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幽玄とバラード

先週末に聴いたアファナシエフの演奏が頭から離れない。あれはいったい何だったのだろうかと渦巻いている。

シューベルトは「能」だったのだと思った。心のわだかまりを解き放ち、「無心」となり何物にもとらわれず自然となる。幽玄なる世界だ。

ではモーツァルトは?

ピアノソナタ第10番ハ長調K330、第11番イ長調K331ともに、これまで聴いてきたピアニストたちとはまるっきり異なる。

明るさ朗らかさというものは介在しない。しかしそこに確かにあるものがある。それがバラードだ。

モーツァルトにバラードがあるということなのか、アファナシエフの心がバラードなのかは分からないのだけれど、それは大層美しいのだということだけは確かだった。
  
  
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by k_hankichi | 2016-10-31 07:55 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)

生きざまをピアニストが回想させ描かせる

ヴァレリー・アファナシエフによるピアノソナタの演奏会を聴いた。

後半のシューベルトを聴きたくて選び、それはその通りにピアニストの哲学と生きざまとの緊迫した対話の時間だった。

音楽はたびたび止まりかけるどころか殆ど停止する。我々はその唐突感に当惑する。空白が起きるたびに、ピアニストと聴衆とは互いに自分の内面に思いを馳せる。それは各々の苦悩と薄幸、邂逅と哀愁、惜別と追憶かもしれない。そして僕らはピアニストを通して自分の過去に遡ってゆくとともに行く末を想像する。

シューベルトのこのソナタについてアファナシエフは嘗て、第二楽章が全てでありそれで完結であり、どうしてその続きを弾きようか、というようなことを書いていたように思ったが、シューベルトは自分が創り出したある種の超越した世界に自分でも怖ろしくなり、あのあとの楽章を書いたように感じた。

あまりにも幸福に満ちた世界は、幻想に過ぎないし、もはや人生の余興に過ぎないかもしれないが、その美しさを思い出すことで気が触れてしまうことから戻ろうとしたのかもしれない。

■曲目
モーツァルト:ピアノソナタ第10番ハ長調K330
同:第11番イ長調K331
シューベルト:ピアノソナタ第20番イ長調D959
(アンコール〜モーツァルト:幻想曲二短調K397)
■場所
浜離宮朝日ホール
■日時
2016.10.28(土)15:00〜17:00

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by k_hankichi | 2016-10-30 07:49 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)

フランス装の『藤村のパリ』

ブログ友人が紹介していて無性に読みたくなって中古本ながらネットで取り寄せてみると、フランス装の箱入りの立派な美本だった。これはたったの37円で、送料のほうが値が高いのが嘘のようだった。『藤村のパリ』(河盛好蔵、新潮社)。

100年ほど前に島崎藤村がフランスに三年ものあいだ滞在したことを知らなかった僕は、その理由についても知って驚いた。

小林秀雄は女と別れるために奈良に逃げたが、藤村はそのためのパリなのだった。そして期間も三年という。それほどの長い期間の傷心だったのだ。

そしてそこでの過ごし方も、ヨオロッパのあちらこちらに触手を伸ばすのではなくパリ(と戦禍を逃れてのリモージュ)に、日本人芸術家や学者たちから少し距離を置いて日々を送るのだ。彼の痛みの深さよ。

僕らとは断然にちがうのだということを改めて知った。

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by k_hankichi | 2016-10-29 13:58 | | Trackback | Comments(4)

雨のなかのモーツァルト

みちのくからの帰りの電車のなかではモーツァルトのピアノソナタを聴き続けていた。

忘れかけていたような曲の数々だったのだけれど、内田光子のピアノはどこまでも優しくて、疲れた心身に沁み入っていく。何の抵抗もなく空気のように沁み込んでいく。

車窓からみえる街の道路は雨に濡れそぼってキラキラと反射している。反射した光はもちろん動画のようで、それは映画のようにも見えて、だから音楽はそのバックグラウンドミュージックなのだ。

たくさんの人たちがそれぞれの建物のなかで働いていたり、また暮らしや雑踏がその裏にあることが信じられなかった。
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by k_hankichi | 2016-10-28 18:56 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)

あまりにも洒脱な解説本

面白くて面白くて、ページを繰るたびに印をつけ、ふむふむと頷きながら読むことしきり。『漱石先生ぞな、もし』(半藤一利、文集文庫)である。

『吾輩は猫である』のなかに出てくる“オタンチンノパレオロガス”の由来。さまざまな小説に出てくる老子、荘子、孔子からの引用の妙。

これはもう解説本というよりも、参考書である。これから、漱石本を読むときには、受験勉強のときのように必携な一冊となった。

漱石先生ぞな、もし (文春文庫)

半藤 一利 / 文藝春秋

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by k_hankichi | 2016-10-27 08:08 | | Trackback | Comments(4)

秋の言葉の逍遙

最近、外出時にいつも持ち歩いて読み進めているのが『ことばの歳時記』(金田一春彦、新潮文庫)。一年ぶんが収められているから、鞄から取り出したその日とその前後分だけを読む。

10月25日の歳時記は「天プラそば」。漱石の『坊っちゃん』で松山の町かどで蕎麦屋を見つけて天プラそばを四杯平らげたことにまつわる話だ。

四国には蕎麦が珍しいが名古屋でもそうらしく、ソバに天プラを載せて、と頼むと中華ソバに載っけられたものが運ばれてきたというオチが書かれていた。

本当なのだろうか。いまもそうなのだろうか。

ことばの歳時記 (新潮文庫)

金田一 春彦 / 新潮社

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by k_hankichi | 2016-10-26 07:18 | | Trackback | Comments(0)

晩秋につながる空気が生み出す心の靄(もや)

夜半明け方が冷え込むようになった。寝るときも布団一枚ではなく毛布も下に重ねて温まる。

よく眠れるのだがその時間も長いので、夢も三部構成のように長くなる。今朝は久しぶりのオムニバス形式。

■第一話
北欧の田舎街の生活。皆はアパルトメントや家屋ではなく路側に置かれた一見粗末な二段ベッドで暮らしている。しかしそれは貧しくなく逆に快適だ。何故なのか・・・?

■第二話
そんな街で歌劇『カルメン』が久々に掛かる。街の人たちは夕食を済ませてからおもむろに集まってくる。オーケストラピットでは楽団員が食べ物やワイン片手に練習中。いつ始まるのかとみな固唾を飲んでいると・・・・。

■第三話
「今日から僕は銀行員になった。」
はんきち氏は一家に宣言する。
「えっ?どうして銀行?」
一同は絶句する。
「天職であると啓示があった。」
「できないわよ、あなたなんかに!」
「いやできる。エンジニアとして培った統計力学を駆使すると金利の予測は(むにゃむにゃむにゃ・・・)」

冷えた空気のなか、少しけぶったような朝の靄を通した陽の光が頬を撫で、一瞬朦朧とする。

シャキッとしなければ。今日も仕事なのだ。
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by k_hankichi | 2016-10-25 07:40 | 夢物語 | Trackback | Comments(0)

『大人にはわからない日本文学史』に成る程と思う

『大人にはわからない日本文学史』(高橋源一郎、岩波現代文庫)には成る程と思った。明治学院大学などで一年間にわたって行われた講義をもとにしたものだ。

詳細は省くとして、高橋さんの示唆は次のよう。

“樋口一葉は、明治二十年代、反リアリズム(そういう言葉はなかったのですが)の作家と目されました。しかし百年の後、冷静になって考えるならば、そして綿矢りさという作者の作品を通して考えてみるなら、樋口一葉こそ、また綿矢りさこそ、わたしたちは、正当な「リアリズム」の継承者であるといわなければならないのかもしれません。”

高橋さんのガイドによって、紹介された樋口一葉の『にごりえ』からの抜粋を読むだけで、そこには生きる女の確かな気持ちと時のながれ、雑踏のなかの音や声が聞こえてくる。

僕として苦手だった綿矢りさの何が苦手と感じていたのかが分かる。

もう一度、彼女らの小説を読んでいかなくては、と深く息をついた。

大人にはわからない日本文学史 (岩波現代文庫)

高橋 源一郎 / 岩波書店

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by k_hankichi | 2016-10-24 07:45 | | Trackback | Comments(0)

手際の良さと味気なさと

机の中であるとか、箪笥、書棚などを整理すると、気持ちが清々とする。

昨日は、先週整理した本の処分をしに、近くの一般古書リサイクル店に持ち込んだ。段ボール箱で6つ。むかしの感覚だと、査定に小一時間かかるだろうなと思って、手持無沙汰に店内をうろついていると、ものの10分ほどで、それが終わったことを告げられる。

ん?ほんとうに…?半信半疑でカウンターに向かうと、287冊で〆てxxxxx円と告げられる。「諭吉」さんも「一葉」さんも入っている。

想定以上だったので、「はい、これでお願いします」と応えれば、相手は無言のうちに書類を突き出しサインを求められ、自動的に会計に移っていく。

その店では、古本一冊一冊の値段があらかじめ設定されていて、本のバーコードを読み取ることで瞬間的にそれが計算され、たとえ数百冊であろうとも瞬く間に集計が進むと分かった。

「あーこれ、いい本なんだけどね、表紙のヤケがなけりゃねえ」
「この本、うちにもう三冊もあっからねえ、面白い本だけど、xxx円でいいかい?」

そんなやりとりを、お店のおじさんと交わせていた時代のことが懐かしい。
 
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by k_hankichi | 2016-10-23 09:10 | 一般 | Trackback | Comments(2)

音楽が紡ぎだされることからの啓示

週日の疲れがたまって朝寝をしたあとに、おもむろにパソコンを操っているとこのサイトが出てきた。題名がよくわからないまま観始めたら、それはそういう曲で、短いながらに最後には滂沱の涙に伏した。

神の啓示というものは、こういうことがらに繋がっているように思った。

■Som Sabadell flashmob - BANCO SABADELL →https://youtu.be/GBaHPND2QJg

 
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by k_hankichi | 2016-10-22 10:41 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)


音楽、小説、そして酒を愛する方々との空間です


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