先に読んだ本に紹介されいた、ベネディッティ・ミケランジェリさんの初期の演奏。これが入っているCDを、何度も聴いている。ジュネーブ国際ビアノコンクールで優勝した1939年から1948年までのもの。
冒頭にバッハのイタリア協奏曲。このCDを企画した人の意気込みが分かる。この曲は和声がこんなに綺麗なのかと発見する。音の粒が際立っている。極めて速いテムポなのに、これまで聴いたことのない響きがする。高次の倍音の響き?
曲想に応じてテムポを自在に操る。それでいて一糸乱れぬ演奏。彼の壮年期の端正な哲学的演奏とは異なる。グレン・グールドの究極まで絞り込まれた淡麗さとは対極だ。
二曲はバッハのシャコンヌ。これまためちゃくちゃカッコいい。終盤にしかかり、ぞくぞくと鳥肌が立つ。こういう曲をインベンションとフーガ、って名付けても良いのではないか、と素人ながら思う。こんな演奏されては、バイオリニストは、がっくしと首をうなだれてしまうだろう。
そしてスカルラッティが続く。曲の美しさが際立つ。珠玉の○○○、という表現はこういうやつに使いたい。
ブラームスの「パガニーニの主題による変奏曲」も、バイオリニストが隅に入りたくなるような演奏。叙情的変奏になるとき、ミケランジェリの生の姿が、ちらりと見えるような気がする。
若きミケランジェリは斯くも奔放自在なり。