年の瀬に観た『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』

年の瀬は、ネットで買い求めてあった映画『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』(原題:Hilary and Jackie)を観た。

フルート奏者の姉のヒラリーの視点からみたジャクリーヌや家族と、ジャクリーヌの視点からみたさまざまな出来ごとが対比的に描かれていて構成としても面白い。そしてまったく知らなかった事柄がそこには繰り拡がれていて大分愕然としたりした。

白血病で亡くなったのだとずっと思いこんでいたが実際には多発性硬化症とパーキンソン病だった。ダニエル・バレンボイムとの婚姻でユダヤ教にまで改宗したのに、ダニエルはジャクリーヌが病気になったあとそれを放って、別の人と隠れて子供まで作っていた。これにはびっくり。これからあのピアニストあがりのもじゃもじゃな指揮者のことを観る目を変えねばならぬ。CDはもう聴くまい。

壮絶なる人生を歩んだ彼女の凄み。姉のヒラリーがしっかりそれを受け止め、そしてそれを映画化しようという妹への強い愛と意志。年の瀬の溜息吐息は何とも複雑になった。

■スタッフ
・監督:アナンド・タッカー
・原作:ヒラリー・デュ・プレ、ジャクリーヌ・デュ・プレ
・製作:ニコラス・ケント、アンドリュー・ピーターソン
・チェロ演奏:キャロリン・デイル

■キャスト
エミリー・ワトソン:Jacqueline Du Pre
レイチェル・グリフィス:Hilary Du Pre
ジェームズ・フレイン:Daniel Barenboim
デイヴィッド・モリッセー:Kiffer
チャールズ・ダンス:Derek Du Pre
セリア・イムリー:Iris Du Pre
ビル・パターソン:William Please

■製作
1998年、イギリス

※追伸:海外からの中古DVDながら配送料込みで707円。とても良い買い物だった。

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# by k_hankichi | 2018-01-01 00:19 | 映画 | Trackback | Comments(5)

2017年のベスト3(小説、音楽、映画、テレビ番組)

2017年のベスト3(小説、音楽、映画、テレビ番組)

年の瀬恒例の、今年のベストをまとめました。

■小説
さまざまな作家の素晴らしい作品に巡り合った。多岐に渡るけれども、やはり移り変わりゆく時代のなかで、変らぬものを感じる作品に感銘をうけた。

1. 村上春樹『騎士団長殺し』http://hankichi.exblog.jp/26523536/
2. 松浦寿輝『名誉と恍惚』http://hankichi.exblog.jp/26774803/
3. 柴田翔『地蔵千年、花百年』http://hankichi.exblog.jp/26692139/
次点. 松家仁之『光の犬』http://hankichi.exblog.jp/28228969/
次々点. 高樹のぶ子『百年の予言』http://hankichi.exblog.jp/26719380/

■音楽
コンサートにはあまり行けなかったけれども、素晴らしき音盤に巡り合い、疲れた心身が癒されたものだった。

1. ヴィクトリア・ムローヴァによるバッハの無伴奏(CD)http://hankichi.exblog.jp/26737467/
2. バッハコレギウムジャパンによるマタイ受難曲(ライヴ)http://hankichi.exblog.jp/26589870/
3. 山田和樹/横浜シンフォニエッタによるシューベルトとアザラシヴィリ(CD)http://hankichi.exblog.jp/26828726/
次点. どこにも導かないアファナシエフによるショパンのマズルカ(CD)http://hankichi.exblog.jp/26319463/
次々点. 仲道郁代のシューマン・ファンタジー(CD)http://hankichi.exblog.jp/28193566/

■映画
こうしてみると、封切り作品をしっかり観るタイミングを逸した一年だったように思うが、それでも、これから何回も観ていきたい作品との出会いが重要だった。

1. ジャック・デュミ監督『ロシュフォールの恋人たち』http://hankichi.exblog.jp/28795459/
2. 片渕須直監督『この世界の片隅に』http://hankichi.exblog.jp/26338296/
3. 吉田喜重監督『秋津温泉』http://hankichi.exblog.jp/27689015/
次点. デイミアン・チャゼル監督『ラ・ラ・ランド』http://hankichi.exblog.jp/26770045/
次々点. 小栗康平監督『死の棘』http://hankichi.exblog.jp/26785395/

■TV番組
振り返ってみると『ひよっこ』はあまりにも図抜けて素晴らしく、ゴールした時点では、『カルテット』はまだ第四コーナーを回りきったところに居たという感じだ。そしてそれ以外の走者は途中棄権だった。

1. 連続テレビ小説『ひよっこ』http://hankichi.exblog.jp/26815642/
2. テレビドラマ『カルテット』http://hankichi.exblog.jp/26342015/

今年一年ありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いします。

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# by k_hankichi | 2017-12-31 00:11 | | Trackback | Comments(6)

題名が覚えられないけれども、映画良かった

『高慢と偏見』じゃあないし、『正義と微笑』に近いけれど何か違うし、と観たばかりの映画の作品の題名が覚えられないのだけれども、良い作品だった。ブログ知人が観て感銘されていた『肯定と否定』、じゃなかった『否定と肯定』。そして原題は『Denial(否定)』だから、さらに混乱する。

法廷闘争系の作品は、胸がきりきり痛むので普段は観ないのだけれど、とてもスカッとする作品だった。

正義・正当の名のもと、ぐだぐだと勝手な論理を展開する現代の政治家や政略評論家たちにも観せたいと思ったけれど、たぶんそういう人たちは自分たちに都合が悪いものにたいしては大抵は眼を瞑るだろうからなあと思ったりもした。

年末、だんだんと爽快になってきた。

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# by k_hankichi | 2017-12-30 08:47 | 映画 | Trackback | Comments(2)

夢と現の狭間・・いつかジュデッカ島に行きたい

イタリアに暮らしたいなあと思ったのは須賀敦子さんの随筆を読んでいたからだけれど、それはミラノという街のある種の峻厳とした感じや須賀さんのストイックな生き様に感じ入ったからだ。

それと対比するかのような楽しげな生活をしているなあ、と内田洋子さんのエッセイを読んで感じていて、楽観的な人なのかなとずっと思い込んでいた。

それがどうだ。『対岸のヴェネツィア』(集英社)で半ば覆された感じになった。

須賀さんと同じミラノに暮らしていた内田さんは、友人のヴェネツィアへの思いに触発され、自らもそこに住もうと意を決する。

住まいを決めたのはヴェネツィア本島ではなく、その対岸にあるジュデッカ島だった。本島へは連絡船でしか行けない。その不便さのなかに彼女はようやく心の落ち着きを取り戻していく。

僕らは気づく。明るく感じられる内田さんも、生きるといくことの意味について深く悩み考えたりしていることを。

“目覚めて雨戸を開けると、窓の中に運河とサン・マルコ寺院が見える。居間の隅が台所になっていて、エスプレッソマシンを火に掛けながら寝間着のまま、この風景を見る。目にするたびに、まだ夢の続きかと思う。天気が良いと、運河は白を混ぜたような明るい緑色から、朝日と空を取り込んで徐々に濃い緑色へと変わっていく。日によって藤色を帯びることもあれば、桃色から紫が加わり群青色に移っていくこともある。天女たちが薄衣を羽織ったり、靡かせたりしているようだ。雨や霧の朝は、水面が黒々と沈んだ色となる。雨が打ち、低く跳ね返る。そこへカモメが刺すように急降下していく。次々と下りてくる。雨足が強まる。高まる水音。窓が曇る。情景には色がない。たまらなく寂しく、しかしずっと見入ってしまう。”(「読むために生まれてきた」から)

これはもはや、クロード・モネの世界だ。彼が描いたヴェネツィアの情景と彼が聞いたヴェネツィアの静けさと淋しさがここにある。

夢と現の狭間を揺れ動くのがヴェネツィアなのだ。また行きたい場所が、増えた。

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# by k_hankichi | 2017-12-29 09:04 | | Trackback | Comments(2)

素晴らしき哉、ミュージカル映画

ジャック・デュミ監督によるミュージカル映画『シェルブールの雨傘』の素晴らしさはよく知られているけれども、こちらの作品は観たことがなかった。冬休みを貰って柏の映画館まで足を運んだら、それはそれは心地よい美しい作品でこの一年間の疲れが一気に吹っ飛んだ。『ロシュフォールの恋人たち』→http://cinema-enchante.com/

音楽は前作と同じくミッシェル・ルグラン。以前からナタリー・デセイが歌った音盤をよく聴いていたが(http://hankichi.exblog.jp/22028684/
)、映画の中で聴くその音楽と歌はまた別格。カトリーヌ・ドヌーヴは、一つ違いの実姉フランソワーズ・ドルレアックと双子の姉妹を演じていて、その息の合った歌とダンスは本当に素晴らしい。しかしこの姉は、作品に出たあと間もなく自動車事故で亡くなってしまい、ふたりが共演した映画として唯一のものとなったそう。

映画の出だしは、カーニバルの出し物をする一座(ジョージ・チャキリス率いる)がシャラント川を運搬橋で渡るところから始まる。この橋はゴンドラをクレーンで釣り上げて人や車を運ぶもので、もし自分がそこにいるとすれば高所恐怖なのでオッカナイけれど、観ている分には美しい。調べてみるとこれは現在も稼働している。
https://www.pont-transbordeur.fr/plus-q-un-monument

一同はそしてロシュフォールの中心広場に荷を下ろし、祭りの準備を始めていく。それはそれは明るい広場で、これまたgoogle mapで調べてみると、なんとまあ、映画のシーンが描かれたバスまでもが今も走っているらしい。
https://www.google.co.jp/maps/@45.937792,-0.9642523,3a,70y,25.06h,84.08t/data=!3m6!1e1!3m4!1skoFNk9fdlj10nMQTDEVwyg!2e0!7i13312!8i6656

その広場を見下ろすアパルトマンに住んでいるのがその姉妹。姉は音楽家、妹はバレエダンサーという設定で、ふたりはともにパリに出ていくことを夢見ている。ジーン・ケリーは姉が憧れる作曲家役、ダニエル・ダリューは姉妹の母親を演じているという豪華な顔ぶれ。

全てのシーンがこの実際の港町ロシュフォールで撮影されたそうで、もう、是が非でもいつかきっと訪れたくなった。

■作品
・監督・脚本:ジャック・ドゥミ
・音楽:ミシェル・ルグラン
・出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、フランソワーズ・ドルレアック、ジーン・ケリー、ジョージ・チャキリス
・製作:1967年/127分/カラー
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# by k_hankichi | 2017-12-28 09:51 | 映画 | Trackback | Comments(4)


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