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『舟を編む』(三浦しをん)

まああとで読もう、といつも素通りしていたのだが、店先の平置き棚を占有して、“2012年本屋大賞受賞”と大々的に展開されていては読まざるを得ない。『舟を編む』(三浦しをん、光文社)。

今回の舞台は、老舗出版社の辞書編集部だ。言葉の意味をとことん良く考え、世の中の事象についての説明をきちんとし、整えていこうという気概を持った集団。『広辞苑』や『大辞林』と互すべく、新たな中型国語辞典『大渡海』の編纂を開始しようとしている玄武書房は、その重要な編集者に、言語オタクの若手、馬締光也(まじめみつや)を抜擢するところから始まる。

彼は文京区春日にある下宿屋に住む。木暮荘よりもさらに古そうだ。彼はその1階の部屋で、本と本の間に寝起きし、あふれ出た本は、空室になっている隣の部屋、さらにその隣の部屋にまで占領している。そのむさ苦しい状態には、僕の友人が学生時代に住んでいた部屋のたたずまいを彷彿されるほどだ。しかし、そんな彼の目の前に、中秋の名月の晩、宿主の林さんの娘、香具矢が現れる。一目ぼれする。

そこからの展開は、三浦しをんのいつもの調子である。色恋もさりげなくちょっとだけ触れるだけで、しかし、それが却って奥ゆかしい新鮮さを感じさせる。そして、肩肘張ったものを感じさせない、淀みない文章の流れに、いつもながら感心する。

春の涼風の朝に読むにふさわしい、そんな一冊だった。

舟を編む

三浦 しをん / 光文社

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by k_hankichi | 2012-04-30 10:50 | | Trackback | Comments(0)

くず餅の味わいどころから、さかしま、まで

暖かくなってくると、くず餅が食べたくなる。実家に行く途中に、亀戸の船橋屋で、いつものくず餅を土産に買った。すると相方との間で、これまたいつもの会話が始まってしまった。

「くず餅のどこがどうして旨いの、ねろねろとさせて気味悪い」
「なにを言うのだ、くず餅は、あれが醍醐味なので、黒蜜にきな粉をまぶしてねろねろしてからでないと、何の意味も無いのさ」
「ぐにゃぐにゃして、なに、下品なひとの食い物?」
「下品ではない、これは下町の上品だ」
「黒蜜を皿から舐めるでしょ」
「残りの蜜を舐めるのが通である」
「餅も芋なのだか澱粉なのかわからないし」
「葛だ、葛の粉だ」
「屑?」
「いや違う」
「ういろうと同じでしょ、ういろうは嫌いだというくせに、どうして」
「あれとこれとは雲泥の差だ」

こんな会話をしたことを思い出しながら、家に帰って船橋屋のHPを読んでいたら、「葛粉」というのは、小麦でんぷんを地下天然水で15ヶ月発酵精製したものだと記してあった。

しまった、くず餅は、小麦粉だったのか…。さすればそれは、俺が天敵としていたういろうの兄弟?

僕は焦り、今度はWikiで「ういろう」を調べて安心した。

「米粉などの穀粉に砂糖を練り合わせ、蒸して作る。穀粉には米粉(うるち米、もち米)、小麦粉、ワラビ粉などが用いられ、砂糖には白砂糖、黒砂糖などが用いられる。」

そうだろうそうだろう、ういろうは米粉から、なのだ。だから、小麦粉からつくるくず餅は、断然異なるのだ。

いつしか、論理のすり替えが行われ、ユイスマンスの世界に陥っていく、われ。
 
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by k_hankichi | 2012-04-30 00:11 | 食べ物 | Trackback | Comments(0)

そびえるスカイツリーに驚くのは何故なのか。

今日は日帰りで実家との間を往復。東京の街道の喧噪を久々に味わいながらのドライブだった。ちょうど新大橋を渡ってちょっとしたところで、どーんと目の前に東京スカイツリーが出現。これには驚いた。

普段は、品川からのビルとビルの合間に佇む姿で、だからそのサイズは、指の節のなかに収まるくらいに縮んでいるから、感覚の相違がさらに驚きを倍加させている。

深川森下町が、材木業の営みの中心だったころに、こんな建物があったならば、全ての栄華がさらにここに重畳されて、もっと隆盛を続けていたのではないか、とまで思った。

遠景のときは空と地の間の霞のなかに埋もれて弱々しいが、近景では、その高さと曲線が量塊のように力強く圧倒する。この大きなギャップが、この塔が人に与える凄さの一つなのかもしれない。

そびえるスカイツリーに驚くのは何故なのか、の仮説。
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by k_hankichi | 2012-04-29 22:53 | 街角・風物 | Trackback | Comments(2)

麗しのサマーシュークリームの挫折・・・春の爽やかなそよ風が恨めしい夕方

近所のお菓子工房で、サマーシュークリームという新商品が売り出されていて、「シュークリーム」と名がつくものに目が無い僕は、家人の分も含めて買い求めた。お店の人からは、「すこし置いておいて、しかし冷たいままでお食べください、保存は半月はだいじょうぶですよ」、と意味深な言葉とともに渡された。

ん…?買ってすぐ食べるに決まっているじゃないか、なにが半月だ、そんなに置いておくわけないではないか。家に帰るなり、そそくさと袋を開けて頬張ろうとした。

がしかし、である。歯が立たない。かちんこちんに凍っていて、歯が立たない。一口も食べられない。な、なんなんだこれは…。冷凍されているシュークリームだから、それはそうういうものなのか。店員の言葉が重要な意味をもっていたことに、ようやく気付いたが後の祭りだ。

また袋に入れなおし、冷凍庫ではなく冷蔵庫の棚のほうに置くことにする。小一時間ほどして、解凍されつつあるところを確かめてから、ようやく口にしてみた。しかし食べる気満々であった頃合いと比べて、なんとも食べ方にも元気の出ない。味も心なしか、モサモサしている。萎れた味…。あ、挫折の味?

イソップ寓話での「よくばり犬」の心境と、超人気の名店に入ったけれども散々待たされてから出てきた料理が普通だったときのような、そんな感じだ。

人は、夢の膨らみとしぼみが短時間で訪れるとき、どうしようもなく心細く、居心地のわるい境地になる。

春の爽やかなそよ風が恨めしい夕方である。
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by k_hankichi | 2012-04-28 18:05 | 食べ物 | Trackback | Comments(4)

雨と曇りと晴れと雨

今週は、雨と曇りと晴れと雨、というような感じで毎日天気がぐるぐると変化した。

週の半ばの晴れの空。そよ風に乗って、初めて夏の香りがただよってきたような気がした。あれはたしかに夏の香りだろう。ふうっと、爽やかな風が頬を撫でた瞬間、恍惚というような感覚に包まれた。あれが確かに恍惚、ということそのものなのだろう。

さいきん、言葉に表せないような感覚に包まれるようなことがたびたびある。

自然の素晴らしさのなかにも、強い雨が挑んでくるような夜の闇にも、人の優しさのなかにも、そしてまた、組織の力を借りて何かを仕組んでくるような人間のずる賢さにも。
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by k_hankichi | 2012-04-27 23:36 | 街角・風物 | Trackback | Comments(0)

四月病に掛かっていた

先ごろ、四月病に掛かっていると言われた家人のことを弁護していたが、そんな僕も、それに掛かっていたようだ。

四月病は、これもやりたい、あれもやりたい、と非常なる意欲で取り組もうとしすぎる様相ということ。

しかし遣り切ろうとすると身は一つであることに気付く。肝心要の課題の解決が後手になっていることに気付く。

「緊急度×重要度マップ」というものがあるわけだが、課題のそれぞれがどこに位置されるのか、つねに意識しながら進めていこう。まずは目前の課題を、一つ一つ片付けていこう。

四月病にも功罪があることを、ようやく体感した。年甲斐もなく。
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by k_hankichi | 2012-04-26 07:12 | 一般 | Trackback | Comments(2)

踏ん切りと区切り

あたらしい職場への異動に際しての、一連の壮行会や歓迎会が終わった。

感情的になったり浮かれてていたところもあるが、それも、これ限りである。

これから、いろいろなことと対峙していかなければならない。桜の青葉の勢いのように、まっすぐに対応していく。
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by k_hankichi | 2012-04-25 07:42 | 一般 | Trackback | Comments(2)

『心をゆさぶる平和へのメッセージ』…村上春樹のエルサレム賞受賞スピーチ

゛Between a high, solid wall and an egg that breaks against it, I always stand on the side of the egg.゛

どんなに壁か正しくとも、どんなに卵が間違っていようとも、私は卵の側に立ちます。

こう村上はスピーチした。

イスラエルに対して、静かな、しかし固い意思をしめした彼のスピーチの原稿とその対訳が全文掲載されたこの小冊子は、何か、至極の気持ちが込められた宝石箱のように思える。

この言葉を折に触れて読み返さなければ、と思った。

『心をゆさぶる平和へのメッセージ~なぜ、村上春樹はエルサレム賞を受賞したのか?~』(ゴマブックス)。

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by k_hankichi | 2012-04-24 06:58 | | Trackback | Comments(0)

我他彼此(ガタピシ)は 仏教語としらず 云十年

今朝、ふとつけたモーニング報道番組のなかで、『仏教の言葉』というようなコーナーに遭遇した。

我他彼此というのが今日の言葉だった。ガタピシ。雨戸をガタピシやる、とか何事かが上手く填まらないことを言い表わしているのかと思いきや…。

自分が自分が彼が彼が、それがそれが此れが此れが、と我と他を区別して、あれこれ言い訳を言うことを指すそう。人間関係や組織の機構などが円滑でないさまを言うそう。「社内が-さている」など。

周りがあるから初めて「我」という概念が生まれること。ガタピシ言わず、互いの融和と協調によって、初めて世の中は上手くゆきはじめる。そんなことを諭す言葉だそうだ。

『やじうまテレビ』は僕が嫌いな番組の一つだったが、みのもんたが出てくる前の早朝はきちんとした時間が流れていた。

食べかけていた餃子パンの味も忘れてしまった。

そっと後押し きょうの説法

そっと後押し 僧侶の会 / 幻冬舎

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by k_hankichi | 2012-04-23 06:27 | 社会 | Trackback | Comments(2)

新たな次元に踏み出す予感・・・綾香『はじまりのとき』

綾香が歌手復帰したことはいくつかの番組で取り上げられていたが、今回のNHKの『SONGS』は、良い構成だった。自然な語らいのインタビュー、スタジオでの録音風景、むかしの名シーンの数々、そして、今回のアルバム曲からの歌。

なかでも『はじまりのとき』は、いろいろな悩みや鬱屈のときをこえて、うたうことの気持ちの原点に気づき、目の前の扉をあけて新たな一歩を踏み出そう、という爽やかなる強い意志が込められている名曲だとおもった。この3rdアルバムのこと、知らぬでいた自分。さっそくCDショップで買わないといけない。



→こちらは、タワーレコードの“No Music No Life”というポスター撮影の際のインタビュー。NHKの番組(Webには載らない)と近いことを彼女が語っている。

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by k_hankichi | 2012-04-22 10:13 | ポップス | Trackback | Comments(2)


音楽、小説、そして酒を愛する方々との空間です


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