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三丁目の朝日

予定よりも早く乗り換え駅に着いてしまい、はてと思った。そうか外に出てみようと一歩踏み出してみれば、そこは昭和と平成が複雑に交錯する場所だった。

目の前の地名は台東区東上野三丁目だと知り、そうかこれは『三丁目の朝日』だなあ、と感じ入った。

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by k_hankichi | 2017-03-30 07:24 | 街角・風物 | Trackback | Comments(0)

もうひとりの浦島太郎

転居したタイミングで、押し入れの奥からLPレコードが入った段ボール箱がいくつか出てきて、かぞえたら数百枚あることが分かった。眺めていたら無性にそれらを再生したくなり、週末に御茶ノ水に足を向けてつらつら眺めているうちに、再生用のアンプや小型スピーカーなどが手元に揃うことになった。

LPレコードを聴く前に、まずはCDを再生してみる。

そこはかとなくバッハの平均律がふくよかに響いてきて、さすがにヘッドフォンで聴く脳内定位とは違うなあと思う反面、学生時代に神妙に耳を傾けたオーディオとはなにかが異なると思った。

押し入れの奥に眠っていたダイレクトドライブ方式のターンテーブルを繋いでみる。20年以上振りに息を吹き返すその機器に載せたのは、ブルーノ・ワルター指揮、ニューヨークフィルハーモニーによるブラームス交響曲第2番のLP(モノラルだ)。

遠く森の奥深くから、微かに響いてくるような金管のか弱さ。

嗚呼。これだ。これがあのころの胸の打ち震えだった。

平成の浦島太郎は、音盤の波打ち際を眺め回した。空白の歳月のことにはまだ気づいていない。

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by k_hankichi | 2017-03-29 18:58 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(3)

一足早いお花見に向かう場所

今朝もみちのくに向かう道すがら。野暮用で一旦上野駅で下車してみると、そこには巨大なる桜のモニュメント。造花なのだろうけれども、生半可でなく圧倒的だ。

桜の下に埋まっているもののことを書いたのは梶井基次郎だったなあと思いながら、下のほうを見ると、あにはからんや、そこにはミニチュアのパンダが遊んでいる図。ああよかったと安心する。

一足早いお花見には、上野の山ならぬ、上野の駅に向かうべし。

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by k_hankichi | 2017-03-24 07:14 | 街角・風物 | Trackback | Comments(4)

諸君、あたしは霊ではあらない。無形のイデアとしてそこかしこ休んでおる。

ようやっと『騎士団長殺し』(村上春樹、新潮社)を読了した。久しぶりに本格小説の醍醐味を味わった。と同時に、この作品は村上氏の代表作になってゆくのだなと感じた。友人もそう僕に話した。

そして知らぬ間に自分自身のうちにも騎士団長が居ることにも気づく。彼の語り口を借りて自分は話し始めている。それは如何にも奇異だ。しかしそれでもこの話法はもはや異形と呼ばれることはなくなるだろうと確信している。「騎士団長語」が人々の間に膾炙してゆく目には見えない「気」の流れを感じる。

諸君、あたしは霊ではあらない。無形のイデアとしてそこかしこ休んでおる。

そんなふうな言葉を発する団長は、何故か自分にそっと寄り添ってくれている。

僕たち一人一人は何を甲斐性に生きているか?其れが無くなってしまったら人はどうなるのか?

その記憶を頭に心に留めておくだけで生きていくのか?或いはそうするだけで生きていけるのか?

喪失と諦観、そして微かな希求再生。その物語だった。

シューベルトの交響曲第5番変ロ長調D485の第二楽章が、この小説にぴったり合っていると思った。あらゆる音符が旋律が和声が身に沁みてゆく。

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by k_hankichi | 2017-03-23 06:28 | | Trackback | Comments(4)

七人の天使に見守られ

今日はお祝いの席に招かれた。七人の天使に見守られて無事に挙式が執り行われ、しあわせというものが、どのような処にもあるのだということを感じ入った。

若き二人の馴れ初めの若々しさや、育て上げられたそのことへの感謝の気持ちの自然なる表現に接しているだけで、何故か涙が溢れでる。

それはそのまま涙腺から口に入ってきた。混じりけの無い透明なる純粋というものは、こういうものなのだと、深く考えてみる必要もなく伝わってきた。

精霊に触れるということはこういうときなのかもしれない。

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by k_hankichi | 2017-03-18 21:26 | 一般 | Trackback | Comments(2)

仕切り直しをした朝

昨日は、ざわざわ、わさわさとした状況に陥らされていた。思い返せば、こういうことを「翻弄される」というのだと気付いた。弄ばれるほうはたまったものではない。

人間とは恐ろしいものでそんなときの憤りの気持ちを向こう見ずにもブログに書き連ねてしまったりもする。翌朝起きてみて、あれまあこんなにも邪な事柄を吐露していたかと、慌てそれを消し込むのだけれども記憶は簡単には無くならない。

ジュリアス・シーザーの時代の最も重い刑が「存在抹消の刑」と称して、罪人が生きてきた記録などを全て消去するものだった。

→ https://en.wikipedia.org/wiki/Damnatio_memoriae

既に亡くなっている過去の人たちに対しても言い渡されるときもあったそうで、その場合は全ての石碑や記録媒体から、その人の言葉やら成し遂げてきた事柄の記載が削り取られ、歴史上もその人は存在しなかったことにするものだった。

それでも人間の記憶は大したもので、そうやって消去された人々はどんな人だったか、ということが何百年も経ても忘れ去られておらず、だから無かったことにするということがどんなに大変なのかが分かる。記録物から消し去られても人々はしっかりと記憶していて、誰かがちゃんと伝えてくれる。だから僕が陥った事柄についても、自分だけでなく誰かがきっと思い出してくれるだろう。

そんなことをつらつら考えながら、まあそうは言っても今朝は仕切り直しだ、一からやり直しだ、と気概も新たに仕事に臨むのだ。

記憶は時折頭をもたげたりするだろうが、理念や理性でそれはまたおさえこまれてゆく。意識的に腑に落ちるように出来るのも人間の凄い業だなあと、自分のことながら改めて感心した。
  
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From: https://en.wikipedia.org/wiki/Damnatio_memoriae

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by k_hankichi | 2017-03-17 08:01 | 一般 | Trackback | Comments(0)

街角を訪ねたい時間

南千住から三河島、そしてその三河島から上野と乗車していると、「紆余曲折」とはまさにこのことか、と思う。鉄路の向かう方角が、あちらとおもえばこちら、というように変化するからだ。

少し調べてみれば、常磐線は建設された当初は田端から水戸だったということで、その後10年ほど経たときに、日暮里から三河島に接続されるルートが出来たそう。それにより実質的に上野から繋がることになる(ただし定義上は、常磐線の起点は日暮里)。

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■上野のいま
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by k_hankichi | 2017-03-15 21:33 | 街角・風物 | Trackback | Comments(5)

またもドイツジンからもらったジン

ドイツから私のところに訪れてくれるドイツ人は、時折ドイツジンを持ってきてくれる。今回は、Ferdinand's Saar Dry Gin。ルール・ザール地方のジンだそうで、これはとても珍しい。

シュペートレーゼという刻印があって、これはもしやドイツワインの甘味処か?と勘繰る。

さてその味は・・・?

ワイン園に生える香草の薫り高いスピリッツで、それはまさしくドイツの葡萄の樹がその周囲に守って来たボタニカルの香り。

美味い!ロンドンドライジンとは一味も二味も異なる重厚な味。

BREXITをものともしない、新たなるユーロジンだった。


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by k_hankichi | 2017-03-14 21:31 | | Trackback | Comments(2)

引っ越しに没頭する

二十年ぶりの引っ越しは堪えた。

今まで暮らした家の最後の片付けと掃除まで、しっかり行うだけでも、身体の節々に負荷が入る。

ようやく終えて、これからが新居の中のたたずまいを整えるとき。

書棚に取り掛かってみて、はて?と思ったのは、やっぱり何年何十年経っても、大切に思う本の順番は変わりないなあ、ということ 。

本の並びにこそ、気持ちが表れるものはない。

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by k_hankichi | 2017-03-12 22:27 | 一般 | Trackback | Comments(6)

不思議な感覚の喚起

これが「郷愁」なんだろうか。あるいは単なる「懐かしさ」なんだろうか。

これまで暮らした神奈川の家の外観写真がその地から送られてきて、それらを見た瞬間、胸の奥からじんわりとしたさざ波のような音が伝わってきて、身体じゅうに溢れた。

およそ20年。

なんだそれだけかと思ったのだけれど、振り返ってみれば、社会人生活の半分以上を、また、人生のおおよそ三分の一をここで暮らしたことになる。

初めてその家を観た日。
初めてそこに引っ越した日。
家の前の坂を、小さな家人の手を引いてその母親が歩いているところに遭遇した日。
その家人が初めて自転車に乗れるようになって、家の前の道路を、行って帰って行って帰ってを延々と繰り返していた日。
怒られた家人が行方をくらまし、心配になって探したがどこにもおらず、結局隣家の車の後ろに隠れていた日。
二階の陽だまりの中の午睡。
さまざまな人々の出入り。
沢山の笑い。
沢山の歓び。
いくつもの不安。
いくつもの諍い。
入園、卒園、入学、卒業、就職の繰り返し。

新しい家に比べれば住みにくく、そして田舎とも言ってよい不便な場所にあった。しかし想いと感情は、物理的な大きさや構造とは無関係なのだ。

無尽蔵の記憶と喜びの軌跡の宝庫。そのことに、ようやく気付いた。

ありがとう、おつかれさま。

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by k_hankichi | 2017-03-10 18:39 | 街角・風物 | Trackback | Comments(2)


音楽、小説、そして酒を愛する方々との空間です


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