アヌ・タリ指揮/東京フィルハーモニー交響楽団によるベートーヴェンの交響曲第9番は、快活だった。(@12月17日、サントリーホール)
紡ぎ出されていく旋律はアップテンポで、時にジャズのスウィングなのかというような感覚に陥る。心の中でつぶやいているかもしれない掛け声が伝わってくる。『超高速参勤交代』のことまで思い出す。
どうなるのだこの先は、とすこし不安な気持ちになっていたのだけれど、最終楽章は、一味も二味も異なる次元で素晴らしく、深い安堵に包まれた。そしてそれは合唱(東京オペラシンガーズ)のスキルの高さとそれを牽引する指揮力にあるのだと分かった。華奢に見える指揮者は、合唱団とソリストを見えない糸で操っている。なかなか聴けない高いレベルに仕上げている。
合唱の合間の部分では、少しだけスピードを落とした部分もあり、それが却って旋律の美しさを際立たせる。疾風怒涛ではなく、疾風と開放の第9だった。
※アヌ・タリは、1997年にエストニアでノルディック交響楽団(Nordic Symphony Orchestra, previously Estonian - Finnish Symphony Orchestra)を双子の姉(カドリ・タリ)と共に創設した。エストニアとフィンランドの文化的交流を促進したいがためだそうだ。現在もそのオーケストラを率いている。
http://nordicsymphony.com/