『春の祭典』といえば学生時代に聴き込んだブーレーズ指揮クリーブランド管弦楽団のものと決まっていると思っていた。
だから東京フィルハーモニーが渋谷でその曲含めて演奏会をすると教わったときにも、「いえ僕は遠慮します」とやんわりと断っていた。
ところがその演奏会のチケットが、奇遇にも家人ルートで手に入り、然してままよ、と流れに任せて足を運んだ。
プログラムの後半が、件の曲。
初めて生演奏で聴いたそれは、怒髪天を突くすっばらしさ。これを生み出したアンドレア・バッティスティーニという指揮者とオーケストラの力量に、頭をひれ伏し感服した。
ピエール・モントゥーが初演したことき、大騒ぎの非難ごうごうとなったそうだけれど、渋谷のホールも、その当時の人々の気持がを推し量ることができるほどの爆発的な逸脱の沸騰エネルギー。100年以上経ても聴衆の心を惑わし煽動する音楽なのだ。
アンコールは、外山雄三編曲の『八木節』。西洋ロシヤの祭りのあとは日本の祭り。引き続きの渦に翻弄され心地良く、そのあとの酒は冴え渡った。