一人一人の存在する意味を問う小説『i(アイ)』

あんなに大々的に新聞の一面広告がされていたら、思わず買いたくなってしまう。そして買い求めていた。『i(アイ)』(西加奈子、ポプラ社)である。

渋谷の書店で求めた一冊は有難いことに著者のサインがされているものであり、その明るい少女的なイラストに、キラキラとした華やかな世界を想像しながら読み進めていくと、それとは真逆の世界にぐいぐいと引きずりこまれていく。サルトルの『嘔吐』や『蠅』を読んだときの心細い気持ちに似ていた。

自分の存在の意味を失いそうになったとき、アイは次のように語っていった。

「渦中の人しか苦しみを語ってはいけないなんてことはないと思う。もちろん、興味本位や冷やかしで彼らの気持ちを踏みにじるべきではない。絶対に。でも、渦中にいなくても、その人たちのことを思って苦しんでいいと思う。その苦しみが広がって、知らなかった誰かが想像する余地になるんだと思う。渦中の苦しみを。それがどういうことなのか、想像でしかないけれど、それに実際の力はないかもしれないけれど、想像するってことは心を、想いを寄せることだと思う。」

この世に生を授かり、日々を送っている僕たちが、なにを拠り所にして生きていくべきなのかを気づかせてくれた。

深い感慨に包まれ、気持ちを安らかさせ、それでいて意識を怜悧にさせる素晴らしい小説家だと思った。

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i(アイ)

西 加奈子 / ポプラ社

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by k_hankichi | 2016-12-06 06:13 | | Trackback | Comments(0)

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