夢の話の楽しさ

小林信彦さんのエッセイや私小説は、かなり好きで、網羅的ではないものの時折読んでいる。しかし本として「本音を申せば」というシリーズがあるということを本当に迂闊乍ら知らなかった。週刊文春に連載エッセイの文庫化なのだ。それを初めて読んだ。『アイドル女優に乾杯! 本音を申せば⑩』(文春文庫)。

映画や俳優、女優の話、作品が隆盛した時代のこと、テレビやラジオの時代、社会時評、街角風物、などなど、その幅広さと、着眼点の鋭さ洒脱さに感服する。

それに加えて目が覚めたのは、著者が目覚める前の夢の話。

“夢の中で、ぼくは目覚めている。そして、どうするかというと、手洗いに向かうのだ。このへんで、夢と現実がゴチャマゼになっているのが、ようやくわかってくる。ベッドを出て、廊下を歩き、右に曲がると(中略)そっちへ行ったのではまずい、という思いから、脳が動き出す。それは空襲で焼けてしまった家で、あれから六十何年たった今の家はちがう。廊下までは正しいが、右折しては駄目だ。(中略)ドアをあけ、左手の鏡を見る。ひげをそるつもりなのだが、鏡を見て、びっくりする。そこに映っているのは、駝鳥だ。東日本の草原からきた駝鳥がぼくを見ている。”(「あつさ、事件、なみだ」より)

こういう、夢の事をしっかりと覚えていて記載できる記憶力の凄さにも驚くけれど、それにも増して、その奇天烈な中身にも心躍る。

この夢の世界は、実は僕が見る夢の世界の中身にも仕様が類似していて、ますます彼の世界に惹き入れられていくことへ、何の拒みもないことに気付く。

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アイドル女優に乾杯! 本音を申せば10 (文春文庫)

小林 信彦/文藝春秋

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Commented by Oyo- at 2017-02-13 10:39 x
ウフッ この方の本は私もよく読みます^^ このような夢の話は自分の実体験も踏まえ、今回受賞した芥川賞の山下澄人著「しんせかい」(文藝春秋3月号)を読みそこにも夢体験が出てきて面白かったです(^・^)
Commented by k_hankichi at 2017-02-13 21:28
おようさん、そうなんですね。知らなかった! 夢おたく的には読まねば‼
by k_hankichi | 2017-02-13 06:35 | | Trackback | Comments(2)

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