ようやっと、アルゲリッチが1965年のショパンコンクールで優勝した時のCDを入手し、今週ずっと聴いています。オールショパン。
圧巻なのは何といってもピアノソナタ題三番。出だし、自分が襲いかかられている気分になります。そしてバラード風の旋律になったあと、こんどは腕の中で揺られ優しくされているような感覚になります。
確実にして自在。卓越した技量があって初めて自らの感情を移入しても曲の骨子が崩れない。
第二楽章は秋の今ごろ、森のなかでパラバラと木の葉がたくさん舞うなかを歩く感覚。
第三楽章。舟歌とも子守唄ともいえるよいな叙情は、一瞬マーラー的な響きにまで達する。
最終楽章。「いや、そうではない、私はこういう人間だったはずだ」、といわんばかりの強い感情のほとばしり。
一曲聴きおわると、彼女の世界に組み込まれ溶かされていることに気付きます。
アルゲリッチをすきになった人たち、そのプロセスを今になってわかりました。そして僕もその一人に加わったのです。間に合って良かった。