もうひとりの浦島太郎

転居したタイミングで、押し入れの奥からLPレコードが入った段ボール箱がいくつか出てきて、かぞえたら数百枚あることが分かった。眺めていたら無性にそれらを再生したくなり、週末に御茶ノ水に足を向けてつらつら眺めているうちに、再生用のアンプや小型スピーカーなどが手元に揃うことになった。

LPレコードを聴く前に、まずはCDを再生してみる。

そこはかとなくバッハの平均律がふくよかに響いてきて、さすがにヘッドフォンで聴く脳内定位とは違うなあと思う反面、学生時代に神妙に耳を傾けたオーディオとはなにかが異なると思った。

押し入れの奥に眠っていたダイレクトドライブ方式のターンテーブルを繋いでみる。20年以上振りに息を吹き返すその機器に載せたのは、ブルーノ・ワルター指揮、ニューヨークフィルハーモニーによるブラームス交響曲第2番のLP(モノラルだ)。

遠く森の奥深くから、微かに響いてくるような金管のか弱さ。

嗚呼。これだ。これがあのころの胸の打ち震えだった。

平成の浦島太郎は、音盤の波打ち際を眺め回した。空白の歳月のことにはまだ気づいていない。

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Commented by saheizi-inokori at 2017-03-29 21:44
LP盤も再生装置もみんな処分してしまいました。
なんだか大きな落とし物をしたような気がします。
Commented by Oyo- at 2017-03-30 06:19 x
モノラルのブラームス交響曲第2番が静かに聴こえてきます。
あの頃の懐かしい青春・・・胸がキュンとなりますね(^^♪
Commented by k_hankichi at 2017-03-30 06:43
Saheiziさん、僕にとっても「落とし物」だったのですが、忘れた頃を通り越した遥かのちのちに戻ってきたような感じです。
おようさん、はい。音や音楽には、自分達の記憶が畳乗されているのだと改めて分かります。
by k_hankichi | 2017-03-29 18:58 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(3)

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