『切支丹の里』のたえなる響き

遠藤周作が『沈黙』を書くことになったきっかけは何だったのか。そのことを書いた日記やエッセイ、そうして習作的なる短編が収められている一冊だった。そして、自分自身が先週訪れた土地、そして驚くべきことに、更には今となっては自分にまで細い細い何かが繋がっているということが分かった一冊だった。『切支丹の里』(遠藤周作、中公文庫)。

“もう私にとっては自分の故郷のようになった長崎である。『沈黙』を準備していた時、私はここを三か月に一度は必ず訪れた。長崎から諫早をすぎて小浜に至り、この小浜から島原を結ぶ海岸線をもう、どのくらい歩いたか分からない。(中略)加津佐のコレジヨは日本で最初の印刷機が据えられた場所である。この金属印刷機は巡察師ヴァリャーノが、ヨーロッパに派遣した有名な天正の少年使節が持って帰ったもので、聖人伝抜萃ともいうべき『サントスの御作業のうち抜書』という本はこの機械で印刷された日本最初の翻訳文学であり、現在、英国ボートレリアン文庫に所蔵されている。ヴァリャーノはこの印刷機で更にセミナリヨやコレジヨの教科書、宣教師のための文法書や辞書や信者の修業を印刷させて布教の促進に役立てたのであった。”(「有馬、日之枝城」より)

僕も遠藤氏と同じ道を辿って海と山に囲まれたあの鄙びた町を訪れ、今の家人の家族に遇い、そしてそれがいまの自分自身に繋がっている。

他人事ではなく、そこにはしっかりと撚られた赤い糸があるように思えた。

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切支丹の里 (中公文庫)

遠藤 周作/中央公論新社

★★★★★




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Commented by maru33340 at 2017-02-12 06:49
あ、そうであったかあ。
Commented by k_hankichi at 2017-02-12 08:00
そうなんです・・。隠れたのか転んだのか。それとも小豆島から来たのか。いずれにせよ、深く繋がりがあるようです。
by k_hankichi | 2017-02-11 20:46 | | Trackback | Comments(2)

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