「これから泳ぎにいきませんか」という書評集。優れている。
友人似の歌人がまた書評集を出したと知り、とるものとりあえず、直ぐに買い求めた。題名は「これから泳ぎにいきませんか」(河出書房新社)。
この変わったタイトルは、著者と、夭折した才能満ち溢れる書籍編集者との会話から取られている。
さて中身。いつものように、小説や詩、歌(短歌)、そして人間それ自体に対して、有り余る鋭敏な感受性を持って臨んでいる。どんな文章やストーリーに対しても鋭敏にその特質や独自性、異質性、先進性を見抜き、それを少し、はにかみながら叙述する。
あまりに素晴らしすぎると、嫉妬と羨望の素直な気持ちも入り混じる。正直だ。
嘘がつけない。衒いがない。多分、偽りを語ろうとすると、顔からしてグニャグニャになって、また出てくる言葉もツッケンドンだったり、あっぱとっぱした表現が混じってしまうだろうと分かる。
だから一層頼れる気持ちになれる。作品を売り込もうとしたり一定の論説を構築しようとはしない。
そういう人が感心する本は直ぐに読みたくなる。とすれは出版編集者の勝ちなのだけど、勝ち負けではないのですよ、と出版元に伝えたい気分になるのが、この人の書評だ。
穂村弘はだから凄い。