友人からこの曲の演奏動画があることを教えて貰った。『系図 若い人たちのための音楽詩』。武満徹が谷川俊太郎の詩に乗せて描く曲だ。
件の松家仁之さんのエッセイ「グールドの恋人」の冒頭に紹介されていたもので、松家さんは気分が沈みがちな日に耳を傾けるという。僕も昨日から耳を傾けている。
動画はいくつかあったのだけれど、僕は遠野凪子がナレーターを務めている演奏(彼女はこの曲の日本初演も担当した)が良かった。
自分の系譜、そして目の前にいる祖父祖母、父母、さらに犬にまでも、感じる気持ちを、幼い女の子が時に夢見るように、時に不安になるやうに、小さく震えるような、しかし透徹なる響きで伝えてくれる。遠野さんの演技者を超えた素朴で可憐な存在は、えもいえない。
シャルル・デュトワのリードも、撫でるように優しくて、聴いているだけで肩の力が緩んでいった。
■動画
■曲のもととなった詩が入っている谷川俊太郎の詩集