音楽、小説、そして酒を愛する方々との空間です

by はんきち

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昨晩は少人数の職場仲間とで飲み会。いつもの大宴会とは異なり、それぞれの人とじっくりと話す時間があった。

生まれた場所、育ったところ、学校のこと、先輩、社会人になった時期、家庭をもつことになったころ、趣味、などなど話は尽きない。

どの人とも何かしら同じ場所や時間、経験の共有、共通点を見いだせて驚く。

天城トンネルの話は面白かった。下田に生まれ育った人たちは、あのトンネルまで行って、洞の真ん中で車のクラクソンを3回鳴らして佇むことが、最大恐怖の肝試しだったそう。

河津ループ橋は僕が大人になってから出来上がった記憶があり、それまでは川端康成の小説のような落ちうど宿場町が寂しくあっただけだと説明したら、変に感心がられた。

そういえば、大学に入ってからだったか天城山に登山した。万二郎だったか万三郎だったかという峰を極めたとたん、天候が防風雨に変わり、いのちからがら裾野に降り立った場所はゴルフ場だったというようなこともあったことを思い出した。

あの、狐につままれたような奇妙な気分は今になっても鮮明だ。
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by k_hankichi | 2014-09-30 08:01 | 街角・風物 | Trackback | Comments(2)
『タマリンドの木』(池澤夏樹、文藝春秋刊)を読了。熱きアジアに馳せる確かな恋がそこにあった。


主人公の野山隆志は発動機メーカーに勤めるセールスエンジニア。NPOで働く樫山修子とは、カンボジア難民キャンプへの寄付の場で初めて出会い、そこから控え目でしかし確かで熱い恋が始まる。

彼女がタイ国境に戻るまでの数日の、めくるめく日々。彼にとって掛けがえのない人であることを確信する。

半ば過ぎで、「デング熱」に彼女が罹患した場面に遭遇して、いま東京でそれが話題だから、読むのにも更に力が入る。

“恋とは人と人を引き寄せるが、そうして作られた仲を維持するのは恋ではない。もっと別の、もっとしっかり根を張るもの、日々の生活によって満たされるもの。もっと永続的な力。”

“人は結局は自分のために愛するのかもしれない。自分らしい自分のために、自分以外の誰にも愛しようのない相手を選んで自分だけのやり方で愛する。”

タマリンドの木とは、タイやインドシナ地域に地生する、真っ直ぐな幹の上のほうにだけ枝葉をつけるマメ科の木だそう。

そんな真っ直ぐな気持ちで周囲に、人に、対峙したい。そういう気持ちになった。
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by k_hankichi | 2014-09-29 07:44 | | Trackback | Comments(0)
東京散歩の往き帰りの車中で『モノ書きピアニストはお尻が痛い』(青柳いずみこ、文春文庫)を読了。いつもにも増して、鋭き洞察力とウイットに感銘する。たとえばつぎのようなところで。

“ マーラーの書いた音楽の中で一番ドビュッシーを連載させるのは、第九交響曲の最終楽章だ。ここでは、すべての弦楽器が弱音器をつけて弾かれ、Des-durの和音のかすかなふるえとともに、「死滅するように」消え去っていく。この有名なアダージョを聴いていると、私は、無意識のうちに、この音たちはこのあとどこへ行くのだろう・・・・と考えてしまう。
 アンデルセンの人魚姫のように、海の泡になって天国にのぼっていくのか、それとも、さまよえるオランダ人のように、成仏できないまま永遠に海上をさすらいつづけるのか。
 なんとなく、無事天国に行きつけるような気がする。
 実は、ピアニシモで消え入るように終わるのは、ドビュッシーの専売特許なのだ。彼の楽譜には、至るところに、フランス語で書きつけた「presque rien(ほとんど何もなく)」や、「a' peine(かすかに)」の指示がある。ジャンケレヴィッチの表現によれば、「生と死、存在と非存在、時間と非時間の敷居の上」にある、ドビュッシーのピアニシモ。”(「ピアニスト的作曲家論」より)

青柳さんの著作を読むと、音楽や芸術についての視点が深く広く据わってくることに気づく。

モノ書きピアニストはお尻が痛い (文春文庫)

青柳 いづみこ / 文藝春秋

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by k_hankichi | 2014-09-29 00:34 | | Trackback | Comments(2)

日曜午後の御茶ノ水散策

真っ青な秋空広がるなか、御茶ノ水界隈を散策。ニコライ堂は礼拝のさなか。

坂を下った途中に、飛騨牛のお店があって立ち寄る。朴葉みそ焼き飛騨牛ランチにした。葉の香りが豊かで、山椒や七味で味つけしても旨い。

腹ごしらえを終えて、さて買い物に向かおう。

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by k_hankichi | 2014-09-28 13:02 | 食べ物 | Trackback | Comments(5)
これはフランスのウォッカである。Froggy B という銘柄で、「カペット種」という小麦を使って5回蒸留したもの。厳しすぎず、しかしマイルドな余韻が漂う。

こんなに穏やかな気持ちになってよいのだろうか。でも、これがエスプリということ。考えてみれば、ロシアとフランスは古くから深い関係がある。

ウォッカの概念を底辺から覆した、実にマイルドなお酒で、ヨオロツパの広さを体感している。

エスプリをカエルから学んでいるよなあと思ったら、Youtubeにそんな画像があって、椅子から転げ落ちそうになった。

http://vodka.findthebest.com/l/513/Froggy-B

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■Learn French with the frog : L'alphabet →http://youtu.be/Ix8K9YiEPsk

  
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by k_hankichi | 2014-09-27 19:24 | | Trackback | Comments(2)
ジュンパ・ラヒリの小説『低地』は、インドのベンガル地方と、アメリカのロード・アイランド州が舞台だ。

ロード・アイランドは、ウディ・アレンの映画に出てくるようなコニー・アイランドのようなところなのかしらん、とずっと思っていたので、この小説で大分認識を改めた。どうもコネチカット的な香りもするようだ。

小説では主人公夫婦がロード・アイランドの大学で学んだりするところが出てくる。自然に囲まれた瀟酒な環境らしい。

最近、この大学で学んだ人と知り合ったのだけれど、ああなるほど、この静かな控えめな、しかし芯のある佇まいはこのような環境が育むのかな、と思った。

ロード・アイランド・・・。いつかきっと訪れてみたい。

■ジュンパ・ラヒリ(「波」[新潮社]9月号表紙から)
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by k_hankichi | 2014-09-26 21:13 | 街角・風物 | Trackback | Comments(2)
ベージに挟み込まれた絵や彫刻の写真にどぎまぎしながら、電車に乗りながら読み続けた。『ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」はなぜ傑作か? ―聖書の物語と美術』(高階秀爾、小学館101ビジュアル新書)。

断片的にしか聖書を読んだことがなく、しかし洋画にでてくるさまざまな構図に、奥のある事柄をかぎ分けていたから、この書を読んで霧が晴れたような気持ちになった。

・天地創造
・アダムとエヴァ
・水浴のスザンナ
・バテシバの不倫
・「雅歌」とサロメの踊り
・受胎告知
・「最後の晩餐」はなぜ傑作か?

という構成で、ふんだんな絵がそこにあるから、全く厭きないで食い入るように見いる。

キリスト教の世界の奥義を噛みしめた。

ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」はなぜ傑作か?: 聖書の物語と美術 (小学館101ビジュアル新書)

高階 秀爾 / 小学館

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by k_hankichi | 2014-09-25 20:28 | | Trackback | Comments(0)

和食の味わい

たった数日でも、外国、それが例え東洋であろうとも、食事のたびに何かと対比しながら味わっていることに気づく。それはやはり和食の味のことで、日本に帰って食事に箸をつけたときに、さらに深く実感する。

欧米や東洋の大陸での食は味が濃い。食材そのものの風味というよりも、それぞれの造作の痕跡が分かるくらいのことが必ずや入り混んでいる。これでもかこれでもか、というような場合まである。それが旨い味に仕上がっている場合も、また、あにはからずの結果になっている場合も。

日本の味はやはり素材の持ち味を最大限に活かす工夫に満ちている。薄く控え目にそこはかとなく案ずるような味付けになっている。

主張し過ぎず、そのものを重んじ、相手の力を最大限に引き出そうとする企て。

大陸の思想とは大きく異なるかもしれない。しかし自らを生かすための最大の所作。自然の持ち味をあくまでも謙虚に生かし、見えない工夫を施す。素朴ななかの骨太。

昨日は秋分の日。家に帰ったら、おはぎが作られてあって、それを食べていたら妙に心落ち着きゆったりとした気持ちになった。

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by k_hankichi | 2014-09-24 06:50 | 食べ物 | Trackback | Comments(4)
出張の帰途の機内で、ドリュー・バリモアとアダム・サンドラー出演の映画『Blended』を観た(監督:フランク・コラチ、2014年米国)。『50回目のファースト・キス』や『ウェディング・シンガー』で共演した二人の最新作だ。
Director: Frank Coraci
Writers: Ivan Menchell, Clare Sera
Stars: Adam Sandler, Drew Barrymore, Bella Thorne
http://blendedmovie.com/

あまあま系の恋愛コメディかと高をくくって観はじめたら、いやいやどうして五回も六回も涙溢れる。キャビンアテンダントが何回も不審な眼差しでこちらを伺い困ったが、こちらとて真剣なのでそのまま魅入られ続ける。

ストーリーは、離婚して悪ガキ二人を養いながらクローゼット整頓という新手の家事代行業を営むロレーン(ドリュー・バリモア)が、妻と死別し女の子三人を養いながらスポーツグッズ店で働くジム(アダム・サンドラー)と、ブラインドデートをしているところから始まる(長女役のヒラリーをベラ・ソーン(Bella Thorne)という女優が演じていてこの人も美しい)。

ロレーンは、ジムに初デートの場所を「フーターズ(Hooters)」に設定され、しかも不躾な態度をとられて憤る(あとから、その場所を何故彼が選んだのかがわかり、観ているものは涙する)。そしてふたりは金輪際会わないと考える。

しかし、ひょんな縁からアフリカへの旅行先で、ふたつの家族が出会ってしまうことになる。呆れてがっかりする二人。しかし数日を近しく過ごしていくうちに互いにそれぞれの子どもたちの面倒をみることになり、次第に相手の優しさに気付いてゆく。

男親としての力強さ。女親としての包容力。辟易が転じて互いに惹かれあうものになり、ふたりの間には抗うものが消えてゆく。

バリモアとサンドラーという極めて個性豊かな俳優は、夢を現実にするストーリーを完璧に仕上げて魅了した。

やっぱりドリュー・バリモアが好きだ。

“中秋や 霞む大陸 あとにして 機内で昂る 滂沱の涙”

■"Blened" Trailer →http://youtu.be/8MuWt2X59fo

■子供役のBella Thorneの変身 →http://youtu.be/JvDCABj54m8

  
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by k_hankichi | 2014-09-23 18:00 | 映画 | Trackback | Comments(2)
ジュンパ・ラヒリの新作『低地』(新潮社クレストブックス)に、夜を更けるまでのめり込み読了。これは素晴らしいドラマだった。

インドのカルカッタに生まれた兄弟、スバシュとウダヤン。第二次世界対戦が終わるころから話は始まる。中流の暖かい家庭に育ち、それぞれが聡明なる思考を宿してゆく。

理科系の二人。兄スバシュは環境科学、弟ウダヤンは化学を専攻し大学院に進む。

ウダヤンは社会思想、差別社会に憤りを感じ、やがて闘争活動に身を走らせてゆく。学生ながらガウリという思想史を専攻する女性をめとる。

そして悲劇が訪れる。兄とガウリは、生きとし生けるものとしてアメリカのロードアイランド州に渡り、ウダヤンに代わって家庭を築いてゆく。二つ目の物語の始まりだ。

それより先い話をここに書いてはならぬ。このぎりぎりの、にじにじとした二人の関係を読み進めるうちに、それがもしかしたら自分のストーリーであったのかもしれないと感じ始めた。

アジアの南とアメリカ。そのあいだの熱くて深い情念。

今宵は、そこに近い華東の地に僕は居る。そのまま西に歩を進めたいという気持ちに駈られながら、漆黒の闇夜を眺めている。

低地 (Shinchosha CREST BOOKS)

ジュンパ ラヒリ / 新潮社

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by k_hankichi | 2014-09-22 00:59 | | Trackback | Comments(0)