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自然体の奇をてらわないエッセイ・・・『最低で最高の本屋』(松浦弥太郎)

『最低で最高の本屋』という、不思議な題名のエッセイ集を読んだ。松浦弥太郎著、集英社文庫。松浦さんは、雑誌『暮らしの手帖』の今の編集長だ。

この人の本や雑誌、そしてデザインにかける意気込みや真剣さは半端ではない。10代で渡米して、さまざまな米国文化に触れながら60年代のデザインの素晴らしさを見出し、日本に紹介したり、自らユニークなる本屋(中目黒や南青山のカウブックス)を企画設立したりしている。

その本屋が、“最低で最高の本屋”ということになる。この表現は、松浦さんが好きな高村光太郎の「最低にして最高の道」という詩から採られていて、“光があれば必ず陰があるように、どんなことにも「最高」の面だけじゃなくて「最低」の部分があって、両方がバランス良くあることが一番正しいと何となくわかった”(「最低で最高ということ」より)、ということがそのコンセプトにあるのだ。良い本だけれども見方を変えたら最低、というように賛否分かれるような本を取り扱う。なんとマニアックなのか。

松浦さんの、そんな姿勢からくる考え方がもたらすものとして、次のようなことがある。

“今まで手掛けて仕事のなかで、満足したものはひとつもありません”。・・・(中略)・・・一生懸命やることは当たり前で、一生懸命は評価の対象にならない。一生懸命だったかどうかというのは、自分が勝手に考えることで、クライアントや一緒に仕事する人には関係ないことだと思う。”(「書くこととつくること」より)

こんな人がいるのだ。世の中のデザインや文化のトレンドをしっかりと自分の目で見据えて、真贋を見極められる人であろうが、しかし、実に謙虚なる姿勢。頭が下がる。

このエッセイは、旅日記のような篇もいくつか収録されている。とても興味深かったのは、「台湾」と「中目黒」という短編。その二つの場所は、僕の旅や想い出が潜んでいて、だからなおさら懐かしい。台北や台東の旅や街角逍遥、目黒川界隈の街の風情を、実に克明に描いている。僕が知らない側面がそこここにある。

この本を片手に、それらの場所をまた訪れてみたい。そして自分も、松浦さんが感じたことを、自分の中に投影してみたい。

最低で最高の本屋 (集英社文庫)

松浦 弥太郎 / 集英社

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by k_hankichi | 2013-01-31 00:32 | | Trackback | Comments(0)

内田光子のベートーヴェン第31番:優しさと、そして満足に近い安堵からなる世界

ベートーヴェンのピアノソナタ第31番 変イ長調 作品110について、友人が聴き浸っている。僕は内田光子とグルダの音盤しか持っていないが、内田を好む。

CDのジャケットは、内田がムンクの『叫び』のようなポーズをとっている、ちょっと不思議な写真なのだけれど、その中身は、柔らかなるベルギーのレース布が風にそよぎ頬を撫で続けるような優しい演奏だ。

件の第三楽章はちょうど11分55秒かけている(アダージョ+フーガ)。友人が聴いているピアニストたちのどれよりも長いようだ。とてもゆったりと聞こえる。

この楽章は、心のうちに入り込んでくる過去のさまざまな思い出を、ゆっくりと咀嚼し、反芻してゆく。悲しみという気持ちではなく、そうだそれで良かったんだよと目に見えぬ何かと対話している。

午後の日差しが傾き始めたころ、淡雪が舞い降りているような雰囲気がある。これまで生きてきた日々を振り返りながらも、そうそれで良かったのよという声に安堵してゆくような優しさがある。

フーガの半ばで、「嘆きの歌」が悲しみを増した形で投げ掛けられるが、内田のピアノは決して深く苦悩しすぎない。そして晩鐘が鳴り、陽が沈むのが近いことを示したところで、あわあわとまた色々な思いが蘇ってくる。そこには爽やかなる充実感が込み上げてきて安堵して、そしていつのまにか物静かに目を閉じている。

曲の冒頭に戻ろう。

第一楽章は、前述したように柔らかなレースが頬を撫でるように第一主題で始まり、ずっとその優しさが保たれる。野原で蝶々がひらひらと飛び交う平穏な、ひなびた田舎の風景だ。上昇音階と下降する音階が交わる第二主題も、それは戦いではなく諦観からなる。

第二楽章は、「おいみんな、踊りの時間を始めるよ」と楽団がちょいと威勢をつけるかのように始まる。「ええ、さあ輪に入りましょう」と、仲のよい地方都市の貴公子と貴婦人が、それぞれの歩調をしずしずと合わせてゆく楽しげな姿を見せている。そしてつかのまの宴は、いつのまにか終わってすこし虚ろな感覚が残されてゆく。

内田のベートーヴェン第31番は、優しさと、そして満足に近い安堵からなる世界なのだ。

曲目:ベートーヴェン ピアノソナタ第30,31,32番
録音:2005年5月12〜20日、コンサートホール@スネイプマルティングス、サフオーク州、英国
音盤:英デッカ4756935

Late Piano Sonatas

Philips

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by k_hankichi | 2013-01-30 00:02 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)

音と香りが繰り広げる淡い世界・・・『鳥が教えてくれた空』(三宮麻由子)

このあいだ読んだ三宮麻由子のエッセイ『そっと耳を澄ませば』は、第49回日本エッセイストクラブ賞を得たものだったが、今日はNHK学園自分史文学賞大賞を得た『鳥が教えてくれた空』を読了(集英社文庫)。

このかたの本を読んでいると、つくづく自分の感性はまだまだ甘いのだと思う。聴くということ、匂いを感じ取るということについての彼女の観点を知るにつけ、ああ、そういうことがあるよなあ、そうだったなあ、と気付かされる。僕はそして、自分がいつのまにか失ってしまった感受性と、そして無為に過ごしてしまった時の重みに気付かされる。

たとえばつぎのよう。

“「ツキ、ヒ、ホシ、ホイホイホイ」と鳴くというサンコウチョウだが、「ホイホイホイ」はともかく、出だしだけで言うと、実際にはどうしても、「ギッギィ、フイチー、ホイホイホイ」と聞こえるように思う。つまり、アクセントからしても、「ツキ、ヒ、ホシ」とは言い難いと思えてしまうのだ。・・・・・もう一つ不思議なのは、ホオジロの聞きなしだ。「チッチ、チョチョチョ、リリリリ」などど聞こえる、複雑な歌を「イッピツ、ケイジョウ、ツカマリソロ」と聞きなすのだが、最後以外はどうにもそう聞こえない気がするのだ。”(「サンコウチョウ、ふたたび」より)


“就職して間もなく、父のスキー旅行に便乗して何年かぶりに雪原を訪ねたとき、私は不思議な発見をした。雪の匂いである。それはどこか懐かしいような、埃っぽさと湿り気が混じったような、奥行きのある匂いだ。それは、いままでずっと忘れ果てていた匂い、もの心ついて以来の全ての雪との思い出を蘇らせる、時の匂いだった。”(「自然からの便り」より)

外界が与えてくれることに対して、定型に固まった受け取り方、いつもおなじだよなあと素通りさせてしまう感覚に陥ることを戒め、そして新たなる感受性を研ぎ澄ませていくことの楽しみを、この本は教えてくれる。

鳥が教えてくれた空 (集英社文庫)

三宮 麻由子 / 集英社

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by k_hankichi | 2013-01-29 00:50 | | Trackback | Comments(2)

ピーター・ウィスペルウェイによるバッハの無伴奏チェロ組曲

オランダ出身のピーター・ウィスペルウェイによるバッハの無伴奏チェロ組曲を聴き始めた。この演奏のピッチはA=392Hzで、作曲された当時のケーテンのピッチだそうだ。現代の音のピッチ(A=440Hz)よりも全音低い。

彼はこれまでA=415Hzのバロックピッチでこの曲を演奏してきており、Youtubeにもいくつかアップされている。この音盤自体のコマーシャルもいくつかあるのだが、今回のCDのなかの音(392Hz)と中身が異なっていてそれは415Hz(つまり別音源)。同梱されているDVDを宣伝するYoutubeまでもそう。もうこうなったらナゾナゾの世界だ。CDショップかi-tunesで試聴してみるまではわからないことになる。視聴できる入口はココ→http://eprclassic.eu/index.php/releases/page/js-bach

第1番のプレリュードは、森が遠くに見えるさわやかなる草原を自分が疾走しているよう。メヌエットは、そのなかの森の木々のさざめきの間に、ぽっかりと開いた広場で弦を響かせているのに似ている。そしてジーグは森の精との交歓だ。

第2番は、打って変わって、自分の心の中との対話のプレリュードから始まる。サラバンドは、唸る心の悩みのようで、そんな苦悩が最後まで続く。

第3番の渋みは、よく燻した野生の肉をすこしづつ噛んでいるような感じで、するとそこに若き日の凄みがじわじわと沁みだしてくるというような感覚。ブーレは、まだまだやれるぞ、この俺は、という気持ちが出てくる。

第4番は、あれ~、こんな曲だったっけ?と思うほどのゆったりとしたテンポから始まるので、だからこの演奏は初めて聴くような錯覚に陥る。

第5番においてもそれは続き、その悲痛な叫びはどんどんと増してくるようでおっかなくなる。サラバンドになるともはやこれは生きるべきか死ぬべきかという対話に直面しているようになっていて、あまり繰り返して聴いてはならないような、そんな畏れさえ感じる。つづくガボットもガボットとは思えず、苦悩の底から聞こえる叫びのようだ。

第6番は、そんな苦悩を超えて解脱をしてゆく男の、しみじみとした述懐と喜びのため息だ。ガボットにまで至るとその壮年の快活さは30年後の若大将のようで、それは最後のジーグの爽快さで締めくくられる。

こうやって聴いてみると、この曲は、1~6番の順番に、人間の苦悩と成長を描いているのかもしれないなあと思った。

■収録
バッハ:無伴奏チェロ組曲 全曲

■録音
2012.6月、Serendipitous Studio, mechelen, ベルギー。(このメヘレンという街には一度行ったことがある。美しい街並みだ。)
Evil Penguin Music EPRC 012

■宣伝の映像(415Hzでの演奏だからCDの中身と異なる)


J.S.バッハ : 無伴奏チェロ組曲 (全曲) (J.S. Bach : 6 Suites For Cello Solo / Pieter Wispelwey) (2CD+bonus DVD) [輸入盤]

ピーター・ウィスペルウェイ / EVIL PENGUIN RECORDS

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by k_hankichi | 2013-01-28 00:26 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)

荒ぶる海の男たちの味がするなかで・・・プリマス・ドライジン

プリマス(Plymouth)というと、僕の好きなクライスラーの車のブランドだ(日本には輸入されていない)。そしてその名がついたジンが店先にあった。ジンといえば先を争って飲みたい僕だから、車のことと重なって一も二も無く迷わず買った。この酒は1793年(メイフラワー号よりは大分あとになる)の創立で老舗のひとつだ。

ココ(年齢を入れないと中に入ることができない)→http://www.plymouthgin.com/

強さは57度。ふつうのジンは、たいてい40度であるとか47.3度。それよりも格段に高く、アルコール度でも有名なヴィクトリアン・ヴァットと同程度だ。海の男の荒ぶる魂を和らげるに必要な度数だということなのだが、飲みすぎは健康に良くないと、この酒をライムジュースで薄めて飲むように船医が提唱した。それがギムレットの始まり。ドライ・マティーニのオリジナルレシピもここから生まれたそうだ。

さて、味わってみる。火を噴くように高い度数のアルコールからは、ゴードンや、ヴィクトリアン・ヴァットのようなボタニカルに豊かな香りはあまりしない。しかし、ぽーっと陶酔するような甘い香りがする。荒ぶる船員をなだめるにはこのようないざないが必要なのだ。

深い深い酩酊に引き込まれる、寒い寒い、冬の夜。バッハの音を聴き始めながら、僕のこころはイギリスと、アメリカと、そして北ドイツの間を行き来する。

※Plymouth(プリマス):「巡礼始祖(ピルグリム)」はメイフラワー号でアメリカ大陸を目指し、1620年11月21日にケープコッド湾に到着。そのままそこに留まって船の中で越冬し、翌年(1621年)の3月31日に上陸した土地にプリマスと名づけた(今のマサチューセッツ州)。アメリカ人にとっては「アメリカの精神」のような意味になる。彼らは、実はイギリスの同じ名前の軍港(南西部のPlymouth)から出発していて、だからアメリカに到着したその場所に同じ名前を付けた。初めに踏んだ岩はプリマスプリマス・ロック(Plymouth Rock)と名づけられ、現在もそこにモニュメントがある。


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by k_hankichi | 2013-01-27 19:40 | | Trackback | Comments(8)

『レ・ミゼラブル』・・・ラッセル・クロウの凄みとアマンダ・サイフリッドの声が支える

『レ・ミゼラブル』を二、三週間前に観た三人の家人たちは、家のなかで主題歌を歌い続けている。そしてヒュー・ジャックマンがね~と、うっとりした声色で言い続けている。これはしょうがない行ってくるか、と、まだ観ていない家人と出かけてきた。

小学生のころに『ああ無情』を読んでいたときの記憶がよみがえってきたが、しかし、どうも感覚が違う。もっともっと、どうしようもない徒労と、救われのない気持ちと報われなさがそれだったから、僕にとってのジャン・バルジャンは、こんな話だったっけという違和感となって浮き上がってくる。どうしようもない歯がゆさと苛立ちがもっと表現されてほしい。

さて、ミュージカルということもあり、ジャン・バルジャン役のヒュー・ジャックマンの歌はうまかった。そしてさらにさらに素晴らしいのは、コゼット役のアマンダ・サイフリッドの歌声だ。美貌と歌声とふたつ兼ね備えることを恥ずかしながら初めて知った。ファンティーヌ役を演じたアン・ハサウェイの、つぶやくような何とも貧弱な歌声とは段違いである。これではミュージカル映画俳優とはいえない。

全体を通じて演技として良かったのは、ラッセル・クロウ。この人のふてぶてしさは、もう私生活もこうではないのかと思うほど(そうらしいけれども)凄みがあり、多少、歌の声色ががさついていても、それを補って余りある。

革命の歌(『民衆の歌』)で締めくくられる最後のシーンは、迫力のある映像美だった(音量も最大級にさせているところは、いかにもハリウッド的で、これには参った)。

『レ・ミゼラブル』オフィシャルHP ココ→http://www.lesmiserablesfilm.com/index_splash.html

■トレイラー

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by k_hankichi | 2013-01-27 16:24 | 映画 | Trackback | Comments(0)

カティア・ブニアティシヴィリとユジャ・ワンの競演

ブラームスのハンガリー舞曲と言えば、高校生のころにとくに熱中したのだけれど、このところはとんと聴くことがなかった。そんななか、カティア・ブニアティシヴィリのYoutubeを眺めていたら、素晴らしい演奏に出会った。ユジャ・ワンとの競演だ。スイスのヴェルビエ音楽祭2011でのもの。

このハンガリー舞曲第1番の連弾を聴いていると、なにかスラブの心がこちらにも乗り移ってくるようで、そこにいる女人三人の色っぽい眼差しと仕草にも触発されて、血が熱くなった。

ぞくぞくする瞬間、というものには、それほどたくさん出会えるものではない。



■こちらには、おなじ演奏のつづきにハンガリー舞曲第5番の競演や、アルゲリッチとキーシンの競演まで収録されている。
ココ→http://miterew.com/movie/play/sm15162449
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by k_hankichi | 2013-01-26 19:52 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)

『純と愛』を観つづけるわれ・・・定石を覆す朝ドラ

NHKの朝の連続ドラマ『純と愛』を、まだ観つづけている。まだ、と言ったのは、家人の視聴者が一人減り、二人減りしていき、もはや私一人になってしまったからである。「暗いよね~このドラマ」、「怖いよね~愛くんのお母さん」、とかの声が主流になってしまったからである。

しかし、である。朝の連続テレビドラマが常に、笑顔と朗らかな笑いに包まれたものだと誰が決めたのか。お母さんはどの家も優しいと、誰が決めたのか。

『風とともに去りぬ』が、永遠なのは、どんなに逆境になろうとも、明日にはまた新たな一日が始まると知らされるからで、だから『純と愛』も、そんな面持ちで注視している。

今週は、そんな愛くんのお母さんにも、ちょっとした優しさが見られ始め、旅館「里や」のセクシーさん(客室係、元タカラジェンヌ月組トップ娘の映美くらら演じる)が、自らの心を外に開きはじめる。女将の上原サト役の余貴美子も、本当のカリスマの姿を間もなく現しそうだ。

純さんと愛くん、旅館「里や」、そしてそれをとりまく二人の実家の家族たちは、大団円に向けてどんな変貌を遂げてゆくか。

ますます見逃せぬ、定石を無視した破天荒なる朝ドラだ。
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by k_hankichi | 2013-01-25 07:55 | テレビ番組 | Trackback | Comments(0)

小林秀雄の文章が難問・・・であるならば、来年のセンター試験の国語は是非とも吉田健一で!

今日、新聞の朝刊を読んでいたら、「大学入試センター試験の平均点中間集計で異変、小林秀雄の文章で国語の平均点が大きく下がり、5割を切った」、というような記事があった。何のことかと思っていたら、彼の『鐔』(刀の鍔のこと)という作品を読んで答えるというものだったらしい。

面白そうなので、問題文を読んでみたが、なんのことはない、深い知識と感性、そして論理的な考察に元づいた良い文章で、設問にはすらすら答えることができる。いったい何が難しいのだろう。

ココ→http://www.asahi.com/edu/center-exam/shiken2013/kokugo/kokugo004.html

こういった文章を学生のときにふんだんに読んで理解できるようになっていなければ、僕らは、ちょっと口の立つ人の話であるとか、その人が書くようなアジテ‐ションを読んで、すぐにコロリと騙されるようになってしまうのではないか。

ということを考えると、おおこれは、来年の大学センター試験には、吉田健一の小説『東京の昔』であるとか『金沢』、『酒宴』、あるいは随筆『旅の時間』がお誂え向きだなと思った。

どんなにか国語の平均点が下がろうとも、それにまつわる設問群だけでもすべて正解できた人を選んで受からせれば、その大学には明るい将来が約束されること間違いない。
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by k_hankichi | 2013-01-24 22:41 | 社会 | Trackback | Comments(2)

原風景を互いに語り合う場ことから始めようよ

アルジェリアのできごと、領土の争い、民族紛争、資源掘削権の主張。世界でたくさんのいさかいが起きている。

エゴとエゴのぶつかり合いのなかからは、何も生まれるものがない。たがいに相手を分かろうとはしない姿勢。自分たちだけが正しいとする世界。

今朝、駅までのバスのなかから、神奈川の郊外に拡がる山野、田畑をながめつつ、ああこれは僕が生まれ育った場所の風景とはずいぶん違うなあと思っていた瞬間、「原風景」という言葉が頭に浮かんだ。

「原風景」。

そうだ、幼少のころの原風景や、そのときの思い出、空気、風、土、匂い、手触り。神社の裏手の怖い森。野球の練習場のバックネットの遥かな高さ、ぬかるみ、商店街、床屋の若い女理容師のしな、ボンネットバス、泥団子あそび。

みなが互いに、「原風景」を語り合う場を設けたらどうなのだろう。そんな気持ちに襲われた。

美しかったこと、しみじみとすること、郷愁、落ち着く世界。そういう風景に対する思い。

その気持ちには国境はない。民族はない。利権はない。主義主張はない。

「原風景」を互いに語り合うところから始めようよ。そんな場を自然に互いに申し出ようよ。さすれば相手を少しずつ分かろうとする。自分を少しずつ語ろうとする。

第一歩はそういうことからのように感じた。理由はないけれどそう感じた。
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by k_hankichi | 2013-01-24 08:12 | 社会 | Trackback | Comments(4)


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