『音楽で楽しむ名画』(加藤浩子)・・・ファム・ファタルの章にオットロシクなる
『音楽で楽しむ名画』(加藤浩子、平凡社新書)を読了。月並みな内容かと思いきや、『怖い絵』よりもさらに影や暗部が抉り出されていて楽しめた。
一番の衝撃は、オスカー・ココシュカとアルマ・マーラーの関係、そしてそこから描き出された『風の花嫁』という絵。アルマ・マーラーに虜になった彼は、アルマの次の言葉に応えるべく描いたという。
「あなたが誰もが認める傑作をものにしたら、その時に結婚しましょう」
結果として、アルマはココシュカの子供を身籠ったのに、新居に飾ろうとしたものはマーラーのデスマスクだったという。それによって二人は口論し、結果としてアルマはココシュカの子供を中絶してしまった。
ココシュカはそれを機に奇を衒った行動が目立つようになり、アルマとの接触を避けて移り住んだドレスデンで次のようになっていく。
“彼はミュンヘンの人形作家に、等身大の女性の人形を注文します。顔と身体を、できる限りアルマに似せてほしいと注文をつけて。完成した人形を見たココシュカの召使いは卒中の発作を起こして倒れ、回復した後に暇をもらったと伝えられます。わざわざ注文した服と下着を着せて、ココシュカは人形を連れ回しました。馬車で外出し、劇場の桟敷席に伴って見せびらかします。戯れの終焉は凄絶でした。歌劇場の楽団を雇い、家の庭でパーティを開いたココシュカは、お客たちの目の前でアルマ人形と踊り狂い、あげくの果てに人形に赤ワインを浴びせ、刀でその首を斬り落としたのです。”(「第四章 運命の女」より)
ファム・ファタルという言葉は知っていたのだけれど、それによって狂気になった男のことはあまり知らず、だから、これを読んだだけで、もうオットロシクテ仕方が無かった。
■『風の花嫁』→
https://www.wikiart.org/en/oskar-kokoschka/bride-of-the-wind-1914Location: Kunstmuseum Basel, Basel, Switzerland