おそらくあのことが書かれているのだろうと思いながら読んだのが『超一極集中社会アメリカの暴走』(小林由美、新潮社)だった。ブログ知人が読まれていて気になったのだ。
そしてページを繰るごとに、どんどんと重い気持ちになっていった。アメリカ合衆国という国が持っている超競争社会、集中と搾取の世界の構図を、だいたい知ってはいても、その現実を赤裸々に見せつけられると自分の気持ちは沈んでいった。
あとがきで、著者はつぎのように書く。
“そんな危機感が渦巻くシリコンバレーから東京へ来ると、まるで別世界です。高望みしなければ何とかなるという妙な安定感に満ちていて、とても平和に感じます。この本で書いていることが場違いに感じられ、果たして意味が伝わるのかという不安も感じます。逆にこの感覚の違いが、富や権力の一極集中を可能にしているのかもしれません。シリコンバレーは世界的に見ても特殊な地域というだけのことかもしれません。でもシリコンバレーで起きていることの影響は東京でも頻繁に感じます。”
否応もなく近づきつつある暗雲を前にしながら、僕らは出来るだけ遠くに、あるいは次元を変えて遠ざかるしかないと思った。