カテゴリ:美術( 58 )

その箱のこと

ストラディヴァリについての本を読み終えて、ひとつの木の箱というものが、途方もなく素晴らしい世界を築くということに改めて感じ入った。

その形が定まって以来、数百年ものあいだ、全く変更が加えられないヴァイオリンという楽器の完成度は比類ないという。その他の種類の楽器は、デザインのみならず構造、構成、材料まで変更に変更が重ねられた。

珠玉の箱。

そんなことを思っていたら、先日の銀座の展覧会で見た、木の箱のことが気になり始めた。

腰高で半間ほどの幅があり、樫の木のような色合いをした二段の整理箱だ。

不思議なのは、その扉の大きさが一段の高さに比べて極めて小さいこと。これでは大きめのものは収納できない。

展示されていた作品の中には、確か石ころのようなもの(箸置き?)が幾つか綺麗に並べられていた。

「顔なし」が並べて面白がっているようにも思える。

実はしっかりとした用途や、その意匠に至る理由があるのだろうと思うが、それは知らないままにしておきたい。

それほどまでに魅力的な箱だった。

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by k_hankichi | 2017-09-13 07:19 | 美術 | Trackback | Comments(2)

久しぶりの銀座と展覧会

久しぶりに、銀座まで足を運んだ。友人から教わっていた展覧会「かみ コズミックワンダーと工藝ぱんくす舎」に、足を運んだ。
http://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/event/index.html#event02

展示されているどの作品も、シンプルななかにも「紙」が醸し出し、もたらす風合いを余すところなく発信していて、日本が持つ控えめな気品というものに、静かに心打たれた。

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by k_hankichi | 2017-09-10 20:20 | 美術 | Trackback | Comments(4)

素朴な壁画に癒される

仕事で上野駅をたびたび通過するようになった。桜の季節のすこし前からは、改札口前広場には桜の造木、造花が飾ってあったりしてちょっと和ませる。今週も通過したときに、ふと天井と壁を見やると、そこには素朴なタッチの壁画がある。

何度も何度も通っているのに何故気付かないでいたのか不思議なのだが、マティスとゴーギャンと幼稚園児の絵を足して三で割ったような按配の作品で、 それが「自由」という題の 猪熊弦一郎によるものだと知った。

猪熊さんのことを調べてみて、意匠デザインから洋画、壁画、抽象画まで幅広く手掛けてきたことも知り、また顔だちはいかにも一家言ある芸術家という感じだけれど、なにか親近感が沸く。どうしてか考えていたら、僕の友人の一人が年を経るとこんな顔になるだろう、ということに思い当たった。

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by k_hankichi | 2017-07-01 09:05 | 美術 | Trackback | Comments(4)

フジタの素描の崇高さ

『ランス美術館展』(損保ジャパン日本興亜美術館)を観た。展示の半分はフランス近代画家たちによる作品、そして後半はレオナール・フジタの作品の数々だった。何よりも感銘したのはやはりフジタだった。

僕にとってそのなかでも最も素晴らしかったのは、ランスの平和の聖母礼拝堂のフレスコ画の下絵。それは素描と称してよい筆致なれども、込められた情念の深さは半端ではない。これをもとに彩色を施したフレスコ画が出来ていったのだが、結果の素晴らしさ以上に沁み入るものがあった。

それはモノクローム映画の作品が、俳優の情念をより深く伝えていくる場合があることに似ている。と同時に、作家の精神がしっかりと伝えられるほどの完成度だからこそなのだ。

藤田嗣治は、紛うことなくその世代の芸術家の域を超越していて、宗教はおろか何事をも超越して宇宙レベルに繋がる崇高さに至っていた。


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by k_hankichi | 2017-04-30 22:04 | 美術 | Trackback | Comments(2)

クラーナハとの出会い

映画のあとは、クラーナハの絵を観に国立西洋美術館に訪れた。久しぶりの上野だ。

静かにこちらを見つめる人が、それぞれの絵に居る。

宗教改革の前後で領主たちに仕えながら、この透徹なる絵の数々を描いたこの画家の、人の心を読む眼差しを感じた。

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by k_hankichi | 2016-12-11 10:15 | 美術 | Trackback | Comments(2)

夜のゲルニカ

出張からの帰り道に、矢も盾もたまらずそこを探した。いつも歩いている通路からすこし入った処にそれは静かに掲げられていた。

ブログ友人が教えてくれた『ゲルニカ』だった。

それは陶器に忠実に再現されていて、画家の令息によるお墨付きの作品だ。

人々の喧騒を避けるかのようなそれは、まさしくひっそりとある。

描かれたものには殺戮も血もないのにも関わらず言葉を失ってゆく。そして眺めるほどにそこには途方もない哀しみや憤怒が伝わってくる。

僕らを見ている。

僕らの遣り様を冷静に眺めている。

僕らの経済や政治や生活のなかの争いごとを静観している。

遠い極東にあって、はたして僕らはピカソの気持ちにどれだけ応えているだろう。

何も。

そんな言葉がホールから谺してきた。

誰の声だ?

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by k_hankichi | 2016-10-14 07:28 | 美術 | Trackback | Comments(2)

茫洋ということ

昨日、足を運んだ先で、驚いた。都民の日で(?)無料だったのだ。損保ジャパン日本興亜美術館の『カリエール展』だ。

ポートレートや家族を描いた生活画、そしてどこであるか「無記名」に近い(でも場所は書いてはある)風景は、どの作品もセピア調で、輪郭は茫洋と描かれる。視点を定めて目を凝らしても、やはり茫洋としているので、その人たちは存在しているのか消えかかっているのか、分からなくなる。

揺れ動く視線、触れるか触れないかのような薄絹を通じて柔らかく包み込まれるような人や風景。

19世紀末の日々を漂うように眺めているうちに、僕はいつしかそのころの彼らの部屋のなかに招き入れられていた。

揺蕩うような面持ちは持っていく先がなく、いつしか新宿の雑踏に誘い込まれて、キンミヤ焼酎の梅エキス割りを頂いていた。

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by k_hankichi | 2016-10-02 10:09 | 美術 | Trackback | Comments(2)

星野道夫のバッハ

星野道夫が亡くなって20年を迎えたそうで、それを機にしての特別展を観た。『星野道夫の旅』(於、松屋銀座)。

この人のことは確か僕の友人が好んでいたと思うが、自分ではしっかりと写真を観たことはなく、エッセイを読んだこともなかった。

はじめは単に極圏の動物写真家なのかと思いながら作品に見入っていたが、しかしすぐにそれは部分なのだとわかり始めた。そしていつしか引き寄せられていた。

星野さんは動物や自然や極地の人間たちを撮ることを通じて、次のように感銘して、ただただ心をうち震わせていたのではないかと思った。

「自分たち人間は生きているのではなく生かされている」

「人間はごくごく片隅の存在でしかない」

「長い宇宙の歴史の軌跡なかで地球があり自然が生まれ生き物たちが奇跡的に共に居る」

ところで今回、近視眼的ではあるけれども奇縁を感じた。

僕と星野さんはもとは同じ市に住んでいて、通った小学校も電車の駅を挟んで隣同士だった。中学校は東京に通ったがそれも隣同士だった。高校と大学とその学部は、件の僕の友人と同じだった。

僕たちは、どこかで必ず肩を摺れあうほどにしていて、見えない形で関わりあっている。

展覧会の会場では、そのBGMにバッハの無伴奏チェロ組曲が、ごくごく微かに流れていた。無限の歴史、無限の宇宙、そのなかで出会いこの世に生きる奇跡の軌跡を伝えようとしているのだと思った。

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by k_hankichi | 2016-08-29 00:17 | 美術 | Trackback | Comments(3)

空中盆栽という芸

NHKニュースを観ていたら、盆栽について報じられていた。国内での愛好家は高齢化でその数は減少の一途。いっぽうで、海外からの注目が集まっているということ。

この和の調和の世界は、宇宙にも繋がっている、というような考え方なのか。人工的に作り上げた植物でありながら、自然を想う気持ちが呼び起こされていく。身近にこれを愛でることで、輪廻転生的なるものに思いを馳せてゆく。

神秘性が更に増すのが「空中盆栽」だそう。その駆動原理は僕には分かるのだけれど、摩訶不思議なまま説明を省くことが却って存在感を増す。

■Floating Bonsai Trees Are Now A Reality
https://youtu.be/jssXjtYoDl0


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by k_hankichi | 2016-06-26 07:59 | 美術 | Trackback | Comments(4)

いつか、この奥の地に足を向けたい・・・まだ見ぬ秋田

みちのくからの帰途である。みちのくと云っても、いつもその入り口のようなところを訪れているだけなので、僕はまだ本当のみちのくを知らない。

そんな車中で手に取っているのは、「トランヴェール」というJR東日本の雑誌。この2月号は、秋田特集で、そのなかに“藤田嗣治の描いた、角舘の少女”という記事があった。

秋田県立美術館の平野政吉コレクションのなかに、『秋田の行事』という横20.5m, 縦3.65mの絵があって、その紹介から入る。この絵のことはNHKの美術番組で紹介されていて知っていたのだけれど、そのなかに雪室(ゆきむろ)のなかでゴザを敷いて座って、木べらで雪遊びをする少女たちの姿があるという。

それは角舘という地の情景と少女だというのだ。その素朴なあどけなさに惹かれ、その地を歩いたりカメラで撮影したりした。随筆集『地を泳ぐ』でも、そのことを綴っているという。

いつか、この奥の地に足を向けたい。まだ見ぬその地を訪れて、静かに、しんとただ立ち尽くしてみたい。

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by k_hankichi | 2016-02-05 07:58 | 美術 | Trackback | Comments(4)


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