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遠きカルチャー、サブカルチャー

雑誌POPEYE(ポパイ)の特集「本と映画のはなし。」が気になって買い求めた。現代文化人、芸術家、クリエイターたちが、推す作品の紹介だ。
http://magazineworld.jp/books/paper/5224/

どれどれどんな案配かな、と読み進めていくにつれ、なんだかタクラマカン砂漠の果てに取り残されて漂っている気持ちになった。いやもしかするとそこはインド洋の果てでもあり、アマゾンの密林でもあり、ホピ族も住まないアメリカの荒野なのかもしれない。

僕は現代を司るカルチャーやサブカルチャーの領域から、ずいぶんと遠いところにいるのだ。そういうことがようやっとわかった。唯一、微かな救いのページは、山崎努の薦める本と映画で、そこでようやっと水面に浮かびあがって深く息を吸い込んだ。

どのページも僕にとっては余り縁がない世界なのだけれども、意外に伊丹十三の作品を推す人が多い。この領域の人たちにとっての教祖さまみたいなものなのか。

いやはやこんなところまで(世界と自分の其々が)来ているとは、夢にも思っていなかった。

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by k_hankichi | 2017-07-31 07:45 | | Trackback | Comments(2)

清冽な夏の夜の夢のような小説

読み終えてついた吐息が、とても美しいものになっている気がした。清冽な夏の夜の夢のような小説だった。『遠くの街に 犬の吠える』(吉田篤弘、筑摩書房)。

やはり吉田さんは、近年その手腕が冴え渡ってきていて、それも鋭さではなく清らかさにおいてだ。これは音について、そして記憶についてと憧憬と恋についての物語だ。

音についての描写が鋭い。

“たとえば夕方に寺院の鐘が鳴る。ひとつ、ふたつ、みっつ………余韻を残して、大きな音でたっぷり鳴ります。だけど、鳴り終わったらそれまでです。あんなに大きな音で存在感を示したのに、その存在はどうなってしまうんでしょう?すっかり消えてしまうんでしょうか。(中略)それで思いました。音は何かにしみつかないのか、と」”(「水色の左目」より)

ここで吉田さんは、芭蕉の岩にしみ入る蝉の声だったり、わたしの耳は 貝の殻 海の響きを懐かしむ、のような事柄を挟み込む。

そこから、音を集めることが語られて、そしてやがて、文章や手紙というのは、声の代替なのだということに繋がっていく。

ちょうど先頃耳にした、太宰治の作品の幾つかの朗読CDで、たしかに小説は声に出して読み聞かせるものなのだなあと思っていたので、まさに合点がいった。

僕的には、今年のベスト3に確実に入る。久々に清い心を取り戻せた。

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by k_hankichi | 2017-07-30 08:34 | | Trackback | Comments(4)

家康が生まれた地

縁あって岡崎に日帰りで来た。家康が生まれた地だということを初めて知った。

関東や京都に輪をかけて暑い気がする。

鎧兜をかぶったら、もう一刻も早く戦をやめたくなったのではないだろうか。

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by k_hankichi | 2017-07-29 13:54 | 街角・風物 | Trackback | Comments(2)

朗読で聴く『ヴィヨンの妻』などのこと

大型書店の片隅に、ひとりぽつねんと取り残されたようなコーナーがあった。普段は殆ど気付かないはずがどうしてかそこに目が行って、そして思わず買い求めていた。

『太宰治 名作集』(Pan Rolling刊)。朗読のCDだ。『ヴィヨンの妻』、『チャンス』、『トカトントン』、『人間失格』、『走れメロス』が入っている。朗読は、始めの二作は神尾祐、真ん中は中島定吉、最後の二作は清水秀光というひとによる。

これはとてもためになる。というか効果的な読み物(というか聴き物)で、どんなに押し合いへし合いな通勤列車のなかででも、イヤホンさえあれば十分に楽しめる。本を開かなくて良いのだから楽ちんでもある。

『ヴィヨンの妻』は、何度も何度も読んで来たのにも関わらず、聴いてみるとなんだか記憶から抜け落ちたところが沢山ある。『トカトントン』も、ああ、朗読者はこういう音に感じたのか、とそれだけれ感慨無量。僕の頭の中での響きと違っていたが妙に納得できる音階で、目から鱗。グレン・グールドのバッハを初めて耳にしたときの感慨に近い。

1枚945円(税込み)で492分の収録、ということが嘘のようなこの音盤、しばし夏のラッシュアワーの一服の清涼剤になりそうだ。


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by k_hankichi | 2017-07-28 00:09 | | Trackback | Comments(4)

僕の前に立ちはだかる砦

友人に啓発されて辻邦生の『夏の砦』(河出書房新社、辻邦生作品全六巻の2)を読み始めたが、全体の半分近くにまで来たところで頓挫してしまった。これ以上読み進めることができない。学生時代に一度読んだはずだが内容が殆ど記憶にないのも、もしかすると、あのときもこのように頓挫したまま放置してしまったからかもしれない。

北欧と呼んでよいだろう地域での出来事は、纏綿とした歴史の織り込みがあり、そうかと思えば、主人公である支倉冬子の幼年時代の日本(昭和の戦前期)での生活が回想される。二つの世界の交錯の狭間で、彼女が自分の居所の不確実さに焦燥するような気持ちが、僕自身に乗り移ってくるかのよう。

このまま読み進めて行くと、自分自身までもがスウェーデンの近傍の地に消え去ってしまうのではないか。もうすこし厳しい寒い冬の夜更けに、巣籠りするようにして後半は読み進めなければならないような気がした。

砦が僕の前に厳然と立ちはだかる夏だ。

■冬子の家の見取り図(「創作ノート」より)
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by k_hankichi | 2017-07-27 06:14 | | Trackback | Comments(2)

荒々しい言葉のやりとりに

どこかの国の政治をつかさどる人たちの議論を報道のなかで目の当たりにして、ただただ広い砂漠のなかに、放り出された気になった。

延々
徒労
無念
殺伐
途方
切なさ
哀しさ
情けなさ
荒廃
水掛け

もし一点の曇りがあるとしても、今朝の青空のなかに沢山に拡がる雲のような清さのひとつであってほしい。

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by k_hankichi | 2017-07-26 08:50 | 社会 | Trackback | Comments(0)

「故郷の星」の源に向かう朝

今朝もみちのくへ向かう途。上野駅でいつものホームへ運ぼうとするとき、ふと頭の上を見上げた。

「見上げてごらん 夜の星を」

・・・・まさにその通りの金色に輝く星があった。

「仰ぎ見れば 
故郷の星 
ここにあり

きらめく星 
ふれあいの星 
わが心を
うるおす」

「故郷の星」と題する詩が添えられていた。

昨日の朝は、ドラマ『ひよっこ』で、みね子の余りある優しさと哀しみに包まれ思わず感涙したが、今朝もこんな詩をみてしまうとじんとする。

故郷の家族を想う気持ち大切にする気持ち。

故郷の星、託された星、自慢の星、いとおしい星。

憧憬とともにその地に向かう。

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by k_hankichi | 2017-07-25 07:06 | 街角・風物 | Trackback | Comments(4)

アーノンクールとブッフビンダーのブラームス

CDショップを訪れて、ただ単に安かっただけで買い求めた音盤が予想に反して素晴らしいと、もうそれだけで嬉しくなる。吝嗇さというものは強欲なものだ。

ニコラウス・ア―ノンクールがベルリンフィルやアムステルコンセルトヘボウを振ってのブラームスの交響曲・ピアノ協奏曲全集はまさにそのひとつ。5枚組ボックスで千円一寸ということで、ジャケット表紙の指揮者の顔が、鬼のように怖い形相だから、これは粗製乱造の証なのかもと、おっかなびっくり。

一枚目はピアノ協奏曲第一番ニ短調 Op.15。僕がとても苦手にしていた曲だから、捨て鉢的に全く期待せずに聴き始めた。どうにでもなれ、だ。しかしそれが違うことがすぐに分かった。あまりに素晴らしくて、椅子に腰が貼りついたままになる。

ブラームスのピアノ音楽は、どのようなものであろうともある種真摯な哲学的考察とともに出来ているから真剣に聴かないとわからないと思っていたが、ブッフビンダーの演奏はそういう風に恐縮した緊迫感を持つ必要がなく、ただただ音の転がりが美しくて、珠玉という言葉はこのためにあるのかしらと思った。

1枚目でここまで期待が高まってしまうと、このほかの4枚をこれから聴いていくのが空恐ろしい。空恐ろしいけれども、吝嗇家は新たな境地を求めるべく、次に進めていくわけだ。

■曲目
● ピアノ協奏曲第1番ニ短調 Op.15
● 4つのバラード Op.10
■演奏
ルドルフ・ブッフビンダー(ピアノ)、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、ニコラウス・アーノンクール
■録音:1998年(バラード)、1999年(協奏曲)、コンセルトヘボウ、アムステルダム
■音盤:Warner Classics 0190295975104

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※ジャケット写真にしては、顔が怖すぎる・・・。そんなに睨まないでくれ。
 


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by k_hankichi | 2017-07-24 00:29 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(3)

ことばが心に沁みること・・・坂元裕二の往復書簡

友人から、こんな本が出とるぞ、と連絡を受けて早速に買い求めて読了。『往復書簡 初恋と不倫』(坂元裕二、リトルモア社)。「不帰の初恋、海老名SA」、「カラシニコフ不倫海峡」の二篇からなる。演劇の脚本だということに読んでいる途中でようやく気付いた。

始めの作品「不帰の初恋、海老名SA」は、本厚木中学校の一年次の男女クラスメート間のメール。中学時代の短いやりとりは転校によって途切れ、社会人になってからのやりとりに続いていく。そしてメールでのやりとりは、ダイアローグ、対話という次元に高まっていく。

初恋というものは、初めて口にした砂糖菓子のように貴重で、でもちょっと力を加えただけで脆く崩れおちてしまう。崩れそうで崩れないギリギリの線を坂元さんの脚本は走っていく。

どのように人を愛そうとしても初恋の相手というものは常に頭や身体につきまとうもので、そういうことを思いながら描いている。出てくる事象のぞれぞれについての触れ方は、そっといたわるような繊細さで、がさつさとは無縁。

さて、エピソード的な話題をここで挟む。ダイアローグのなかには、本厚木から自転車で走って東名高速の海老名SA(サービスエリア)でラーメンを食べる、というようなシーンがある。これはまさに地元ネタで、驚いて思わず眼鏡がずり落ちた。

このサービスエリアはとても立派で、海老名メロンパンなどでも有名なのだけれど、実は、外から歩いてアクセスできる出入り口がある。そして近隣の人たちの憩いの場にもなっている。もちろん僕や家人、知人たちも何度も訪れ、舌鼓を売ったり、お土産を買い求めたりしていた。自分の記憶や軌跡、経験と交錯し、対話に尚更に親近感が沸く。

二篇目の「カラシニコフ不倫海峡」は、妻を亡くした男に、いきなり或る女が接触してくる筋書きだ。その理由は、メールのやりとりを読み進めて行くうちにわかるのだけれど、一見無関係な二人が少しづつ近寄っていくその按配が、じりじりするほどいじらしく、まさにだからこれがドラマなのだと知る。好いてしまった二人の関係は、どこまでも純化され、天に昇っても繋がっていく。

人と人の会話が真の対話に変わっていく、血の通った心と心の対話に昇華していく。それを同時進行的に体感させるのが坂元さんの素晴らしさで、それはまさに演劇の境地なのだと分かった。彼のドラマが、どうしてあんなに高い質なのかを改めて分からせる作品集だった。

こんどはやっぱり演劇を観に行かなくちゃいけない。
 

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by k_hankichi | 2017-07-23 00:13 | | Trackback | Comments(2)

手触り感の一冊・・・『アノニム』

ブログ友人が読まれたと聞き、やにわに僕も買い求めて読了。『アノニム』(原田マハ、角川書店)。

アートの持つ力、世界を変えていく底力について、この作品はとても清涼な風とともに伝えてくれた。

ひとりのアーティストが次のように皆に対して語るところでは、ちょっと鳥肌がたつほどの爽快感が得られる。

“おれたちひとりひとりは、確かに世界の片隅のちっぽけな人間だ。
だけど、おれが、そして君たちが新しい表現を生み出さないと、世界中に伝搬する波を作れないと、誰が言うことができるだろう?
おれたちには何もない、だからこそ、おれたちにはすべてがある。おれたちは可能性のかたまりなんだ。
いまこそ、叫ぼう。一緒に進もう。そして生き抜こう。
きっと、おれたちの目の前で、世界へのドアが開くはずだ!”
(「Saturday October 7 12:00PM」より)

絵を売り買いするオークションは、いわば経済行為の極地のような競りの世界。その実態に対して屹立するかのごとく存在するのが芸術という創造、創作行為。物欲そして自己満足を希求する経済世界と、芸術という生を希求する精神的な世界は、その起源からして対立している構図なわけで、極論すると悪と善、という次元まで到達しうる。

しかしその一見二律背反しているところから、全く予想だにしなかった解が得られるのだ、というこの小説の落としどころが、憎らしいほどに爽やか。

読了してカバーを外してみると、本の表表紙と裏表紙、そして背までが一連で繋がった1枚の絵で、それはジャクソン・ポロックの「Nubmer 1A」。油彩画のカンバス地の凹凸感をそのまま浮き出させている凝った装丁。改めてここで僕は唸り声をあげた。

究極の暑気払いだった。

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by k_hankichi | 2017-07-22 11:40 | | Trackback | Comments(2)


音楽、小説、そして酒を愛する方々との空間です


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