い顔を、不思議なことに今日は憶えていました…さみしさだけを手紙に詰めて、ふるさとに住むあなたに送る。゛

さて、小田和正さんの最新アルバム『そうかな』。これまた、歌唱の爆発の渦に巻き込まれる。

「まっ白」という曲。出だしからせつなさの頂点になる。
゛哀しいほどの想いがつのれば、もうその愛は戻れない、せめてただ切ない気持ち、伝えるまで。…゛

「たしかなこと」。生命保険会社のコマーシャルが、こんなにかっこ良くて良いのか。人生の機敏に想いが増す。
゛雨上がりの空を見ていた、通り過ぎて行く人のなかで。…時を越えて君を愛せるか、本当に君を守れるか、空を見て考えてた。いちばん大切なことは、特別なことではなく、ありふれた日々のなかで、君を今の気持ちのままで、見つめていること。゛

小田さんの声の美しさは、男ながらほんとうに惚れ惚れする。そんな彼が、音楽を離れて普通の生活をしている時の、毒舌家振りにも、これまた男として親近感が増す。僕の思考に似ている。

この二人、1948年と1947年の生まれ。パワーが尽きない、素晴らしく気持ちの良い、この人たちがいることに、とっても元気づけられた。



弾き語りパッション

井上陽水 / FOR LIFE MUSIC ENTERTAINMENT,INC(PC)(M)

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そうかな

小田和正 / BMG JAPAN

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by k_hankichi | 2010-05-15 07:24 | ポップス | Trackback | Comments(0)