カズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞し、さすが欧州の慧眼者たちの選考だと唸った。そんなときに僕が読んでいたのは2011年にブッカー賞を受賞した『終わりの感覚(The Sense of an Ending』(新潮クレストブックス)。この作品にも唸った。
アントニーには、高校時代に秀才の学友エイドリアンがいた。彼は名門大学に入ったが在学中に自殺する。自分の恋人ベロニカがエイドリアンと付き合うようになっていて二人とは疎遠になったいたから驚いた。社会人になり四十年も経つまで、彼はベロニカと全く音信を交わさなかった。
そんななか彼は、ベロニカの母親の弁護士から、母親の遺産の一部をアントニーに贈るという連絡を受ける。
そんな感じで始まる物語だ。
東洋の島国と西洋の島国との、大きく隔たる恋愛観、世界観がみて取れる。