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「ヘヴン」

川上未映子さんの小説を初めて読みました。講談社刊。川上さんは昨年「乳と卵」で第138回芥川龍之介賞を受賞されていて気にはなっていたのですが、本の題名やらの語感が自分に響かず、なんとなく手に取ることをためらっていたものです。

昨晩、寝床で横になりながら読み進めたのですが、ぐいぐいと引き込まれ、最後まで読み切ってしまいました。

俗に言う¨いじめ¨を扱ったものでした(知らずに買ってしまった)。普通は胸が詰まって読み進められずにいるでしょう。しかし、そうなりませんでした。

虐められる少年少女が、それに対抗する論理を形成していく。虐められながらも、虐める側の心を対象物として¨見る¨、¨見切る¨、¨逆に断罪しきる¨、その過程が見事です。

悪と善の境はどこにあるのか?虐めるものの論理を打破することは何か?

少女は¨ヘヴン¨を見つけた。少年はそこに行きたかった。

彼は、形として救済される方法を見付けた。しかし少女は、それが欺瞞だと見抜いた。

二人の距離は遠のき始め、最後の場を迎える。普通の小説にはない、ほったらかしにされるような終末。

読後も、善悪の彼岸について心のなかに渦巻きを放つ、とても不思議な小説でした。

ヘヴン

川上 未映子 / 講談社


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by k_hankichi | 2009-11-30 08:01 | | Trackback | Comments(0)

気を張った反動か・・・

先週は、4日間しかなかったのに、気を張った日々だった。その反動なのか、土曜の夜から、熱は無いのだが体が急にだるくなる。喉もすこしごろごろする。おや、これが風邪につながってはならぬと、例によって、クラビット錠を服用。鉛のように寝入った。今朝は九時近くまで眠り朝寝坊。だるさはだいぶん和らいだが、からだじゅうが、みりみり言う感じが続いている。

昼間はだらだらしていてはいけないので、本屋とCDショップで買い込み。今週の外出や出張用のものも備えた。

もう12月になる。そしてあと1カ月で、晦日になってしまう、と思うと、今年中にやっておかないといけないことなどたくさん浮かんできて、すこし憂鬱になる。

今週の会社仕事の準備をしながら、その横にうず高く積まれつつある本の山をながめ、読みかけの本のページをいくつか繰ってみたりしたりし、これらもまた、どうしたものか、と思う。

まあ、いくつかは時が解決してくれる(御蔵入り、ということ)、と思えばよいのでしょうね。。。
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by k_hankichi | 2009-11-29 23:32 | 一般 | Trackback | Comments(0)

「センセイの鞄」ドラマ版

友人から、川上さんの小説 「センセイの鞄」のドラマ版が出ていることを聞き、レンタルショップで探し、そして観た。

小泉今日子さんが主演(月子さん)。センセイは柄本明さん。久世光彦さんが監督をつとめている。2003年WOWOW。複数の賞を受賞したそうだ。

僕は、センセイ役には、寺尾聡さんがよいなあ、とおもっていたのですが、柄本さんの朴訥さも、まあ許容できるな、とおもいました。

それにしても、小泉さんは、かっこよい。背筋が通って姿勢がよい。あぐらをかく姿勢までもがよい。

また、お箸で食べ物を食べる形も行儀よく、綺麗で素晴らしい。太宰治のある小説の最初に、お母さまがスプーンの先からスープを飲む、というくだりがありますが、それのお箸版みたいなもの。これをみるだけで僕なんぞは、あたまがぽーっとなる。

お酒を飲み、語り、無言の時にも意味があり、歩き、そして一緒に夜空に浮かぶ月をみる。ぬくもりを感じる。その月の形がいつまでも気持ちの奥に刻まれ、沈降していく。

☆☆☆☆

センセイの鞄 [DVD]

ビクターエンタテインメント


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by k_hankichi | 2009-11-28 20:56 | 映画 | Trackback | Comments(0)

「不毛地帯」第七話

いまのもうひとつのマイブームは、「不毛地帯」です。

昨晩も遅く帰宅してから、第七話を観ました。

壹岐正(唐沢さん)、今度は近畿商事として、業態の大転換(繊維事業主体からの脱却)と、或る自動車メーカーの再生に同時に挑もうとしている。

そんななかにも織り込まれる淡い恋心。それによる感情の揺らぎと家族との約束の忘却。堪えていた感情を初めてぶつける妻(和久井さん)。

経営戦略と既存勢力のせめぎあいは、僕らの身の回りでも類似が散見され、ドラマであることを忘れてしまいそうになります。

千代田自動車には、不振のレベッカ(出てくる車両はいすゞベレット…たしかにGT以外は駄目だったような)。起死回生の国内で1600ccクラス初のDOHC車は115(同117クーペ…今も名車として名高い)。臨場感に溢れます。

ああ、昭和40年代の息吹きが懐かしい。とともに、このころの意思決定や判断というもののなかに、現在の苦況から転じるためのヒントがあると予感しています。
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by k_hankichi | 2009-11-27 08:29 | テレビ番組 | Trackback | Comments(2)

「おめでとう」

仕事で今日は、千葉の大学に間もなく着くところである。

車中、文春文庫に収められた、川上弘美さんのこの短編集、読み終えた。

肩肘を張らず、自然体であらわしている。良いなあ。

たとえば「夜の子供」という小編。次の言い表わし、簡明だが、しゅん、と心に入ってくる。

¨私たちは、ゆうべのちらし寿司を朝の光の中で眺めているような気分で、互いの名を呼びあった。よく味はしみているけれど、ご飯一粒一粒のつやはすでに失われている、ゆうべのちらし寿司。¨

別れた恋人に久しぶりに会ったときの表現である。

「いまだ覚めず」の小編も上手い。久々に仲の良かった同性の友人(だが本当は恋人)に逢いにいき、昔のように会話し、気持ちの交歓をする。そういうときの心が踊るような、バタバタするような嬉しさ。

「春の虫」。互いに本当に言いたいことを口籠もりながら、だが、気持ちを通じあわせる。女の人同士というのは、はこんな素敵な会話をするのだろうか。

どれも、「蛇を踏む」のような力を込めて書かれているのではなく、おどろおどろしたところがなく、しつこくなく、軽快洒脱。でも、雑でなくしっかりと構築されている。

読んで心が安らかになる、実は悲しい話であっても、である。そして心がきれいになる。

今日の仕事も爽やかにできるだろう。

この素晴らしい作家に、まだ当分、はまり続けるだろう。

おめでとう (新潮文庫)

川上 弘美 / 新潮社


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by k_hankichi | 2009-11-26 09:35 | | Trackback | Comments(0)

「リフレクティブ・マネジャー」

マネジメントや人材育成に関する書は、この世にあふれているが、先月に発刊されたこの書は、ひとあじ異なるところがあった。中原淳、金井壽宏著、光文社新書。副題は”一流はつねに内省する”。

著者は、両方とも企業などで働く社会人たちの、学習と成長に目を向けて、あたらしい見方考え方を展開している第一人者。本書は、専門用語もだいぶん入り込んでいて、ぱっと見、とっつきにくそうなところもあるが、そういったところは、読み飛ばしても、何ら問題ない。一読に値する。

肝に入ったところ。次の文言が本書のキーだと思う。

「内省的実践家の意味を取り違えない。・・・・・ハムレットはリフレクションばかりしている間に、友人がいなくなり、恋人も自殺し、決断もアクションも起こせなかった。ドンキホーテは、騎士道を信じて旅に出て、イマジネーション豊富でアクションの連続だが、自分のやっていることの意味についてのリフレクションが足りない。」

また、人の育つ環境として、自組織だけでなく、社内外の他組織と協業の場があり、適度にベンチマークや触発ができている人や組織が、もっとも活性度やモラルがあり育成の度合いが高い、というような記載もあった。

自分がなしとげた「良い仕事」、あるいは実は「よい仕事の仕方」、を互いに紹介し合う場の重要性も説いている。

そのような職場、風土にもっていきたいと、とみに思う。その適度さをうまくメンバーや各組織に伝え、設定していきたい。

次の言葉が身にしみる。反面教師にしていきたい。

あなたは、大人に学べという
あなたは、大人に成長せよという
あなたは、大人に変容せよという
で、そういう「あなた」はどうなのだ?
あなた自身は、学んでいるのか?
あなた自身は、成長しようとしているのか?
あなた自身は、変わろうとしているのか?

リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する (光文社新書)

中原 淳 / 光文社


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by k_hankichi | 2009-11-25 22:20 | | Trackback | Comments(0)

充実と覚醒とのあいだ

週末を、いろいろな感性の触発の時間として費やし、その後に冷静になって、会社に向かいます。

空けた会社は、いろいろな蓄積、空白になっていた会話、言葉足らずな不一致、の披露の場のようになっています。

いろいろな難題、自らが不徳といたすところ、放置していた事柄を目の前にし、さぱさぱ片付けてはいけども、休みの間へ郷愁のようなものをかんじるのです。

でも、そうも言っていられない。仕事のアプローチ、やりかた、仕組みを変えていこう、と、みなに投げ掛け、自らも鼓舞するいまです。

そのようななかに、心、通じる人と語り合ることができ、なんとか、明日にアカルサを持つのです。

がんばろう!
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by k_hankichi | 2009-11-24 23:53 | 一般 | Trackback | Comments(0)

ゲルハルト・オピッツ・・・ドイツ正統派に触れ

昨日は、友人が都合つけてくれ、川口のリリア音楽ホールでベートーベン・ピアノソナタを聴く。ゲルハルトオピッツさん。

第8番「悲愴」
第14番「月光」
第17番「テンペスト」
第23番「熱情」

前半二曲。朴訥なタッチ。折り目正しくドイツの曲は、こういうふうに弾きなさい、という感じの無骨さ。うーむ、なんだか心には響かないなあ、と感じていた。

ところが、後半になると一変。増す積雪に喜ぶ朴訥なラッセル車のように、エネルギーが爆発。これまで聴いたことがないテンペストと熱情だった。熱情は激情と化し、うなった。

説明によると、彼は、ヴィルヘルム・ケンプの後継者として音楽的伝統を引き継いだとある。ドイツ正統派に感じ入った。こうなると、ケンプももっと聴きたくなる。

さて、そのあと。コンサートはマチネーだったので、夕方早い時間から、料理の旨い蕎麦屋で歓談。牡蠣鍋やらそばがきを食らいながら鹿児島・加世田の芋焼酎「縁」(えにし、本坊酒造)をお湯割で。旨かった。杜氏は黒瀬安信。

ほろよい気分で、早めに帰途についた。今回は電車で寝過ごさなかった。
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by k_hankichi | 2009-11-23 10:39 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(0)

「センセイの鞄」

友人に薦められた川上弘美さんの小説。文春文庫。

なんだか題名が媚びた感じがしていたので、手にとらずでいたが、友人が言うとおり、とても良い。染み渡る。自分の早計さに恥じる。

センセイとのいろいろな会話、飲み、交流を通して、だんだんツキコさんに変化がある。

気持ちの変化を味わうことが、それまた心地よい。

どうしてこんなに自然体なのだろう。さらにのめり込みが深く続きそうです。

その友人とは、これから一緒に音楽を聴きに行き、夕べからはお薦めの居酒屋へ向かうことにしています。無事、家にたどり着けるかな。

センセイの鞄 (文春文庫)

川上 弘美 / 文藝春秋


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by k_hankichi | 2009-11-22 12:43 | | Trackback | Comments(0)

「リヒテル <謎> ~蘇るロシアの巨人~」

吉田秀和さんの本、「之を楽しむ者に如かず」に紹介されていたスヴャトスラフ・リヒテルのドキュメンタリーDVDをようやく観終えた。

実は、ひと月ほど前に購ってあって、はじめ軽い気持ちでみはめたのだが、テオ・アンゲロプロスの映画「旅芸人の記録」のような感覚のドキュメンタリーで、あら、これはきちんと観ないと分からなくなる、と仕切りなおしていた。

このあいだ観たアルゲリッチの「音楽夜話」は、彼女のパーソナリティがとてもよく分かるものだったが、こちらは、さらにさらにそうで、リヒテルの出自から家族のこと、歴史の渦、ロシアの体制、国外演奏の禁止、妻の証言、などなど、それはそれは重い。そして、おっそろしくおっそろしく長い。しかし、とてもとても面白い。

まず出だしがかっこよい。何せ、シューベルトのピアノソナタ21番から始まるのである。

それが終わるころ、笠智衆?かと思うような出で立ちで、画面にリヒテルが登場する。しぐさや表情もそういう感じなのだ。彼の語りは、詳細につけている日記ノートを基にしている。語りが進むにつれ、この人の音楽にたいしての想いがだんだんわかってくる。そして、その彼の悲哀の気持ちも分かってくる。

映像のなかには、32もの演奏映像シーン(曲の数もほぼ同じ)が含まれている。これを観るだけでも驚愕する。すごい指使いに乗って思考の塊が伝わってくる。

リヒテルとはいったい何者なのか?グレン・グールドがリヒテルを評しているシーン、が出てくる。彼のことばがリヒテルについての全てを語っている。(このグールドの喋りがまたまた、超カッコよい。映画俳優のようで、これだけでもファンになってしまう人がいるのではないだろうか。)

「演奏家は2種類に分類できると思う。楽器にこだわる者とそうでない者だ。前者の演奏家たちは、自分と楽器の関係を前面に押し出してそこに注目させようとする。一方後者は、技巧そのものより自己と楽曲の運命的な絆を重視し、聴衆を幻想世界に巻き込んでいく。重要なのは演奏ではなく音楽そのもの。現代で後者のもっとも優れた例がリヒテルだ。」
「リヒテルの演奏は、聴衆と作曲家とを彼の強烈な個性でつなぎ、つまりある種の導管(conduit)であり、作品の新たな面を発見させてくれる。これはあの曲か、と思うくらいにまったく異なるように。」

グールドは、リヒテルの演奏に初めて接したのは、リヒテルがグールドの演奏に接したのとおなじ、1957年だった、とも言っている。1曲目はシューベルトのソナタ変ロ長調。そこでグールドは、しばらくして恍惚状態に陥った。共存しないはずの特性が融合するのを聴いた。そして気づいた。現代が生んだ最大で最強の音楽伝達者の存在を、としている。

この曲が、このDVDの最初と最後に挿入されているのはこれが布石になっている、と知る。

ああ、アルゲリッチにつづき、リヒテル熱があがりそうである。

〈謎(エニグマ)〉~甦るロシアの巨人 [DVD]

ワーナーミュージック・ジャパン


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by k_hankichi | 2009-11-21 16:22 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)


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