「フェデリコ・モンポウの音楽との出会いは、これまでの私の人生でもっとも深く豊かな経験のひとつである、しかし実のところ、若い頃の私は彼の音楽に疎く、初めて聴いた時にもその真価をすぐに理解できなかった。モンポウの音楽を、最初に耳にしたのはカタルーニャ出身の友人宅で、その音楽言語の美しさ、輝かしく懐かしい響き、繊細で胸をうつ哀愁にとりわけ惹かれた。心が浄化されたような感覚も覚えた。」
「彼は聴いてもらうというよりもむしろ、響きわたる沈黙を介して聴き手と繋がることを目指していたのではないのだろうか。なぜなら、モンポウにとって形而上学的な次元の音とは、沈黙であると同時に振動でもあったからである。この二重性ゆえに、そして音楽が沈黙を変容させることによって、聴く者は孤独を・・・空虚感ではなく、精神の緊張の極みとして・・・鋭敏に感じることになる。高められた聴き手の魂は、音が物質であることをやめ時間を超越して、永遠の振動と化す世界に溶け込むのだ。」
ピアニストによる、作曲家フェデリコ・モンポウの音楽についての解説がついている音盤を聴いている。
これは、早坂暁脚本のドラマ作品のような音楽で、だから、曲それぞれは儚い夢とともに或る種の哀しみを抱えながら生きているのだ、ということを伝えてくる。
■ヴォロドス・プレイス・モンポウ
・前奏曲第7番
・君の上には、ただ花ばかり
・子供の情景
・今日、大地と太陽が私に微笑む
・湖
・喜びを見いだすために
・前奏曲第12番
・対話 第2番、第1番
・「ひそやかな音楽」
■演奏
アルカディ・ヴォロドス
■収録
2012.10月&12月、テルデックスタジオ、ベルリン
■音盤
ソニークラシカル SICC30433