完全に弛緩した逍遙の深みを極めたい

堀江敏幸の『郊外へ』(白水Uブックス)を読了。久々にパリの街角やその郊外の空気、風景や人々の生きざまに触れた。

それにしても堀江さんのフランスにまつわるエッセイや小説は、その濃度が濃い。それも文学の次元だけでなく、地域地勢学、ギリシャ時代や神聖ローマ帝国まで遡る歴史、古今東西の芸術家まて幅広く、気が抜けない緊迫度だ。

そうかと思えば、どこまでも街区を歩き続けたり、偶然来たバスに考えなく乗って終点まで向かったり、あてどなさは果てしない。

戦後間もないころに公費留学した学生や教職は、フランスや欧州の文化学術に圧倒され精神的にも極限まで追い込まれて、しかしそのなかから独自の境地を切り拓いてきた。「我」、「彼」というふたつの狭間で、必ず、「彼」に圧倒されてきた。

それがどうだ。

堀江さんからは、そういう精神的な極限を感じない。彼も我も同様な距離感で眺めている。そればかりか、かの地に生きる様々な人たちと交わる。

あるときはアラブ系の移民だったり、あるときは酒場のマスターだったり。また、そういう仲間とのビリヤード競技やら賭け事のようなものに興じたり。アパルトマンの貸間斡旋業を闇でやったり。給付留学という身分ではご法度なものごとにも余り躊躇いをみせていない。

つまり完全に弛緩している。ああ、このような状態での逍遙を深めたい。彼の地の街角や城壁の外側までを自在に歩き回り、その空気や人々の合間に埋没してみたい。

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Commented by maru33340 at 2017-03-01 21:11
しかしなんですなこのタイトルはあんまりゆるんでませんな。
Commented by k_hankichi at 2017-03-02 07:06
へえ、maruさん、すんまへん。まだ、ごちごちでんがな。
by k_hankichi | 2017-03-01 08:24 | | Trackback | Comments(2)

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