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by はんきち

女性小説家の苦しみの手記・・・『私のなかの彼女』

気になって読み始め、途中、幾度か不可解さと違和感を覚えながら読了。『私のなかの彼女』(角田光代、新潮文庫)。

そして読後しばらく咀嚼しながら、この作家が表したかったことが漸く分かった気がした。

直木賞をはじめ、さまざまな文学賞を得ている彼女は、この作品で「河合隼雄物語賞」を受賞したそう。

作品は、自分にはまるで経験も接点もなかった、現代の小説家たちの生態というか日々の葛藤の世界が描かれている。それも女流作家の世界。

苦悩にみちた日々、荒れた心の相剋というのは、太宰治や三島由起夫のような人たちのなかにあると、勝手に思い込んでいた。

そして女流作家というものは、ちやほやされながら、有閑マダムさながらに楽しき文筆世界を繰り広げているのだろうと想像していた。

一流の作家である角田光代は、そのような愚鈍なステレオタイプな僕の認識を木っ端微塵に粉砕した。

女性小説家の苦しみの手記は、容赦なかった。生活を破壊寸前、いや自らも分かっていながら破壊を容認し、そのなかから新たな小説世界を創造していこうとする。

「女だからこのくらいにしておきなさい」
「女性小説家はこんなイメージで」
「作家活動と家事は両立しています」
「美しき女流文学の世界」

そういう、ある種の固定観念の呪縛を解き、初めて「自分の人生を精一杯生きる、男・女に関係なく」、ということを示していた。

作家の度量と懐の深さ、そして内在している生みの苦しみの深さに、唯ただ感銘した。

私のなかの彼女 (新潮文庫)

角田 光代 / 新潮社

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by k_hankichi | 2016-09-08 07:02 | | Trackback | Comments(0)
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