音楽、小説、そして酒を愛する方々との空間です

by はんきち

諸君、あたしは霊ではあらない。無形のイデアとしてそこかしこ休んでおる。

ようやっと『騎士団長殺し』(村上春樹、新潮社)を読了した。久しぶりに本格小説の醍醐味を味わった。と同時に、この作品は村上氏の代表作になってゆくのだなと感じた。友人もそう僕に話した。

そして知らぬ間に自分自身のうちにも騎士団長が居ることにも気づく。彼の語り口を借りて自分は話し始めている。それは如何にも奇異だ。しかしそれでもこの話法はもはや異形と呼ばれることはなくなるだろうと確信している。「騎士団長語」が人々の間に膾炙してゆく目には見えない「気」の流れを感じる。

諸君、あたしは霊ではあらない。無形のイデアとしてそこかしこ休んでおる。

そんなふうな言葉を発する団長は、何故か自分にそっと寄り添ってくれている。

僕たち一人一人は何を甲斐性に生きているか?其れが無くなってしまったら人はどうなるのか?

その記憶を頭に心に留めておくだけで生きていくのか?或いはそうするだけで生きていけるのか?

喪失と諦観、そして微かな希求再生。その物語だった。

シューベルトの交響曲第5番変ロ長調D485の第二楽章が、この小説にぴったり合っていると思った。あらゆる音符が旋律が和声が身に沁みてゆく。

c0193136_07151804.jpg


[PR]
by k_hankichi | 2017-03-23 06:28 | | Trackback | Comments(4)
トラックバックURL : http://hankichi.exblog.jp/tb/26523536
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by maru33340 at 2017-03-24 17:44
愛すべき騎士団長の造型がこの小説の成功の大きな要因のひとつやなあ。
Commented by k_hankichi at 2017-03-24 19:00
さよう。諸君、このような不思議な魅力を持ったイデアの表象のような存在は、そうはあらない。(騎士団長)
Commented by Oyo- at 2017-03-24 22:57 x
お読みになられた^^ 諸君、騎士団長という小人の発想だけでも自分は満足じゃよ・・・何かいろいろあって頭混乱(^_^;)
Commented by k_hankichi at 2017-03-25 09:02
おようさん、皆が騎士団長語をしゃべるようになりますね!