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by はんきち

映画技法の魅惑

丸の内の丸善1階の片隅に、作家や名士による推奨本コーナーがひっそりとあった。あまり期待せずに眺めていたら、先ごろ直木賞を得た恩田陸による推薦本が幾つかあり、なんとなく気になってそのなかの一冊を買い求めた。『映画術』(塩田明彦、イースト・プレス)。

読み終えて、ますます映画を観たくなり、そして紹介されている名作の数々に触れてみたくなる。

これまで親しんできた蓮實重彦の高踏派的評論とは一線を画し、どのように映画を観るのか、分かるべきなのか、そして演ずるのかという視点で映画のコマ落としもふんだんに挿入して書かれている。

著者は映画監督。創る側のロジックを深耕し、推察まじえて種明かしをしているから面白い。

映画美学校アクターズ・コースという俳優志望の生徒むけの連続講義から採録されたもので、「演技と演出の出会う場所から映画を再考する」という視点で構成されている。

“結局のところ、演技というものの最初の拠り所は、自分自身の経験、記憶、日比の観察、他者の観察、それしかないんです。その繰り返しによって、自分が日々無意識的に過ごしてきた時間のすべてを意識して、同時に、自分の無意識の底に眠っているありとあらゆる経験の引き出しを手探りで開こうとする。だから無意識が厚くはならずとも活性化し、流動化する。するとその人間の顔が変わるんです。” (「第二回 顔」より)

“小津安二郎という人が、なぜ俳優を無表情にするのか、なぜ俳優の内面を露出するような芝居を禁止するのか、俳優に対して「機械的に動け、無表情になれ」と要求するかと言うと、〜皆さんも小津映画を観ると不思議に思いますよね?〜表情を消すことによって「場」が立ち上がるからなんです。ここでは、岩下志麻が置かれた「場」が立ち上がってきています。(中略)それが、いわゆる小津の「残酷さ」と呼ばれるもので、ここでは処刑宣告のような「場」が作られているんです。”(「第三回 視線と表情」より)

僕らの日々の生活や移ろいも、まさしく意識せずに起きていることや、無意識に振る舞っていること。映画というのは、そういうことの真相真意を表す試みなのだと気付かせてくれる。

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by k_hankichi | 2017-02-21 07:54 | | Trackback | Comments(4)
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Commented by maru33340 at 2017-02-21 08:45
これは面白そうやなあ。
Commented by Oyo- at 2017-02-21 09:58 x
はんきちさんが記していらっしゃることで私は本を求めなくてもほゞわかりました^^ 経験ですねー(^・^)
Commented by saheizi-inokori at 2017-02-21 10:27
さっそく予約しました^^。
Commented by k_hankichi at 2017-02-21 19:58
おようさん、映画の製作と役者は「経験」が浮き出てくるものらしいです。
maruさん、saheiziさん、お楽しみに!