カテゴリ:クラシック音楽( 596 )

シェーンベルクの音盤が見つからず、グールドのピアノ演奏集をネットで発注したところで、古いモノラル録音のものがあったことを思い出し、静かに聴き始めた。

1曲目はベルクのピアノソナタ 作品1。このオッかない、さみしい、遥か彼方の惑星のさらにその先に放り出される様な旋律に、僕はいつも身震いして、その先をあまり聴いていなかった。

熱心に聴かずでもBGM的に流していて、ふと旋律が心地よく感じられる瞬間をつかめられればそれでよいのだ、というようなことが先に読んだ本に書いてあったから、そのままシェーンベルクの作品集に音楽が移るままに流していた。

ジャズだった。

それが「ピアノ組曲 作品25」というものだった。

いまも小さく震えるようになっているのだけれど、それが少しづつ心地よいものとして浸透してゆく。

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by k_hankichi | 2017-11-17 23:50 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(1)

『婚約者の友人』の音楽

件の映画では、『自殺』というエデュアール・マネの絵画が婚約者の友人だと称する男の心境を描き、そして結婚することになっていた女も、その絵画に対する興趣を掻き立てられていく。

しかし二人を結び付けていくのは、絵画だけではない。音楽もそこに介在する。

・ショパン:ノクターン 第20番 嬰ハ短調 遺作・・・ヴァイオリンとピアノのデュオで。(こういう組み合わせも良いのだと分かる。)
・チャイコフスキー:弦楽四重奏曲 第1番第2楽章・・・主人公らが練習する。
・ローサス:『波濤をこえて』・・・舞踏会で流れる。
・カール・ヴィルヘルム:『ラインの守り』・・・酒場で客が唱和する。(ラ・マルセイエーズと対比できる凄み。)
・フランス国歌:『ラ・マルセイエーズ』(よく聞くと壮絶、凄惨な歌詞だ。)
・リムスキー・コルサコフ:交響組曲『シエラザード』作品35 「海とシンドバッドの船」・・・パリ・オペラ座での演奏。(これも懐かしい。)
・ドビュッシー:歌曲『星の夜』・・・主人公らによる声楽、ヴァイオリン、ピアノによるトリオ。(とても良い声だ。)

このほか、マーラーだったっけかな、と思われるオーケストラ曲も挿入されていて、しかしそれが何だったか、どうも分からなくて、映画の素晴らしさと相まって、あの女優のしぐさを観るに加えて再度観てみたいと思った。

■ドビュッシー『星の夜』
■ショパン ノクターン第20番


■音楽が掻き立てる叙情・・・野鳥が立てるさざ波のような(清澄庭園の光景から)
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by k_hankichi | 2017-11-13 00:35 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)

シューマンの音楽に浸る

ああ、こういう音楽に浸りたかったのだ、と思った。仲道郁代のシューマン・ファンタジー。

「年齢を経てくるとそれには(未来ということには)限りがあるということが分かってきて、でも限りがあるからなおさらその、瞬間瞬間を感じることのできる感覚が愛おしくなって、輝くようになってくるというね、だからそういった大切な思いを音にしたいなというのが今回のアルバムです。」

このように彼女はビデオトレイラーのなかで語る。

これを眺めていたら、ああ、こういう世界なのだ求めていたのはと思うと同時に、僕はこういう人に弱いなあとつくづく思った。

■曲目
シューマン
1. ロマンス 嬰ヘ長調 作品28の2
2. 交響的練習曲 作品13
3. 幻想曲 ハ長調 作品17
■演奏:仲道郁代(ピアノ/スタインウェイ)
■収録:2017年4月18日~20日、ベルリン、イエス・キリスト教会
■音盤:RCA Red Seal SICC-19008

■CDトレイラー →https://www.youtube.com/watch?v=1LP9vuz7jNQ


■こちらにも恍惚とする →https://www.youtube.com/watch?v=H0aZg5QL1ms
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by k_hankichi | 2017-11-05 08:23 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)
草臥れていると逆に元気が出る音楽があるものだと思った。シューベルトの弦楽四重奏曲 第14番ニ短調「死と乙女」。ジュリアード弦楽四重奏団による。

陰鬱なる曲なのに、音盤ジャケットの奏者たちの写真の実に朗らかなることよ。

恐るること勿れ。怯むこと勿れ。

そう語ってきているように思えてならない、みちのく路の晩秋である。

■疲れたときについ頼んでしまうカレー。昨日のシーンから。
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by k_hankichi | 2017-11-01 06:04 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(5)
活字がなかなか追えずにいた。二週間かけて、一冊の小説を読んだけれども何も頭に入らなかった。

作品は短篇集で、それはよい感じのものなのだが、それでも頭に入らなかった。

どうしたものか。

選挙の開票速報に、ただただ虚しさを感じ、ああ、この予感がああさせていたのかな、と思い当たった。

今は、シューベルトの弦楽四重奏曲 第14番ニ短調を繰り返し聴いている。

そして虚しさのなかに一縷の光を探す。

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by k_hankichi | 2017-10-22 21:20 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(4)
◯◯◯ネン、という苗字がフィンランド人たちに多いことは知っていたけれども、実際にその国からきた人に会ったのは先週の出張のときが初めてだった。瞳は透き通るような灰色で、髪は美しくうねる金髪、「ああこれはオオカミ」、と思わず言いそうになって押し留める。

しかしすぐに次の言葉が出てしまった。

「カレワラ、ホームカミング・レミンカイネン、ハウス・イン・アイノラ・・・。」

相手の頬がほっと緩んだ。

「シベリウス  ハ  タカラデス。モースト  ビューティフル  ミュジーク。マインド  オブ  マイ  カントリー。」
(というような言葉の英語)

満面の笑みになった。そこからはら一緒にいた人たちの、何、何、それは?という訝しい問いを無言で弾き退け、彼女とシベリウス談義に花を咲かせた。

冷え込みが募り始める昨晩や今朝、そのことを思い出しながら、だからシベリウスを聴き続けている。

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by k_hankichi | 2017-10-18 06:35 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(3)

林光の音楽

またまた秋津温泉で恐縮。「シューベルトとブラームスを合わせたような弦楽四重奏曲的なもので、それが渓谷の深まる秋、そして、燃え上がる春の情景ととても合っていて」というような印象だったあの音楽のことが忘れられない。

冒頭では一瞬、小津映画の曲想か、というものがかすめるが、それはすぐに異なる様相に転じて、不安と震え、そしてそこのなかから微かに光っている希望が見いだされていく感覚。

ストーリーの展開が始まる前から、その全体が予感できるほどで、ドラマのなかでの音楽の重要な位置づけが、よくわかる。

■Theme from "Akitu Springs"
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by k_hankichi | 2017-09-26 06:34 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)
ブラームスの交響曲が、実は苦手になっていた。特に第2番と第4番。ワルターの指揮による極めて優しい演奏にほぼほぼ洗脳されている僕には、それ以外の演奏が心に響かず、そればかりか肝心要のワルターですら、もう沢山ですというような感じになってしまっていたのだ。どう曲想に気持ちが呼応しない不感症だった。

ところがどうだろう。

先のレコード屋で買い求めたマリン・オールソッブ指揮、ロンドンフィルハーモニーによる演奏は、錆び付いていた僕のブラームス回路に灯をつけた。

嗚呼、ブラームスって良いなあ。田園が響く秋の風に身を任せて、台風一過の心地よい陽気に快活なるエネルギーを沸かせてくれた。

この交響曲第2番ニ長調 Op.73は極めて秀逸なり。愛聴版がまた一つ一つ増えた。




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by k_hankichi | 2017-09-19 00:50 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(4)
久々に神保町に出かけて、いつものレコード店に立ち寄る。お店の人に見つけるのを頼んだのはブラームスのハンガリー舞曲集。僕が学生時代にはずいぶんたくさん聴き込んだものだったけれど、最近は流行ではないとのことで、コンサートで掛かるのも多くはない。

いろいろ聞き比べさせてもらって、アバドのこの演奏ではないなあ、小沢ももう少しだなあ、と皆一堂に頷きながら選んだのは、マリン・オールソップ指揮、ロンドンフィルハーモニーによるもの。

ゆっくりとしたテンポに始まり、薄汚れた音色。これだ、これなんだ、俺が求めていたものは。

透明ではなくすこし揃いがずれた感じは意図的にそうしているわけで、その濁った低弦に、唸るようにどす黒い金管が重なっていく。

ハンガリーの大地の汗と血潮が迸る、素晴らしいブラームスだった。第4番の舞曲である。




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by k_hankichi | 2017-09-17 19:29 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(4)
グレングールドが作曲もしていたことは聞いていたけれど、それをしっかりと把握できたのは、件の映画を観たからだった。女性ピアニストが、この曲に感興して背中にこの主旋律の刺青を彫ったというシーンもあり、その色香とともにぞくぞくして、改めて調べて聴き入った。弦楽四重奏曲 作品1(ヘ短調)。

グールドによれば、バッハが『フーガの技法』でB-A-C-Hの音階を入れ込んだことにも触発されての作曲らしい。「ハ‐変ニ‐ト‐変イ」C-D♭-G-A♭の主旋律だ。1955年10月に出来上がり、1956年5月26日にモントリオールにてモントリオール弦楽四重奏団によって初演されたそう。

ヘ短調はグールド自身の性格を表すということ。「錯綜と安定、高潔さと嫌らしさ、灰色とうっすらとした色合いとのあいだに」。バッハの、灰色だけで構成された色調のパレットが無限に続く『フーガの技法』(グールドの表現)に倣ったのだろうか。

シェーンベルク的な響きは、薄闇に吸い込まれていくような音魂で、秋の夜は苦悩と哀愁と共に静かに震えて深まっていた。

■映画『Glenn Gould Hereafter』から →https://youtu.be/CrNZNf-yHkc


■全曲の演奏(Glenn Gould - String Quartet, Op. 1 - Glenn Gould: The Composer - HQ)
演奏:Bruno Monsaingeon(あの映画の監督) & Gilles Apap - Violins, Gérard Caussé - Viola, Alain Meunier - Cello
https://youtu.be/Slu_BPYHUPk

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by k_hankichi | 2017-09-05 06:38 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(3)

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