スタンダールの小説を読んだかというと、読んだこともなく、でも、なんだか、分かっているような気がしていた。でも、よく考えてみると、こういったフランスの文豪の小説を、読み込んでいなかったことに気付いた。
ようやっと読み始めたのが、この四月。
いま、この小説の奥深さ、奥ゆかしさを、感じている。いまからほぼ180年前のフランスの小説。とても、気持ちが通じるこの心地。なにゆえに、縁もゆかりもない東洋の地に居る、野蛮人が、この小説を理解できるのだろう。とても不思議な気もちでいっぱいだ。
こういう小説、幾世紀も、読み継がれる価値がある、と思う。
ヴェルジーという町は、シャンパーニュ地方の、あの街のことだろう。だから、だいたいの察しはつく。でも、ヴェルエールという地は、どんなところなのだ。でも、どこでもよい。しかるに、いつかは訪れてみたい。自然の描写の、豊かなこと。
そして、本題の、人と人の気持ちのこと。こんなに、リアリスティックに描いている小説って、なかなかないのでは、と思うのだ。ジュリアン、そして、レーナル夫人。レーナル町長。彼らのつくる、この甘美にして、たゆたうような世界。ああ・・・。なに?なに?という感じである。昨晩は、僕は気持が昂って、眠ることもできなくなってしまった。上気してしまっている。
いまは、まだ、上巻を読み終えるところ。これから、どんな波乱万丈が、展開されていくのか。ロマンの路に足を踏み入れた僕は、いまだに興奮した気持ちを、どこに持っていけばよいのか、わからん状態にある。
小林正訳、新潮文庫。