「あか銀滴」完飲。

宮崎県日南の王手門酒造の芋焼酎

宮崎の紅芋仕込みだと、「赤霧島」が有名ですが、あれに引けをとらない美味さ。

却ってまろやかかもしれません。しかも安価。

飲み終えてしばらくたつのに、まだその味を懐かしむ気持ちがこみあげてくる、沸き上がる。

もうひとつので不思議な魅力。それは瓶のラベル。

松竹梅、月鶴、と、これでもかと縁起物があしらわれ、さらにせせらぎの傍に親子がたたずむ。そして次のような和歌が書き添えられている。

『銀も金も玉もなにせむに まされる宝子にしかめやも』

(しろかねも くがねもたまも なにせむに まされるたから こにしかめやも)

山上憶良の万葉集の歌。

子供には勝てないが、銀に匹敵すると言うことか。

お薦め度
☆☆☆☆☆
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# by k_hankichi | 2009-07-21 07:32 | | Trackback | Comments(0)

「身の上話」

佐藤正午さんの新刊「身の上話」(光文社刊)を読了。

この作家のアプローチのひとつになっているとおもうが、ある一つのなにげない行動や所作をきっかけにして、自分の人生が大きく転換してしまうストーリーで、ああ、こういう長大なプロットを仕込むことがほんとうに巧みだなあと感心する。

2000年の作品「ジャンプ」では、りんごを買いに出かけます直ぐに戻ってきますと彼のところから去った一人の女性を捜す物語。

今回は宝くじを買いに行ったところから始まる、まったく予想だにつかなかった人生の展開(転落?)。

「身の上話」が題名になっているが、過去の出来事を人に語る、というスタイルだからで、ちょうど最近読了した「朗読者」(ベルンハルト・シュリンク著)と似た感覚に陥る。

身の上話というのは、それはそれは大変だったよねえ、と相手がしたことを肯定しつねに相槌をうちつづけないかぎり話してもらえない類の話であり、また、語り手は取り返しようのない事実として既に自分のなかに落とし込んだもの決着をつけたものとして語る。

身の上話はそれゆえ”決してそれを否定してはならない”という不文律があるものなのだということに気付いた。

他の人から見ればなぜそんなことをしたのか、と言われるようなことでも、そうなってしまったのは仕方のないことはたくさんある。自分の胸に手をあてて考えてみて、そういうことをなんとはなしに納得した。

身の上話

佐藤正午 / 光文社


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# by k_hankichi | 2009-07-20 17:40 | | Trackback | Comments(0)

なつ二読書

月刊新潮8月号の、辻邦生・北杜夫のパリ東京往復書簡集、読了。

北杜夫が芥川賞を取った頃合いのものでたいそう読み応えがあるものでした。

なかでも、辻邦生の手紙のなかの次の記載が良かった。

「詩人(広い意味の)は一つの透明な球の中にいるようなものだ。彼はこの球の内面にうつる世界を描くほかない。そしてただそれだけが詩人が詩を形象する仕方なのだ。………こうした球となった世界を持つことが詩人の資格であり、外界はただこの球にうつることによってしか詩にならない。この球の外に出たら新しい世界があると思ったら大間違いでそこには詩はない。詩人(作家)の成長は、ただこの球の中にいるままで、球を成長し、ふくらましてゆくほかない。」(1960年5月30日付 書簡より抜粋)

この先に辻邦生が作家として大成するサンサシオンがすべてここに詰まっているように思いました。
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# by k_hankichi | 2009-07-20 16:44 | | Trackback | Comments(0)

なついち読書

僕のなついち読書は、これから始まりました。

「朗読者」ベルンハルト・シュリンク著
映画「愛を読むひと」の原作ですが、回想を基調とした語り方で、非常に静かに心に染み入るものでした。

ケイト・ウインスレットがアカデミー賞・最優秀主演女優賞を取った演技が目蓋のうらに描き重なり、とよんとした頭になります。

時間の流れがゆったりしていながら、シーンはあっという間に数年、いや数十年飛び去ります。

語り手にとって、相手の存在は時間を越えたものなのだということがよくわかります。

私小説ではないと思いますが、いろいろなできごとから時間が経ってしか書き得なかった小説なのだと思いました。

朗読者 (新潮文庫)

ベルンハルト シュリンク / 新潮社


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# by k_hankichi | 2009-07-20 15:52 | | Trackback | Comments(0)

酒飲みの反省

昨晩は友人と酒のみ談義。

互いに仕事や日常のことをああだこうだ言いながら、いつものように「ガンバロウ」ということになる。

ここまでは良いのだが、しまった、となるのはそのあと。

酒のラインアップや値付けについてお店なマスターに、こうしたほうがよい、などと並べ立ててしまう。

こちらが客だから黙っていろいろ聞いてくれたのだろうが、いまから思えば、大きなお世話。良かれと思って言ってても、お店はお店で何らかのポリシーがあってのこと。

反省しきり。
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# by k_hankichi | 2009-07-17 07:49 | 一般 | Trackback | Comments(0)

「アーロン収容所」

会田雄次著、中公新書

1962年に出版された新書ですが、今現在でも西洋を理解するための一観点としてよく引き合いにだされています。学者さんだけでなく経営者のなかにも推薦するひとがいます。

太平洋戦争後、ビルマで英国軍捕虜として二年余り抑留された際の経験がベース。各国の人々の自他への価値観、ものの見方考え方がとても鋭く描かれています。英国人、インド人、ビルマ人、グルカ人、そして日本人。

英国流の帝国主義というものは「主義」というよりも物の見方考え方の原点のように思いました。自己だけを繁栄させることが第一原理。植民地や奴隷はそのための道具にしかすぎない。自己、自国以外はそれを支えるしくみのひとつであり、そこにいる「人」は英国人にとっては「動物」とおなじとみなしています。痛めつけず上手に使役をさせるのです。かれらはそうやって大英帝国主義を貫き、世界を制覇してきたのです。

英国人やインド人について書かれていることは、僕のこれまでの経験(海外で、そしてビジネスのなかでの交渉や協業で)のなかでも、彼らの視線や態度の理由をよくあらわしているとおもいました。とても腑に落ちる。なるほど、と合点がいきます。

一方、日本人がもっている価値観のひとつにある「相互愛」は、彼らのもっている「相互愛」とは全く異なることも感じました。日本人は、階層に関わらず分けへだてなく人を愛することができる、西洋には無いすばらしい平衡感覚、平等感覚がはじめから備わっていると思うのです。直江兼続的な愛もあります。

西洋のひとたちが僕らをどのように見ているのか、ということを知りながら、西洋に対応していく必要がある。その意味で油断していてはならないのですが、一方僕らは日本人のもつ独自の価値観を貫いていくことがやはり大切なのだ、とつくづく感じました。大英帝国主義が破綻したいま、これからは東洋的な、仏教的儒教的な、万物愛の思想が、世界を仲間にしていく、牽きつけていく秘訣のように思います。

アーロン収容所―西欧ヒューマニズムの限界 (中公新書 (3))

会田 雄次 / 中央公論新社


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# by k_hankichi | 2009-07-15 07:14 | | Trackback | Comments(0)

シェーンベルクの浄夜

カラヤン&ベルリンフィルのこの曲を聞くのは、多分25、6年ぶりだと思う。

学生時代に父親の部屋で電灯点けずに暗くしたままこの曲を繰り返し聴いたことを、そのときの心境まで思い出した。

新ウィーン学派シリーズのひとつなのだが、この近代音楽が、これほどまでに叙情的なことを知り、とても驚いたのだった。

オーケストラも、たぶんこの曲を弾くことが楽しくて楽しくて仕方がなかったのだろうなぁ、とおもうくらい伸び伸びとした演奏。

真骨頂、という言葉はこのためにあるのかもしれない。

シェーンベルク:浄夜

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 カラヤン(ヘルベルト・フォン) / ユニバーサル ミュージック クラシック


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# by k_hankichi | 2009-07-10 21:41 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(0)

兵六

友人と待ち合わせ、以前から気になっていた神保町の居酒屋「兵六」に行った。

これぞ居酒屋、という雰囲気。客たちは思い思いに熱く語り合っている。マスターは落語家のように良く通る明るい声で威勢よく応対する。

窓は簾ごしに開け放たれ涼風が吹き込む。

壁には先代の写真。味がある。

最高の酒は球磨焼酎「峰の露」。キンキンの冷やで生(き)で飲む。

これでも米?

思わず頭傾げる旨さ。ジンのように脳天の神経回路を直撃し、思考はより柔軟になっていき発想は飛躍する。

〆(しめ)は餃子。隣で1人で飲んでいた若いあにさん曰く、「それ美味いでしょ、これと炒豆腐(チャートウフ)食べにわざわざ会社帰りに地下鉄降りてここに立ち寄るんですよ」。

壁には四箇条の戒め(してはいけないこと)。

『他座献酬
大声歌唱
座外問答
乱酔暴論』

徹頭徹尾の居酒屋でした。
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# by k_hankichi | 2009-07-10 07:07 | | Trackback | Comments(0)

「逃げてゆく愛」

ベルンハルト・シュリンクの短編小説集。ちょうど今公開されている映画「愛を読むひと」の原作者でもある。

40~50代の男性の視点で、愛のなかにある心の隙間、ゆれうごきをどれもうまく描いている。

独占欲、嫉妬、放蕩性、情欲、移り気、幻想、東西ドイツの分離、ユダヤ人の独自性、など。

ああ、この気持ちはぼくもあった、という感慨になんども浸る。

読後に残る余韻がとても静かで、でも少し重い、そんな一冊でした。

時を空けて、また読み返したい。そう思います。

逃げてゆく愛 (新潮文庫)

ベルンハルト シュリンク / 新潮社


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# by k_hankichi | 2009-07-09 20:20 | | Trackback | Comments(0)

ベネディッティ・ミケランジェリのドビュッシー

ベネディッティ・ミケランジェリのドビュッシー前奏曲集を昨日から聴き始めました。

考えてみれば、もう30年も前にリリースされたレコードなのですが、学生時代はお金が無かったことと(何せDGです)、皆が持て囃していたこと、そしてやっぱり顔がいかめつくて取っ付きにくかったこと(サルバトール・ダリ?)から、聴いたこともありませんでした。

出だしのからして圧倒されました。いろいろな音がきこえてくる。濁りがない。

今まで聴いてきたピアニストは何だったんだろう。

これを30年前に聴いていたら、今は自分自身も、もっと違うものになっていたかもしれない、とも思いました。

違う仕事。違う人生。違う生活。

打ち倒されそうに素晴らしいタッチのプレイヤーです。

「なんも言えねえ。」

ドビュッシー:前奏曲集第1巻

ベネデッティ=ミケランジェリ(アルトゥーロ) / ユニバーサル ミュージック クラシック


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# by k_hankichi | 2009-07-06 07:00 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(0)


音楽、小説、そして酒を愛する方々との空間です


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