件の恩田陸さんの音楽小説が、どうしてあんなに素晴らしいのか不思議で、すこし調べていたら、足掛け10年以上の構想・執筆のうえ上梓したものだと分かった。そしてクラシック音楽を題材にした作品としても彼女として初めての類いらしい。それほどまでに大切にあたためられ育まれたものなのだ。
さらに調べていると、2005年の雑誌『考える人』の特集「とっておきの音楽」で、次のように寄稿していることを知った。
“何かの折りに何気なく聴き始めてやめられなくなる。録音状況の悪いものばかりなのだが、その水際立ったエレガントなタッチを聴いたあとで、最近の素晴らしい録音で素晴らしいテクニックと言われるピアニストの演奏を聴くと、誰もが皆『がさつ』に聴こえてしまうのだ”
恩田さんにとって、がさつ、という言葉をカギ括弧に封じてしまうほどの違いなのだ。
ディヌの音魂が僕の頭の奥に響く朝だった。
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http://kangaeruhito.jp/articles/-/42