命令した側の責任を問う・・・『不死身の特攻兵』

“「命令した側」と「命令を受けた側」と、もつひとつ「命令を見ていた側」があったということです。”

そんなことが末尾に書いてあって、まさにそれは戦争や特攻隊のことだけでなく、昔や今のあらゆる組織、集団、そして国のなかでも起きていることなのだと実感した。『不死身の特攻兵  軍神はなぜ上官に反抗したか』(鴻上尚史、講談社現代新書)。

“一般論を語れば、どんな社会的な運動も「当事者」より「傍観者」の方が饒舌になります。思い入れを熱く語るのは、当事者になれなかった傍観者、または当事者になりたかった傍観者です。(略)けれど、真実は当事者の言葉のなかにあるのです。重い口を開いて語る当事者の思いが歴史の闇に光を当てるのです。”(「第4章 特攻の実像」より)

そして記す。精神論をがなりたてる人たち、リーダー、首長というもの、命令をした者たちが、責任を取らないことの多さを。それどころか責任転嫁をすることの多さを。

特攻のことを知ろう分かろうとして、自分自身の生き様にまで、なにか鋭い刃を突きつけられた。

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# by k_hankichi | 2018-01-06 08:28 | | Trackback | Comments(2)

正月休み最後の昼下がり

正月休みの最後は上野の森で『ゴッホ展 巡りゆく日本の夢』を観る。ゴッホの絵だけかと思ったらこのあいだの「北斎とジャポニズム展」のようなかたちで、日本の浮世絵からの影響を教育的に説明構成したものでびっくりした。

ゴッホで埋められない空間にはゴッホやテオ、画商を訪れた日本人たちの記帳簿や手紙を陳列してある。そういうことは訪れる人たちも分かっているだろうから何とも消化不良になった。学ばせてやろうという企画展は性に合わない。

ゴッホの絵が少ないのであれば、それだけをポツリポツリと各部屋にまばらに掛けてもらったほうがまだよいなあ。

麦畑の絵の素晴らしさには、とことん感銘した。

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# by k_hankichi | 2018-01-05 00:20 | 美術 | Trackback | Comments(4)

ジャック・デュミの洗脳が続く

ジャック・デュミの映画は煩悩洗脳的に素晴らしくて、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)の再放送(年末年始の大英断だ)と並行して、それらは自分のなかの頭脳の回路をずっと牛耳っていた。

逃げ恥は僕の2016年のテレビドラマ評価の中ではベスト3というものだったけれど、時間が経て振り返ればそれはどれだけ心に沁みたかということが改めて分かり一つ繰り上げて第2位だったのだと感慨する。→http://hankichi.exblog.jp/26280110/

そんななか、ちょうど取り寄せたブックレット『ジャック・ドゥミ+ミシェル・ルグラン  シネマ・アンシャンテ』 を眺めては、ロシュホールへの憧憬を倍加させていて、ヌーヴェル・ヴァーグと相対した破天荒とでも言ってよい明るさに新年でも悩殺され続ける。

そしてブックレットのカバー表紙を裏返してみて驚愕。何と『ロシュフォールの恋人たち』の撮影現場であってそれは山田宏一が撮影した写真フィルムを裏焼きしたものなのだ。

なんとも貴重な本を手に入れてしまった。出だしは好調なり。

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# by k_hankichi | 2018-01-04 00:46 | | Trackback | Comments(0)

お酒は温めの燗がいい

ずっと探していて飲めなかったお酒を年末年始呑んでいる。山形県の『初孫』。

吉田健一の小説の中では金久酒造というお店のお酒だったけれど、今回買えたのは東北銘醸という酒蔵。胡散臭いところだなあ・・・と思いつつ呑めば、冷やでは少々甘く、然して温燗、熱燗は味が素晴らしく旨みが際立つ。

金久酒造はその後屋号を変えてこの名前になったということで、健一さんが呑んだ酒を今飲める恍惚にしばし陶然となる。

お酒は温めの燗がいい~♪、とは本当によく言ったものだなあ。

苦手だった日本酒が少しづつ、たしなめるようになってきた。もう齢も年頃なのだなあ。

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■初詣の亀戸天神にて
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# by k_hankichi | 2018-01-03 00:29 | | Trackback | Comments(3)

正月早々の邂逅・・・『小林秀雄 美しい花』

友人から、「序章読んだ?もの凄く良いよ」と言われたそのことは頭に残っていて、酔いが少し残った重い頭を持ち上げて読み始めた。いっぺんに覚醒した。『小林秀雄 美しい花』(若松英輔、文芸春秋)。

どういう具合かといえば、「もの凄く良い」という言葉しか出てこず、2018年の頂点を既に極めていく予感に満ちていた。いや、予感ではない、これは事実なのだとも思った。

“自己を、もっともよく理解しているのは自分である、と思うのは、一種の幻想に過ぎない。むしろ、人間にとって自己とは永遠の謎とほとんど同義であり、生きるとは、己れという解明不可能な存在に、可能な限り接近しようとする試みだと言ったほうが現実に近い。それが現実であるならば、自分よりも自分に近い他者という存在も空想の産物ではなくなる。論じる対象自身よりもその人の心に近づこうとすること、こうした一見不可能な試みに身を投じること、それが小林秀雄にとっての批評の基点だった。”(「序章 美と見神」より)

“美は今に宿り、悠久の世界がそこにあることを教える。悠久は、彼方に存在するのではない。今に随伴する。今とは、永遠の時が世界に現象するときの謂いである。今を見つめない者がどうして永遠を知ることができようか、今を、真実の意味で育むことを知らない者が、どうして永遠を誓うことができるだろうか、と小林は問い掛けるのである。”(同前)

これは豪い著作に邂逅してしまった。いま再び思考を巡らしていく気概が付いてきた正月だ。

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# by k_hankichi | 2018-01-02 07:12 | | Trackback | Comments(4)


音楽、小説、そして酒を愛する方々との空間です


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