『溶ける街 透ける路』(多和田葉子)に散らばる西洋

『溶ける街 透ける路』(多和田葉子、日本経済新聞社出版社)を読了。2006年の一年間、日経新聞土曜版に連載されたものだそうだ。西洋の街々そして路地の描写のなかに、多和田さんの記憶が重なり、そして時として、おとぎ話を聞いているような気分になる。

モンテーニュが生まれたボルドーの地を訪れた際には、次のように書いている。

“『エセー』には、日記の一節かと思われるような部分もあれば、手紙のようなところもある。歴史的分析や社説のような文章もある。モンテーニュは、人間というものは、「全身がくまなくつぎはぎだらけの、まだら模様の存在」だと書いている。寄木細工のような『エセー』の形式は、そんな人間観にぴったりで、十六世紀のポストモダンと呼べるかもしれない。”(「サンテミリオン」から)

おとぎ話系は次だ。

“ベルリンのクロイツベルク区にわたしの好きな古本屋が一軒ある。東独時代に出た文学書で他ではあまり見かけない本などがたくさん置いてあり、値段も安い。ギムナジウム教師のような風貌の客もいれば、お洒落な若いカップルも来ている。店ではいつも同じ人が、忙しそうに本を整理したり、客の質問に答えたりしていた。痩せて地味ながら、がんばりのききそうな感じの人で、愛想はないが親切だった。ある時、この店の入り口のドアの脇に「木の町ヴュンスドルフ」と書かれたポスターが貼ってあることに気がついた。ヴュンスドルフはベルリンの南東に位置する村で、古本を三十五万冊以上も売っている、と書いてある。”(「ヴュンスドルフ」から)

訪れたことがある街、まだ見ぬ街、暮らしたことがある街、立ち寄りたい街、そのそれぞれが静かに息を潜めながら、いまもそこにある。

1月 ブダペスト/シュトットガルト/ケルン/フランクフルト
2月 グラーツ/クックスハーフェン/トゥール/ロイカーバート
3月 カネット/トゥーソン/シアトル/ベルリン1
4月 デュイスブルグ/イエテボリ/ハンブルグ/デュッセルドルフ/チューリッヒ
5月 ボルドー1/チュービンゲン/ヴュンスドルフ
6月 パリ/トゥールーズ/ペサック/ナント
7月 サン・マロ/ベルリン2/サンテミリオン/ボルドー2/ボルドー3
8月 イサカ/ハノーファー/リューネブルグ/メットマン
9月 バーゼル/ベルン/バーデンバーデン/マンハイム/アウシュヴィッツ
10月 クラクフ/ワルシャワ/トロムセ/ダルムシュタット
11月 ヴォルフスブルグ/リガ/タルトゥ/タリン
12月 モントリオール/ニューヨーク/アマスト/ボストン/アンマン

溶ける街 透ける路

多和田 葉子 / 日本経済新聞出版社

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Commented by Oyo- at 2016-09-10 10:37 x
読んでない>_< 読まなければ・・・。懐かしい事が盛りだくさんの様^^
Commented by k_hankichi at 2016-09-10 17:44
はい、おようさん、是非に!
by k_hankichi | 2016-09-10 10:01 | | Trackback | Comments(2)

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