カテゴリ:クラシック音楽( 570 )

『春の祭典』といえば学生時代に聴き込んだブーレーズ指揮クリーブランド管弦楽団のものと決まっていると思っていた。

だから東京フィルハーモニーが渋谷でその曲含めて演奏会をすると教わったときにも、「いえ僕は遠慮します」とやんわりと断っていた。

ところがその演奏会のチケットが、奇遇にも家人ルートで手に入り、然してままよ、と流れに任せて足を運んだ。

プログラムの後半が、件の曲。

初めて生演奏で聴いたそれは、怒髪天を突くすっばらしさ。これを生み出したアンドレア・バッティスティーニという指揮者とオーケストラの力量に、頭をひれ伏し感服した。

ピエール・モントゥーが初演したことき、大騒ぎの非難ごうごうとなったそうだけれど、渋谷のホールも、その当時の人々の気持がを推し量ることができるほどの爆発的な逸脱の沸騰エネルギー。100年以上経ても聴衆の心を惑わし煽動する音楽なのだ。

アンコールは、外山雄三編曲の『八木節』。西洋ロシヤの祭りのあとは日本の祭り。引き続きの渦に翻弄され心地良く、そのあとの酒は冴え渡った。

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by k_hankichi | 2017-05-21 18:39 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(0)

曇天に渡る河に聴くもの

曇天のもとに渡る河の水面は鏡のようになっていて、その底には竜のような何物かが潜んでいそうにも見えた。

こんな日に聴くのはバッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータ。少々心身が気だるく重いなか自然に選ぶのは、やはりカール・ズスケによるもの。

何の衒いも無く、ただそこにある、という感じの自然さに満ちていて、最もリラックスして聴いていられるのが好きだ。

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by k_hankichi | 2017-05-15 08:00 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)
柔らかなる五月雨のなか、今日もみちのくに向かう。

曇天に似合うのはバッハのオルゲルビュッヒュライン・BWV599-644。出だしの曲がやはり一番好きだけれども、それに続く曲の数々にも自然と寡黙になる。

曇天を突き抜け響け、賛美歌よ。

・599「おいでください、異邦人の救い主」
・601「主キリスト、神のひとり子」
・608「喜びの声をあげて 」
・639「わたしはあなたに呼びかけます」
・・・・・

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by k_hankichi | 2017-05-10 08:22 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)
昨日は一年ぶりにマタイ受難曲を聴きに行った。彩の国さいたま芸術劇場でのバッハ・コレギウム・ジャパンによる演奏。

昨年の聖トーマス教会合唱団&ゲヴァントハウス管弦楽団が、伝統正統派の粋だとすれば、今回のものは古楽に遡って深く顧みた知性が生み出す最高の震えだった。

鈴木雅明氏による全体の統率は一糸乱れず、しかしそれはガチガチに強制されたものではなく全体が思考の流れのように体現され、各自がそれに寄り添いながら自然に発露させていった。

最も目を引いたのは、ハンナ・モリソンというオランダ人で(スコットランドとアイルランドの血筋の家系)、微動だにしない背筋の伸びた佇まいとおそろしく透明なソプラノとその美貌に、このひとは地球人ではなく宇宙人に違いない、と息を呑む。

http://www.bach-cantatas.com/Bio/Morrison-Hannah.htm
http://jp.medici.tv/#!/hannah-morrison
http://www.hannahmorrison.eu/

そしてもうひとつ、クリスティアン・イムラーという歌い手の風貌と潤いに満ちた太いバスは、まさにその名前の通りイエス・キリストそのものがそこに居るかのようで、紛うことなく、マタイ受難曲の演奏史上、最もイエスに近い男と呼ばれるべきと思った。

http://www.christianimmler.com/
http://bcj2014.bachcollegiumjapan.org/artists/christianimmle/
 
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by k_hankichi | 2017-04-16 21:48 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)

『悲愴』が寄り添う転機

録画してあった映画『最高の人生のはじめ方』(2012年、アメリカ)を観た。

主演はモーガン・フリーマンとヴアージニア・マドセン。監督はロブ・ライナー。大御所が揃っている。

舞台はミシガン州ベルアイルという湖を臨んだ避暑地。西部劇小説家のモンテ・ワイルドホーン(モーガン・フリーマン)は夏を過ごすためにこの地を訪れる。妻に先立たれ、失意のまま酒に溺れて自暴自棄になっている。

隣の家にはシャーロット・オニール(ヴアージニア・マドセン)と三人娘がニューヨークから引っ越してきて住んでいる。

モンテはなかなか周囲に打ち解けようとしないが、隣家の娘たちと物語の話をしているうちにだんだんと心を開き始める。

夕食に招かれたあとの時間、シャーロットが弾き始めたのがベートーヴェンのピアノソナタ第8番ハ短調『悲愴』の第2楽章だ。彼の心の鍵はここで完全に抉じ開けられた。

音楽がもたらした人生の転機。

観終えてから無性に『悲愴』が聴きたくなって、何枚かのCDをトレイに載せてみた。何故かスタニスラフ・ブーニンによるものが、一番沁み入った。

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by k_hankichi | 2017-04-08 08:43 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)

もうひとりの浦島太郎

転居したタイミングで、押し入れの奥からLPレコードが入った段ボール箱がいくつか出てきて、かぞえたら数百枚あることが分かった。眺めていたら無性にそれらを再生したくなり、週末に御茶ノ水に足を向けてつらつら眺めているうちに、再生用のアンプや小型スピーカーなどが手元に揃うことになった。

LPレコードを聴く前に、まずはCDを再生してみる。

そこはかとなくバッハの平均律がふくよかに響いてきて、さすがにヘッドフォンで聴く脳内定位とは違うなあと思う反面、学生時代に神妙に耳を傾けたオーディオとはなにかが異なると思った。

押し入れの奥に眠っていたダイレクトドライブ方式のターンテーブルを繋いでみる。20年以上振りに息を吹き返すその機器に載せたのは、ブルーノ・ワルター指揮、ニューヨークフィルハーモニーによるブラームス交響曲第2番のLP(モノラルだ)。

遠く森の奥深くから、微かに響いてくるような金管のか弱さ。

嗚呼。これだ。これがあのころの胸の打ち震えだった。

平成の浦島太郎は、音盤の波打ち際を眺め回した。空白の歳月のことにはまだ気づいていない。

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by k_hankichi | 2017-03-29 18:58 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(3)
引っ越しの荷物を片付けていたら、とある箱から中学時代以降のレコード購入記録帖が出てきた。初めのほうの音盤は父親保有のもので、それは購入欄に場所の記入がないからそれで分かる。

そのあとの微々たる購入数を見るにつけ、あのころの乏しい懐事情が手に取るように蘇ってきた。学校帰りに秋葉原の石丸電気を訪れては音盤を眺めて、いつか手に入れたいものを皮算用していたこと、グラモフォンの音盤の神々しさに圧倒されていたこと、カール・ベームがなんだかとってもおっかないオジサンに思えたこと。

ページを繰るたびに、その時々の記憶が呼び起こされる不思議さに感慨する。

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by k_hankichi | 2017-03-05 23:20 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(4)
仕事で都内へ往復した。電車はたいそうな混雑で席には座れなかったことを伝えると、「それはたいそう疲れたのでは?」という質問が返ってきた。

「いや大丈夫だったよ」と答えると、訝しい顔つきをされた。このひと変なのかしら。

久しぶりにゆっくりと連続した時間を持てたのだ。席に座っていては眠ったりして心や頭に入らないし、共鳴して身体をああだこうだ反応させて動かすわけにはいかない。小さな声をだしても不審がられる。

次のような返事が市民権を得られるような世の中が早く来ないだろうか。

「だって車中ではずっとマタイ受難曲を通しで聴けたので良かった、思わず口ずさんだ」

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by k_hankichi | 2017-03-03 08:58 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(4)
テレビを点けたら、いきなりチャイコフスキーのくるみ割り人形の「パ・ド・ドゥ」で、つまりあの「永遠のドーシラー、ソファミレ、ドー」で、おもわず腰を浮かした。

番組は「四大陸フィギュアスケート選手権2017」だったが、スケートの素晴らしさにではなく(もちろんウズベキスタンの端正なる顔立ちの彼はとても上手だったのだけれど)、BGMのオーケストラの旨さに、思わず声を上げてしまった。いったいどこのオーケストラなのだ。

冬はバッハだぞと、ずーっと聴き続けてきた自分のあたまのなかで、春が初めて芽生えた夜だった。

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Photo by Strigo, from: https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=432454

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by k_hankichi | 2017-02-20 00:14 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)
この週末は、久々に家事に没頭。家のなかの整理整頓に勤しんだ。少なかずらのものが不要と判別され、種類ごとに幾つかの束にしてリサイクル店に持ち込む。

どうなるんだろうなと思って待っていたら、想定以上の高値での買い取りをして頂けた。何だか得をした気持ち。だからかもしれない、あぶく銭は貯めるなという声に誘われてセコハンCDの棚をそぞろ眺めていく。

と、どうしたことか。

ベルギーのフィリップ・ヘレヴェッヘが指揮したバッハの宗教曲の複数枚組の音盤(最初の録音のやつ)が4種、そして、聴いたことはないハープシコ―ド奏者による平均律(Complete)が1種、見いだされた。そのどれもが何とたったの500円。

こ、これは・・・・。

周囲の人々の目を確認しながら、そそくさとレジに向かう。

溜まったポイントも使ったら、しめて1580円で買えてしまった。

幸甚というものは、どこから降ってくるのかわからない。もちろん、これらがこんな値付けになってしまっていることに、世知辛いというか、少々の哀しさも抱きながらなのだけれど。

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by k_hankichi | 2017-02-19 19:37 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)

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by はんきち