クレーの絵のこと

丸谷才一の『別れの挨拶』を読みはじめ、始めの章「英国人はなぜ皇太子を小説に書かないか」で、日本人の小説家が採る技法についての次のような一節に拘泥されてしまう。

“たとへば谷崎潤一郎『細雪』の主人公は何かの会社の役員らしいことになつてゐて、そのくせ、一日中、書斎にこもつてばかりゐて、まるで作者その人のやうである。そして吉行淳之介『砂の上の植物群』の主人公が化粧品のセールスマンだといふのは、宿帳に書いた贋の職業としか思へない。つまり日本文学では私小説の筆法がいまだに支配的で、実は主人公の稼業など何であってもかまはないのだ。”

化粧品のセールスマン、という言葉にちょっとヒヤッとした接近感を覚え、あれ?そういう小説だったのかいと、移り気をして丸谷さんの本をほったらかしにしてそちらを読んでしまった。

なるほど、この吉行さんの作品は、主人公がそういう仕事である必然性はどこにもなく、恋愛の極地を描いた時代小説だった。

ここで小説の主人公は、作品の題名でもあるパウル・クレーの絵『砂の上の植物群』のことを描写していて、それを読んでいたら学生時代のたしか最終学年の頃に、東京駅にあった大丸美術館でこの画家の展覧会を観たことを思い出した。

実は、クレーの絵はなかなか僕にとっては苦手で、それは今も続いている。

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by k_hankichi | 2017-05-07 10:10 | | Trackback | Comments(3)
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Commented by maru33340 at 2017-05-07 17:37
そうか君はクレー苦手だったのか…
し、知らなかった…
Commented by Oyo- at 2017-05-07 18:40 x
こちらの文庫本、どちらかの書店で見かけてちょっと気になっていたところです^^
Commented by k_hankichi at 2017-05-07 20:38
maruさん、僕は単純なのだと思う。カンディンスキーは良く心身に沁みるのに。

おようさん、この小説は、又の機会にしましょう。(ちと、う~む、という感じです。)


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