川上未映子さんの小説を初めて読みました。講談社刊。川上さんは昨年「乳と卵」で第138回芥川龍之介賞を受賞されていて気にはなっていたのですが、本の題名やらの語感が自分に響かず、なんとなく手に取ることをためらっていたものです。
昨晩、寝床で横になりながら読み進めたのですが、ぐいぐいと引き込まれ、最後まで読み切ってしまいました。
俗に言う¨いじめ¨を扱ったものでした(知らずに買ってしまった)。普通は胸が詰まって読み進められずにいるでしょう。しかし、そうなりませんでした。
虐められる少年少女が、それに対抗する論理を形成していく。虐められながらも、虐める側の心を対象物として¨見る¨、¨見切る¨、¨逆に断罪しきる¨、その過程が見事です。
悪と善の境はどこにあるのか?虐めるものの論理を打破することは何か?
少女は¨ヘヴン¨を見つけた。少年はそこに行きたかった。
彼は、形として救済される方法を見付けた。しかし少女は、それが欺瞞だと見抜いた。
二人の距離は遠のき始め、最後の場を迎える。普通の小説にはない、ほったらかしにされるような終末。
読後も、善悪の彼岸について心のなかに渦巻きを放つ、とても不思議な小説でした。