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なめし革のような音色のヴァイオリン・・・ルノー・カピュソン

クラシック音楽が好きだが演奏家の隆盛事情には詳しくない。慣れていないから、それ故に新しい音色に遭遇して驚き目が覚めるような思いをする喜びがある。

ルノー・カピュソンという男性ヴァイオリニストがそうだった。
http://www.renaudcapucon.com/

カティア・ブニアティシヴィリがピアノを務めていて、フランク、グリーグのヴァイオリンソナタ、ドボルジャークの4つのロマンティックな小品という良い組み合わせだったから買ってみたのだけれど、なめし革のように艶やかで、同時に骨太な音色に驚いた。

心地よさ。ジェントルマンの包容。この人の前世はバトラーか、はたまた髪結いだったのではないかと思うような繊細さも併せ持つ。

ブニアティシヴィリのピアノも挑発的で、カピュソンの弦に絡み付くようになっていて、はらはらする妖艶さがある。二人のちょっと際どい映像を空想してしまえるほどだ。

フランクは第二、第三楽章が特にそんな感じで、聴いているだけで唸りが出る。第四楽章はすでに親密になった二人のたゆたう昼下がりのような時間だ。

■収録:2014.4.28-30、カンプラ・オーディトリアム、ダリウス・ミヨー音楽院、エクス=アン=プロヴァンス
■音盤:仏エラート 082564250189

■演奏のYoutube →http://youtu.be/gFnkRrV8ZRk


Sons for Violin & Pno

Franck / Erato

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by k_hankichi | 2014-10-31 07:13 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)

『「良心」から企業統治を考える』(田中一弘)という本が出る時代

企業経営に関するこんな題名の本があろうとは、とビックリして読んでみた。『「良心」から企業統治を考える』(田中一弘、東洋経済新報社)。副題は「日本的経営の倫理」だ。

世の中も随分と次元が低くなったものだと思う反面、米国のエンロンを始めとするいろいろな事件や出来事は、こういったことが倫理道徳として定着していないがために起きているのだよなあと感慨する。

対立構図として、以下のように描かれている。

①良心による企業統治
 ・良心(conscience)を起点に哀歓(歓びと哀しみ)をドライバーとする。
 ・自己統治(自律)と内発的動機付け
②自利心による企業統治(コーポレート・ガバナンス)
 ・自利心(self-interest)を起点に快不快(快さと不快さ)をドライバーとする。
 ・他者統治(他律)と外発的動機付け

コーポレート・ガバナンスという理念は、②の自利心による企業統治をドライバーとしている企業経営方法だということで、それが機能しないということが分かった現代、日本古来の生活人としての立ち振る舞いに返るべき。そのような感だ。

人間は、人の役に立ったり、人を喜ばせることに我々は歓びを感じ、人の役に立てない、人を害する、落胆させることに哀しみを感じる。「人のためになる」、ということを「利他」というのだということを著者から改めて説かれて、そうですよ、そのとおりですよ、ちがうのか?と心の中で反芻する。あたりまえのことを言われているので、心根がよくわからなくなってくる。

しかし、現代の経営、経済の成り立ち(株の売り買いや何々ファンドというものの素性)を考えてみれば、これとは対極にある場合があって、だから、「人のためになる」と著者が説くのは、その実、荒んでしまった経済原理の裏返しなのだと気付くまでに時間は掛からなかった。

「社会人としての道徳教科書」として流布し尽くしてほしいと思う反面、そんなことを説かねばならない時代はもう終わっているのかもしれないという諦観が頭を過る。

「良心」から企業統治を考える

田中 一弘 / 東洋経済新報社

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by k_hankichi | 2014-10-30 06:56 | | Trackback | Comments(3)

ソル・ガベッタの祈り『Prayers』

ソル・ガベッタ(Sol Gabetta)という美しいチェリストを遅まきながら知った。そしてスピリッチュアルな響きに感銘した。
http://www.solgabetta.com/

『Prayers』(祈る人)という題の音盤だ。

スイスの作曲家エルネスト・ブロッホの「ユダヤ人の生活から」や、ショスタコーヴィチの「ユダヤ民族詩から」、そしてパブロ・カザルスの「鳥の歌」などが弾かれている。

特に心に沁みたのはカザルスの「鳥の歌」。例の、「ピース、ピースと鳴くのです」という言葉が重なる。

アムステルダム・シンフォニエッタやリヨン管弦楽団がバックを務めるこのアルバムは、この世に生きる全ての人々の静かなる祈りが込められている。

■曲目
1. ブロッホ:『ユダヤ人の生活から』
2. ブロッホ:『組曲「バール・シェム」~ニーグン』
3. ブロッホ:『ヘブライの瞑想曲』
4. ショスタコーヴィチ(ミハイル・ブロンナー編):『歌曲集「ユダヤの民族詩から」Op.79~「子守歌」「いましめ」「貧しさを歌う」「乙女の歌」
5. ブロッホ:『シェロモ』
6. カザルス:『鳥の歌』
■演奏:ソル・ガベッタ(Vc)、アムステルダム・シンフォニエッタ[1~4]、レナード・スラットキン(指揮) フランス国立リヨン管弦楽団[5]、アムステルダム・シンフォニエッタ・チェロ・アンサンブル[6]
■録音:2012年4&10月&2014年6月、オランダ、ライデン・スタッヘホールザール
■音盤:ソニー・クラシカル 88883762172

■Sol Gabetta - Bloch - Prayer - Jewish Life →http://youtu.be/j1Nla07BFbQ

※追伸:しかし、エッシェンバッハが・・・

Prayer

Sol Gabetta / Imports

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by k_hankichi | 2014-10-29 00:01 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(5)

ミュッセとヴェルレーヌの詩の原風景

映画のことを思い出していた。『やさしい人』(原題'Tonnerre')のことだ。そこで主人公マクシムの父が口ずさんでいたのはミュッセの詩。

普段は実に哀しげな顔つきをした、やる瀬ない風情の黒ぶちの犬は、彼の言葉を聞くだけで生気が蘇り元気になる。

「恥を知れ 暗い目をした女よ その不吉な愛が闇の中に葬った 我が春の幸福を」

というようなものだ(日本版の映画Trailerから抜粋)。

また、マクシムの友人の娘が学校の宿題ということで諳んじていたのは、ポール・ヴェルレーヌの詩だ。

失恋の哀しに暮れる・・・のような詩だったかしらん。

ブルゴーニュの曇天の下に、監督はたくさんの心象風景を重ねていた。この詩情がたまらなく良い。

■ギョーム・ブラック監督のインタビュー →http://youtu.be/i5SOAEpwExI

 
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by k_hankichi | 2014-10-28 00:24 | 映画 | Trackback | Comments(2)

渋谷駅前のジオラマ

子供の頃、テレビドラマ『コンバット』を毎週水曜日の夜だったか見せられて、それ以来、戦争もののプラモデル作りばかりしていた。もちろんサンダー・バードの宇宙ロケットや地中探検機も作ってはいたのだけれど。

欧米の軍隊の陸軍や日本陸軍のプラモデルを作るが、子供ながらにアメリカ軍の仕立ては格好よく思え、だから念入りに組み立てた。もちろんそれは『コンバット』のサンダース軍曹の影響なのだろう。

そんな思い出が蘇ったのは、渋谷に映画を観に行ったついでに、ブログ知人が紹介していた昭和30年代後半の渋谷駅前のジオラマを見たからだ。東急百貨店・渋谷本店の入口に鎮座する。

これは富沢瑞夫・昭子夫妻によるものだそうで、その精密さといったらない。首都高速道路は建築途上であり、しかし五島プラネタリウムはすでにそこにある。映画は渋谷パンテオンでは『史上最大の作戦』、渋谷東急では『大脱走』が並行してかかっているように描かれている。Wikipediaによれば、前者の映画は昭和37年12月8日、後者は38年8月10日の封切りだから、両方が一緒にかかっている時期は本当は有るのかなという気持ちが頭を過る。

しかしそれでも、この模型は精巧だ。僕が弟と二人で父親の手助けを借りながら作っていた代物とは大違いだ。

ジオラマ。この響きの外国的なる不思議さにいまだに憧れる。あのころの自分、あのころの時代。それを鮮明に蘇らせる力をもつ佇まいに、僕は遠く西の空を胸を張って見上げざるを得なかった。

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by k_hankichi | 2014-10-27 00:30 | 街角・風物 | Trackback | Comments(6)

永遠の「ドーシラー、ソファミレ、ドー」

件の『くるみ割り人形』事件以来、家の居間や廊下でバレエダンサーの振りをつけをして、くるくると回ったりして浮かれていた。

そんななか、ブログ知人のnumabeさんの示唆でエフゲニ・ムラヴィンスキー指揮、レニングラードフィルハーモニー管弦楽団による『くるみ割り人形』のCDをようやく手に入れた。ただし1977年の大阪でのライヴ音源ではなく、同年同月の東京でのライヴだ。彼が聴いたという日の演奏なのかもしれない。

演奏を聴いて腰を抜かした。

特に「パ・ド・ドゥ」から「終曲のワルツ」にかけての大きな絵。

これは荘厳な人類の抒情詩だ。なんと雄大で大きく、大胆で健やかで伸びやかなのだ。明日に向けたエネルギーの萌芽というものは、ここから出てくるのだ。ムラヴィンスキーの世界の果てしなさを知った。

目指す世界の大きさとその気概。ゲルギエフは、これに比べればまだこの世のなかのことを描いていて、若造にすぎない。

■曲目:
・シベリウス:交響曲第7番ハ長調Op.105
・チャイコフスキー:『くるみ割り人形』~「客の退場、夜、ネズミの出現」
・チャイコフスキー:『くるみ割り人形』~「くるみ割り人形とネズミの戦闘-くるみ割り人形の勝利と王子への変身」
・チャイコフスキー:『くるみ割り人形』~「冬の森」
・チャイコフスキー:『くるみ割り人形』~「雪片のワルツ」
・チャイコフスキー:『くるみ割り人形』~「パ・ド・ドゥ」
・チャイコフスキー:『くるみ割り人形』~「終曲のワルツ」
 レニングラード・フィルハーモニー
 エフゲニー・ムラヴィンスキー(指揮)
■録音:1977年10月19日、NHKホールでのライヴ(シベリウス)、10月12日、東京文化会館でのライヴ(チャイコフスキー)
■音盤:Altus ALT054

シベリウス:交響曲第7番、チャイコフスキー:くるみ割り人形(抜粋)

ALTUS

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by k_hankichi | 2014-10-26 22:48 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)

「世界入りにくい居酒屋」(ブリュッセル編)は食い倒れ横丁

録画してあった『世界入りにくい居酒屋』(10月22日[水]放映)は、ベルギー・ブリュッセルの巻。かつては年に2回は訪れていた場所なので、ワクワクとして観始める。
http://www.nhk.or.jp/nikui/00_brussels/index.html

グラン・プラス近くのワッフル屋のシーンも出てくる。日本で売っているのと同じ硬めのワッフルもあるのだけれど、あれは偽物で、生地がもっと色白で大判であるやつが本場物なのだ。それが映像に出てくる。

初めて食べたときの喉越しと頭がぐらんぐらんした感覚が蘇る。パウダー状の白砂糖が軽くまぶしてあったりクリームが塗ってあって、噛みこんだ瞬間「なんじゃコリャ!」と喉がぐぐっと鳴った。天使の羽根(想像上の話)のように柔らかく、サクッとしている。無言のまま食べ進め、目玉がぐるぐる回りながら、文字通り貪り食う。

画面はそこから少し歩いたイロ・サクレ地区という食い倒れ街に移る。ムール貝料理を鍋いっぱい食えるシェ・レオン(Chez Leon)も出てくる。どの人もガツガツと食っているのが嬉しい。

そして件の居酒屋。オフィス街に位置するという説明。映像の中で「LOFT」というバー・レストランが出てきて(こちらも洒落ている感じなのだけど)、その横丁を入り込んだところにある。「Le Petit Palais」という名前だ。

たしかに入りにくそうな居酒屋。しかしそのなかの雰囲気は気さくで明るい。どの人も旨そうなものを食っている。アメリカンという生肉とタマネギとパセリや特製ソースで混ぜ込んで練った料理(生で食べる)が人気だという。タルタルステーキだ。

ビールは南ベルギー・ボヴィニーのLupulusというものが旨いらしい。
http://www.lupulus.be/en/brewery-3-fourquets-beer-lupulus.html

僕は灰色海老のコロッケを食いたくなった。キノコをバターとニンニクで炒めてパセリを加えたものを焼いたパンと交互に層状に重ねた料理も実に旨そうだ。牛肉や野菜をビールで煮込んだベルギー風ビーフシチューもそそられる。

この店には夜に一人で行くのはちょっと危険な香りがする(その理由は番組に出てくる)ので、誰かを誘っていつかきっと訪れてみたい。

Le Petit Palais
Rue du Baudet, 5 1000 Bruxelles
http://www.lepetitpalais.be/index.html(やかましい音楽が流れるので注意)

■この横丁の奥に居酒屋が有る →https://www.google.co.jp/maps/@50.8399227,4.3601856,3a,75y,231.85h,92.18t/data=!3m4!1e1!3m2!1s4Pg_cjzdYX7jPNHJLWDkLw!2e0
  
■この動画も面白い「世界遺産とベルギー料理」→http://youtu.be/n40fZEhpZ2E

  
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by k_hankichi | 2014-10-26 09:29 | テレビ番組 | Trackback | Comments(2)

『やさしい人』に流れるミドル男の哀愁とロマン

『やさしい人』(ギョーム・ブラック監督、原題'Tonnerre'、フランス、2013年)の封切りを観た。今年のベストスリーに入る映画だった。

雨が降り続け、そして雪も舞ってくる。ブルゴーニュの街はどこまでも寂しい。秋から冬にかけてのこの土地の哀愁は、音もなくそこにある。

哀愁は主人公のロックミュージシャン、マクシム(ヴァンサン・マケーニュ)にも通じる。ミドルエイジの優男だ。その父クロード(ベルナール・メネズ)もそういう素性を持つ。二人の家には、黒ブチ犬が飼われている。こんなに悲しげな眼差しの犬は初めて見た。そんな二人と一匹の世界にシモーヌ・シニョレ張りの若い美女メロディ(ソレーヌ・リゴ)が現れる。

マクシムはメロディに一目惚れし、二人は深い仲になっていく。歳の差を気にせず付き合う二人。しかしそこになにかしらの影が射しこんでいるのを、どちらも気づいていたとしても知らぬように振る舞っていく。

そんな世界はそのまま続いていくのだろうか。結末まで観終えて、僕は自分のことを考えた。同じような哀愁の世代。この先のさみしさ。

この映画をロマンといってよいのだろうかわからないのだけれど、僕はロマンだと確信した。

映画のホームページからは次のようにあった。
“フランス・ブルゴーニュ地方、まもなく冬を迎える小さな町トネール(Tonnerre)。パリから一人の男が、父親の住む実家に戻ってくる。かつてはインディーズでそれなりに名を馳せたミュージシャンのマクシム。人気の盛りは過ぎ、目の前にあるのは、先行きのない未来だけ。ギターを手にしても、でてくるフレーズにはどことなく甘酸っぱさが残るが、若さはもはや過去のもの。
しかし人生にはときに素晴らしい贈り物が差し出される。マクシムにはそれは若い恋人だった。だがそれは、かつてない無情な速さで失われてしまう。突然消えたロマンスを追うマクシムは、人生を揺るがしかねない危うい行動にでる――。
歳をとるのは難しい。いつからが青年で、いつからが中年なのか。老いは少年の心でもってしても、誰にもやってくる。マクシムはその狭間であがき、苦悩する。しかしその苦悩の果てには、父親との間にあったわだかまりを克服し、そして本当に愛することの意味を見出した、大人の男となったマクシムがいるのだった……。”

■『やさしい人』('Tonnerre')→http://youtu.be/5EaXQMEbWyg

  
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by k_hankichi | 2014-10-25 19:40 | 映画 | Trackback | Comments(3)

チャイコフスキーの「ド〜シラソファ〜ミレド〜」にひたすら泣く

件の『くるみ割り人形』をまだ聴いている。そしてこの曲は大変な名曲だと深く深く思った。

第二幕の後半の「アダージョ イントラーダ」には特に泣いた。

雨が強く降り注ぐ、みちのくの寒い朝に、一人街角の喫茶店でコーヒーを啜り聴いていたら、訳なく涙が一気にドバッと溢れてしまった。自分の孤独さと重なったのだろうか。周囲を見やりながら縮こまった。鼻をかんだ。

「ド〜シラソファ〜ミレド〜」という単純なる旋律の繰り返しだけなのに、なんでこんなに感興かわ沸くのだ。旋律はいくつかの楽器でこれが繰り返され、また、「ラ〜ソファミレ〜ドシラ〜」が途中に入ってくるくらいだ。単純だ。

それなのに感涙する。冬の雨や雪の日には、必ずチャイコフスキーを聴こう。そう思った。

■アダージョ →http://youtu.be/kUaSvXTHctA?list=RDkUaSvXTHctA

The Symphony Orchestra of the St. Petersburg State Academic Capella. Chief Conductor - Alexander Chernushenko. "Classic Open Air Dresden-2011". Tchaikovsky. The Nutcracker: Adagio
  
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by k_hankichi | 2014-10-24 06:04 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(4)

チャイコフスキーを聴くときに見つけるもの

頼まれて、曲目だけ指定されて音盤を買い求めた。つまらなそうだなとあまり乗り気がせず、しかし知っている指揮者を選んだだけの買い物だった。

ところがどうだろう。みちのくへ向かう特急列車の車窓に流れる淋しい景色を、流し目で次々に追っているうちに、なかなかどうして佳い曲なんだなあ、と気づき始めていた。

込み上げてくる懐かしさがあった。それは日々の仕事に埋もれていればいるほど忘れてしまっていた何かだ。

■曲目:チャイコフスキー『くるみ割り人形』作品71(全曲)
■演奏:ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、マリインスキー劇場管弦楽団(サントペテルプルグ・キーロフ劇場管弦楽団)
■収録:1998年8月、フェストスピールハウス、バーデン=バーデン
■音盤:ユニバーサル UCCD-2120

特にそれは「情景 クリスマスツリーの中で(冬の松林)」という曲だった。次々に押し寄せて、幾層にも重なる血潮。塊が解きほぐされ融和してゆく快さ。

これがどんなシーンの描写なのかは分からない。しかし、哀しみや苦しみ、蔑みを経て自らの存在の美しさに気づくようだ。

「情景 魔法の城(お菓子の王国の魔法の城)」という曲も然り。邪心や人を貶めるものなど全く無い純粋無垢なる世界。

子供のころの絵本や、『エルマーとりゅう』のような童話を楽しんでいた気持ち。

チャイコフスキーを聴くときに見つけるものは、純粋な透明なる篤き血潮。横縞なるものとは無縁な、どこまでも拡がる快活なる心身の歓びだ。

チャイコフスキ-/バレエ<くるみ割り人形>

ゲルギエフ(ワレリー) / ユニバーサルクラシック

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by k_hankichi | 2014-10-23 01:20 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(6)


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