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『もうおうちへかえりましょう』(穂村弘)

歌人の穂村弘さんに似ているという人と話していて、以前読んだ『にょっ記』の印象しかなかったので、この『もうおうちへかえりましょう』(小学館文庫)を読んでみた。

自らの傾向として「存在感を示したい」という願望をもっているが、「この世界」からはみ出してしまっていることに苦しみ、そのなかからだけ生まれてくるものがあると信じている、としている。

エッセイのなかには時折短歌がでてくる。人によるもの自分のもの、さまざまだが、余韻が良いなあと思う。彼の真髄を知りたい。そう思った。

「はやくたんかをよみましょう」

もうおうちへかえりましょう (小学館文庫)

穂村 弘 / 小学館

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by k_hankichi | 2011-02-28 07:26 | | Trackback | Comments(4)

岡本太郎とタモリの対談

岡本太郎生誕100年記念事業のサイトがある(http://taro100.jp/)。このなかに太郎が語ることばを聞くことができる。芸術について分かっているようで分かっていないこと、短いけれども含蓄がある。「蹴飛ばすこと」、「歓喜」、「地球がひっくりかえった」。

その語りが面白くてすこしWebで調べていたら、タモリさんとの対談がYoutubeに載っていた。1985年の『今夜は最高』。これはとても含蓄のある対話だ。タモリさんはその実、とても緊張しながら岡本さんからいろいろな言葉を引き出そうとしている。岡本さんは実に朴訥に応えていくが、存在から語りが出てくるようで、とても興味深い。モンドリアン、カンディンスキーらとの付き合いの話も出てくる。

「芸術は爆発だというのはね、自分のこころのなかに自分の存在の中にぱーっと燃え上がるものが音もなしにね、心の中でね、宇宙に向かって開くことだからね、だからいわゆる爆発と、芸術は爆発というのはまるでちがうんだ。」

佳つ乃(かつの)という舞妓さんもその隣におり、そちらはそちらでなんともいえぬしとやかな色香を放っている。このひとは一体なにものなのだろう。

不思議な組み合わせの、そして貴重な対談だ。


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by k_hankichi | 2011-02-27 17:33 | テレビ番組 | Trackback | Comments(0)

原節子と北方領土15歳の"幻"映像

雑誌「新潮45」の3月号の特集は、『伝説の美女「原節子」を探して』(デビュー75周年記念)である。そして、彼女がデビューした翌年に出演した映画『生命の冠』(昭和11年、内田吐夢監督)のDVD全編が付録としてついている。この映画はこれまで一度もビデオ化されたことがないというからそれはおどろきで、説明に「原節子と北方領土15歳の"幻"映像」とあり、今は足を踏み入れることができない国後島でのオール・ロケと分かれば更に触手がうごく。何件か訪れた書店では即日完売と言われ、ようやくインターネットサイトで新刊を手に入れた。

そしてその映画。原節子は樺太の真岡の蟹の缶詰工場の経営者・有村恒太郎の妹役(絢子)として出ている。原が出ているのは工場のシーン。たくさん出ている女工さんらの間に、一人きらきらと光る彼女がいた。“抜群”という言葉はこういうことをいうのに相応しいように思える。これが15歳なのだろうか。時代を何十年も先取りしたような端正な美しさだ。もしこの極寒の北の地に、彼女のような人が待っているのだったら、胸の奥はいつでも暖かいだろう。流氷の海と吹きすさぶ風がそのコントラストを高める。

映画のストーリーは山本有三によるものだそうだが、蟹の不漁に際しても約束したことを守る誠意とはいかなるものかを説くもの。物事をごまかさず真心で接することで道を切り開いていく。最後は工場を手放すことになるが、それでも高いモラリティを保つことの大切さを伝えようとしている。現存のフィルムはトーキーをサイレント化した短縮版で、おそらくもうすこし繰り広げられただろう彼女を含めた心の葛藤は残念だけれど残されていない。

『東京物語』での「私、ずるいんです」とか、『晩春』での能舞台観賞の嫉妬心の鋭いまなざし、とかの片鱗は、もちろん垣間見ることはできない。しかしそれでも、15歳の原節子がすでに立派な女優であったということを知るだけでも、何か柔らかなふわりとした気持ちが心の奥にしずかにのこる。

☆☆☆☆

新潮45 2011年 03月号 [雑誌]

新潮社

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by k_hankichi | 2011-02-27 15:31 | 映画 | Trackback | Comments(2)

ドラマ『TAROの塔』

岡本太郎は1911年2月26日生まれだそうで、その生誕100年にあたる昨日からドラマ『TAROの塔』(NHK)が始まった。松尾スズキという俳優は、岡本さんにあまりにも仕草や語り方がよく似ているので呆気にとられた。彼の語りや物事を見つめるやり方、リアクションは岡本太郎そのものだ。

1970年の大阪万国博覧会プロデューサーに就任した岡本太郎は記者会見で、「人類の進歩と調和」という博覧会テーマに異論を唱える。まさに彼ならではの真骨頂のせりふがここにある。

「はじめに、私はこの万博のテーマに反対である。人類の進歩と調和なんてクソ食らえだ。人類は進歩なんかしていない。確かに宇宙へいく科学技術は発達したが、肝心の宇宙を感じる精神が失われているじゃないか。それに調和といったって、日本の常識でいえばお互いが譲り合うということだ。少しづつ自分を殺して譲り合うことで馴れ合うだけの調和なんて卑しい。」

そして万博のテーマが危険だからプロデューサを引き受けたと言い放つ。

「人間は生きる瞬間瞬間で自分の進むべき道を選ぶ。そのとき私はいつだってまずいと判断する方、危険なほうにかけることにしている。極端な言い方をすれば、己を滅びに導く、というより、自分を死に直面させる方向、黒い道を選ぶということだ。無難な道を選ぶくらいなら、私は、生きる死を選ぶ。それが私の生き方の筋だ。」

1970年の万博。僕にとってもその思い出は半端ではない。千葉県に住んでいた小学生の僕は、親に連れられ2度も見学しにいっている。2度とも遠路はるばる車で訪れている。親もたいそうな気合の入り具合だった。その混雑振りは凄かった。僕ら一家は、行きたいと思っていたパビリオンに入ることはまずできず、気短な父親らによって、たとえば「フジパンロボット館」とか「自動車館」、「ブリティッシュコロムビア館」など、若干人気の低いパビリオンを巡っていたが、それでも1時間待ちはざらだった。遠目で見る「アメリカ館」はうらやましかった。

岡本太郎が、この博覧会にかけた想いなど何も知らなかった僕。その軌跡を知り記憶から遠ざかりつつある僕の1960年代を取り戻すためにも、このドラマは大切だ。
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by k_hankichi | 2011-02-27 10:12 | テレビ番組 | Trackback | Comments(2)

『クロイツェ・ソナタ』、『悪魔』

トルストイを読め、という言葉を受けてはいたが、なかなか気が向かず、ようやく読んだ。重い小説だった。ストイックに、どこまでも自己を追い詰める。シベリアの果てしなき大地を走る鉄道の客車に揺られながら、黒々と更けゆく夜を通して語り続けられる物語だ。『クロイツェ・ソナタ』、『悪魔』(原卓也訳、新潮文庫)。

クロイツェル・ソナタ/悪魔 (新潮文庫)

トルストイ / 新潮社

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by k_hankichi | 2011-02-26 13:56 | | Trackback | Comments(0)

そぞろ心が騒ぐ、生暖かさ~ジンマンのマーラー交響曲第10番~

もわっとした気持ちで目覚めた。生暖かい空気に何か夢が続いているかのような錯覚に陥った。

異国で宴席の身仕度していた僕。その隣にいた人は何処に行ったのか。その人のシルエットだけは瞼の奥にしっかりと残っている。或るボランティア活動をしていた僕はそれを続けられたのか。記憶の糸はだんだんと細かく裂け融解していく。あそこにいた僕は今の僕なのか。

このいまの感覚にちょうど合っている曲を聴いている。アダージョからいきなり始まる交響曲。たゆたい、ときおり淀みそして融けていくような記憶の流れ。そこに身をまかせる感覚。ひとつひとつの想いがフェードインして現れそして別の記憶が重なっていくる。まどろむようなマーラーの第10番だ。デビッド・ジンマン指揮/チューリッヒトーンハレ管弦楽団。友人お薦めの一枚である。

■マーラー:交響曲第10番嬰ヘ長調[カーペンター版]
演奏:デビッド・ジンマン指揮、チューリッヒトーンハレ管弦楽団
録音:2010.2.1-3、トーンハレ、チューリッヒ、スイス
音盤:Sony Music (RCA Red Seal) 88697 76896 2

マーラー:交響曲第10番[カーペンター版]

ジンマン(デイヴィッド) / SMJ

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by k_hankichi | 2011-02-25 07:50 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(1)

リュッティのレクイエム~インディージョーンズの魔界と救いの世界~

バロックのミサ曲のあとは一気に300年飛んで現代の宗教音楽を聴く。スイスの作曲家リュッティによるレクイエムだ。2007年作曲。

意外に耳に馴染む。祈る気持ちと対象は同じだからだろうか。音楽はさながらインディージョーンズの映画で地下に繰り広げられる魔界の悪者と良心の闘いのようだ。

洗脳されてしまった、あまたの輩が狂ったようにグルの周りで踊りながら祈りを捧げる。しかしやがて神の降臨があり、救済の光と手が差し伸べられる。

■カール・リュッティ:レクイエム
演奏:デイヴィッド・ヒル指揮、サザン・シンフォニア、オリヴィア・ロビンソン(soprano)、エドワード・プライス(baritone)、バッハ合唱団
録音:2009.1.31, 2.1、聖ジョン・スミス・スクエア、ロンドン
音盤:Naxos 8.572317

リュッティ:レクイエム

Naxos

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by k_hankichi | 2011-02-24 08:01 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)

透明で素朴なるミサとモテット…シャルパンティエ

コンセール・スピリテュアルという楽団が演奏するマルク・アントワヌ・シャルパンティエのミサ曲を聴き始めた。春の予感が伝わる陽光を車窓から浴びながらこの祈りの聖歌を聴いていると、どこまでもどこまでも走り続けてくれてよいという気持ちになる。

優しく触れられながら、天空に引き上げられる、われ、ひとりあり。

■M.A.シャルパンティエ テ・デウム H147~前奏曲「凱旋行進曲」、ミサとモテットH1,H166,H275、ザガリアの歌~ベネディクトゥスH345
演奏:コンセール・スピリテュアル、エルヴェ・ニケ指揮
録音:1996年2月、レバノン・ノートルダム教会、パリ
音盤:NAXOS 8.553175

M.-A.シャルパンティエ:テ・デウム/ミサ曲/ザカリアのカンティクム

ニケ / Naxos

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by k_hankichi | 2011-02-23 07:55 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)

街のCDショップが消える焦燥と不安、それを超えての恐怖

住んでいる街からまともなCDショップが消えた(TSUTAYAやアニメオタク専門CD店はもとからカウント外だ)。

これには不安を通り超して恐怖感に囲まれる。時間があっても立ち寄ることすらできないのだ。棚をつらつらみたりも出来ないのだ。文化不毛の地にいるような気分になる。

幸いにも大きな書店は二軒あり(有隣堂とクマザワ)、本棚を巡る楽しみは存続している。なんとか半人前の街では居られている。

音楽に溢れ、良い音を求め、感動に溢れるまちに僕は住みたい。
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by k_hankichi | 2011-02-22 20:26 | 街角・風物 | Trackback | Comments(2)

ニールセン交響曲第二番『四つの気質』

ニールセンの交響曲を聴き始めた。ネーメ・ヤルヴィ指揮、スウェーデン国立イエテボリ交響楽団による。パーヴォの父親の彼は、クラシックの演奏録音を世界で最もたくさんしている指揮者そうだ。

めりはりの効いた指揮。うむうむ劇的なこの曲にはぴったりに思う。交響曲第二番作品16『四つの気質』。この気質のなんとも不思議なことよ。『胆汁質』、『粘液質』、『憂鬱質』、『多血質』だ。

表現主義の映画音楽のような不可思議な、明るさと気難しさと、晦渋さといきなりの躁な気分が入り交じった曲。なんだか人に気持ちを読まれているような感じできつねにつままれたような・・・。

■ニールセン:交響曲全集
演奏:ネーメ・ヤルヴィ指揮、イエテボリ交響楽団
録音:1992.9(No.1), 1991.6(No.2), 1991.8(No.3), 1990.10(No.4), 1991.5(No.5), 1992.3(No.6)、イエテボリ・コンサートホール
音盤:独グラモフォン 00289 477 5514

Symphonies 1-6

Gothenburg Symphony Orchestra / Deutsche Grammophon

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by k_hankichi | 2011-02-21 08:02 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(0)


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